Lec1: 計量経済学とは

皆さんこんにちは。矢野です。今日から毎週私が修士論文で取り扱っている学問領域である『計量経済学』について書いていこうと思います。(ここで書く内容は大学院国際公共政策研究科開講科目である『計量データ分析Ⅰ・Ⅱ』『Econometric Methods』『Advanced Econometric Methods』の内容をまとめたものです。) まずは、計量経済学とは何なのか、という話をしていきます。

世の中には、多数のデータであふれています。ニュースを観れば、新型コロナウイルスの新規感染者は何人だとか、GDPの下落率は何パーセントだとか、様々な数量化されたデータを目にすることでしょう。こうしたデータから、原因と結果の関係性を見つけ出す学問が『計量経済学』という学問です。

具体的には、『回帰分析』という手法を用いて分析を行います。この『回帰分析』という手法は大変便利なもので、かつ直感的に分かりやすいという性質を持っています。

皆さんは、中学生の頃、y=axという1次関数を学習したと思います。この式の意味は、xが1単位増加するとyはa単位増加するというものでした。(このaのことを変化の割合と呼びましたね。)

もし、2つのデータセット(例えば、親の賃金とその子供の偏差値)にこのような関係性を見出すことが出来たとするならば、それは両者に何らかの関係性があると定量的に結論付けることが出来ます。これが『回帰分析』の強みです。

ただ、何でも適当にデータを放り込んでしまえばOK、というわけではありません。大切なのは、2つの異なるデータセットを放り込んだ時に得られた結果が、必ず因果関係を保証するものでなければならないという事です。

例えば、あるデータを100個集めてきて回帰分析にかけて、y=3xという結果が出たとしましょう。結果の解釈は、『xが1単位増えると、yは3単位増える』というものです。しかし、別の100個を集めてきた結果、y=-5xという結果が出てきたとすると、これはまずいですね。結局、xが増えるとyがどうなるのか、全くわかりません。

こうした事態を防ぐため、回帰分析は極めて厳密な仮定の下、実行されます。我々研究に従事する者は、必ずこの仮定が満たされているか、慎重に議論を重ねながら研究を進めていきます。

回帰分析自体はとても簡単なもので、Excelで10秒あればできてしまいます。だからこそ、初学者の方は回帰分析は簡単でこんなに万能なのか、と勘違いを起こしてしまいがちなのです。

そこで、このnoteでは、回帰分析の基本から丁寧かつコンパクトにまとめていきます。社会人だけど経済学やデータ分析に興味がある方、経済学部生で卒業論文で回帰分析を使いたい方、ぜひご覧ください。前提知識は必要ありません。(数学Ⅰの『2次関数』『データの分析』、数学Ⅱの『微分』の知識があればなお良いです。本格的に計量理論を学びたい方は、学部1年生で学修する『線形代数』の知識が必要になりますが、このnoteでは扱いません。)

次回は、計量経済学を学ぶ上で絶対に知っておかないといけない『相関と因果の違い』についてお話していきます。その後、回帰分析の細かい話に入っていきます。お楽しみに!

Best

DY


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?