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てんかん治療について 長時間記録ビデオ脳波モニター検査とは

(2020.07.21投稿)

我が家では、重度脳障害をもつ4才になる娘を育てています。

帝王切開で生まれた6日後に大発作をおこし、緊急であらゆる検査をしたところ、左脳前頭葉部分が大きく壊死していることがわかりました。

どうやら母親の胎内にいた時から脳内出血をおこしていたようだ、とのことでした。

それに伴うてんかんももっており、現在抗てんかん薬の服用で発作が抑えられている状態(寛解の状態)になっているのですが、今後も定期検査と薬の服用はずっと続けていく必要があります。

今回は生後6日目に大発作をおこしたところから現在に至るまで、私たちのてんかんについての学びと、その中から特に長時間記録ビデオ脳波モニター検査というものに関してお伝えしたいと思います。

今回の記事の医学的な内容は、主にこちらの本を参考にしています。

娘にてんかんがあるとわかってから真っ先に買って読んだ本で、てんかんの全般的な事が非常にわかりやすく書かれています。

てんかんの診断は医師でも難しい?

一般の病院では短時間の脳波検査しかできない

そもそも、てんかんの診断は医者にとっても非常に難しいもののようです。

特に一般の病院では、てんかんの検査に必須な脳波検査も、通常2,3時間程度しかできず、たまたまその間に発作がなければ、異常を見逃してしまうことになってしまいます。

私たちの娘は静岡てんかん・神経医療センターというてんかんの専門病院で診てもらっているのですが、そのホームページでは、てんかんの診断について以下のように書かれています。

治療が適切であれば、6ないし7割の患者さんの発作は止まります。しかし、現状ではてんかんのプライマリーケアに大きな問題があり、止まるべき発作が止まらず、薬物の副作用のみが目立っていることが少なくありません(見せかけの難治てんかん)。てんかんの診断には、てんかんの発作型診断・てんかんの類型診断・てんかん症候群診断の三つの段階がありますが、薬物選択を適切に行うためには、発作型診断が正しいことが前提となります。発作型診断の誤りは薬物選択の誤りに通じ、結果的に患者さんは、合わない薬を飲みつづけることになります。また、てんかん発作とまぎらわしい非てんかん発作がてんかんとして治療されている場合も少なくありません。その逆のこともあります。

静岡てんかん・神経医療センター HPより抜粋 https://shizuokamind.hosp.go.jp/services/epilepsy/

見せかけの難治性てんかんというのは、本来正しい薬の選択がされていれば発作が治まるにも関わらず、選択の誤りによって発作が治まらなかったり、そもそもてんかん発作ではないのにてんかん発作と判断されている状態です。

私たちの娘の場合がまさににそうでした、、、

最大3種類の薬漬けになった娘

冒頭でもお伝えしたように、我が家の娘は生後6日で大発作を起こしたのですが、出産直後に呼吸の乱れがあったとのことでNICUに入っていたため、夫婦どちらとも、どのような発作があったのか実際に自分たちの目では見ていませんでした。

ただその後もシャックリのようにヒクヒクする動きを小刻みに繰り返したり、白目をむくような怪しい動きがあったため、2、3時間程度の脳波検査を実施したのですが、脳波の異常は発見されませんでした。

一方でヒクヒクする動きは毎日のように出続けているので、抗てんかん薬の種類と量は増えていき、最初の大発作の時に処方されたフェノバールから、テグレトール、リボトリールと最大3種類の薬をそれぞれ許容量限界までまで処方されました。

てんかん薬は劇薬で、服用してよいのは最大で3種類までとされています。

それ以上に投与した場合は、薬の効果よりも副作用のリスクの方が高まってしまうからです。

そして我が家の娘の場合、新生児として出来うる最大限の薬の量を投与してもヒクヒク症状はまったくおさまらず、私たちは途方に暮れていました。

そんなとき、娘を看てくれていたベテラン風の看護師の方が、直接私たちに話しかけてくれて、

「実は、自分の子どもにもてんかん発作があったんだけど、静岡のてんかんセンターで診てもらってから発作が治まった、そこは24時間以上の脳波検査ができるてんかん専門の病院だから、一度そちらに診てもらったほうがよいのではないか」

という話をしてくれました。

そして、私たちは救いを求めて静岡てんかん・神経医療センターを受診しました。

長時間記録ビデオ脳波モニター検査

静岡てんかん・神経医療センターでの検査入院

静岡てんかん・神経医療センターはてんかんの専門病院で、あらゆる機能が整っています。

中でも専門病院でしかできないものが長時間記録ビデオ脳波モニター検査です。


長時間記録ビデオ脳波モニター検査とは

脳波を記録しながらビデオを撮影し、てんかん発作の型や、発作時の脳波の変化を記録し、てんかん発作が脳のどの部位から生じているかを判断するために重要な検査。てんかん発作とそれ以外の症状を区別するためにも必要。検査には入院が必要で、1日(24時間)から長い場合には1週間ほど行われる。


ビデオ撮影の際、カメラは複数台あって、しかも自動追尾のため、基本的には自由に部屋の中で過ごすことができます。

この検査中に、てんかん発作とみられているヒクヒク症状が出た際の脳波を測定することで、本当にこれがてんかん発作なのかどうかを診断することができるというわけです。

そして、初めての検査中にヒクヒク症状は発生しました。

これっててんかんじゃなかったの?

検査翌日、結果を専門医の先生に伺ったところ、なんと、ヒクヒク症状の発生時に脳波の異常がまったく発生していないとのことで、てんかんとは関係無い生理現象ではないかという診断となりました、、、(ちなみにその後てんかん以外の可能性として、心臓なども検査しましたが、まったく問題ありませんでした)

今までさんざん心配して、劇薬である抗てんかん薬を最多の3種類、最高限度量まで飲み続けた日々はなんだったんだと、、、唖然としてしまいました。

てんかんは専門の病院で診て貰った方が良い

現在は約半年に一度、定期的に検査入院をして、長時間記録ビデオ脳波モニター検査をおこなっています。

散々心配したヒクヒク症状は、娘の成長と共にほぼみられなくなり、恐らく呼吸器が未熟だったことによる生理的な現象だったのかなと考えています。

抗てんかん薬は現在、テグレトールのみを有効血中濃度ギリギリに入るくらいの最少量服用しているのみで、特に発作は起こっていません。

ただ、成長に伴って脳波検査時に棘波が目立ってきており、その点は心配なのですが、静岡てんかん・神経医療センターに今後もお世話になり、長期視点でしっかり看ていこうと思います。

以上が我が家の娘のてんかん治療の現在までの経緯なのですが、てんかんの治療は長期戦になるうえに、医者でも正しい診断をするのが難しい病気であることから、可能な限り専門病院の専門医に診てもらうことが患者の生活の質向上のためには良いのではないかと思います。

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