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ベストオブ四象限

先週こんなことを呟いていた。

が、毎日アップされていく他の参加者の記事を読んでいるうちに、何故か自分の記事の下書きが日々修正されていくのである(何が「前後も特に気にせず」だw)。

各々の記事は日常での自分の興味とオーバーラップしない話題を扱っているのに不思議なもんだ。いや、実はそんなに不思議ではない。思考の主体たる個々の人間は外界からの刺激に適応することしかできない些末な存在なのだ。いや、語弊があるな。我々は思考の主体ですらないのだ(我々は腸内細菌というエイリアンの乗り物であって…という話はまたどこかで)。

結果的に先週Tweetした時点とは全く異なる形になった私的ベストオブを以下に記します。

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ここ数年、社会における自分の身の振り方として「節度を持って臨む」というところをかなり前面に出して生活してる。

具体的な行動スタンスとしては、基本的に「熱狂はしない」「世の中が熱狂しているものに対してはとりあえず引いてみる」という感じ。自分も本気でレースなどに取り組む人間だからそれなりに「熱く」なることは多々あるが、狂ってはいけないのだ。

尚、熱狂の恐ろしさを学ぶとしたら、ナチス時代のドイツに行き着く。参考図書として提示するなら以下の本。映画「サスペリア」と合わせて読むのがオススメである(サスペリアはほんと最高に痺れる)。

話を戻そう。

熱狂を避ける、というスタンスを貫く上で行き着いたのが「先ずはシンプルに構造化して俯瞰してみる」という考え方、というか物事への対峙の仕方である。

構造化といっても、まぁ当然ながら色々ある訳だが、例えば「数式のようなものに落としてみる」というアプローチ。

何かを達成したい目標がある時、目標に向けてすべきことを、目標自体を因数分解することで導き出す、ということは仕事でもトレーニングでもよくやってたりしている。

A面のブログでも、マラソンを目標タイムで走る上で必要なトレーニングを見極めるために、目標を因数分解する、という話はしたためた。

で、これがどう節度と繋がっていくか、というと、何らか新しい「速くなれる!」というような趣旨の情報を得たときなど、一瞬熱狂しそうになるものだけど(何故なら超絶速くなりたいからね)、自分にとって今必要なものなのか(取り入れるべきなのか)みたいなところを、目標を因数分解した数式の項と比較して検討する、というフェーズを設けることになるので、熱狂の前にワンクッション置ける、ということだ。

仕事だと、因数分解した一つの項を部下に任せる、ような運用をしてる。アサインする部下の能力に応じて、項の塊度合いを変える感じでいくと、リスクヘッジをきかせやすかったりする実感。リスクヘッジがきいていれば関わる人間の感情の起伏を抑えられる点が節度とも結びつくかな、と(やや無理矢理だが)。


あと今年は仕事が変わり、忙しさも爆上げした一年だったが、因数分解してみると、律速になる部分が事前に分かったり、違う種類の業務でも似たようなアプローチできることに気がついたり。時間含めて気持ちに余裕が持てるようにすることも節度を保つために大事な観点だと思う(あたふたすると自分を見失いやすい)。


さて、タイトルの「ベストオブ四象限」だが、2軸を使って対象を4つの象限に分けるのも構造化のアプローチの一つであろう。

で、今年読んだ本の中で素晴らしくイケてる四象限を見つけましたよ、というのが今回取り上げたかった話。

定期的にInstagramに読書感想文を載せているのだが、「日本的自我(南博著・岩波新書)」について書いたものを以下マルッと転載する。


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この本をポチった経緯は珍しく覚えてる。ある本で引用されていたのだ。ただ結局手元に届いた頃には興味は次に移っていて、割と汎用性に欠きそうな書名なこともあり、本棚の肥になっていた訳だ。それを今敢えて手に取ったのは何となく今の職場での身の振り方に活用できそうだな、と思って。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ってね😉

著者は、日本人の特徴と言われる精神構造(その場主義、事勿れ主義、集団依存意識、格付け主義、定型化志向...etc.)の根源は、日本人が共通して持つ「自我不確実感」にあると分析する。そして、それが何故生じたか?を歴史的・文化的経緯や地理的状況などから論じつつ、それらがこの本の出版当時(1983年!)の日本人のどういう行動パターンに繋がっているか?を明らかにしていこうとしている。…のだけど、著者が「今の日本人に向けて苦言を呈したい!」というポジショニングを当初から取っているせいか、具体的な事例に触れて批判を繰り出そうとするタイミングで議論の進め方が急に力技になる。特に、枕詞的に頻出する「日本では」「日本人の場合は」には、その登場の必然性は殆ど感じられず、著者が日本人の特徴だと批判している「西欧コンプレックス」に著者自身が強く囚われている感じが滲み出てるような気がして、読みながら苦笑してしまった。

ただ、ボンヤリして捉えにくい「自我」を、外的と内的、主観と客観の2軸から、外的主我・外的客我・内的主我・内的客我の4象限に分割して、それらの相互関係によって、アウトプットとしての精神構造と行動パターンが表出してくる、という冒頭の分析手法はとても見事だな、と思ったし(この時点では当たり本キターーー!という感じでしたw)、これは実生活でも流用できそうな予感。あと、30年以上前の本なのに読んでいて今の僕らに対して文句言われているような気がする辺り、人間の本質ってそんなに変わるもんじゃないんだよなぁ、という当たり前と言えば当たり前の気付きもあったりしました。例えば、下の抜粋って僕らが今の日常で目にするクソみたいなリアルでもあるよね?

「日本的マゾヒズムが、自嘲、自責、自粛のかたちをとって、自己の欠点、罪過、他者による規制の先取りによって、結局は責任の回避と免除をねらう心理的な防衛のメカニズムだとすれば、それに対して責任を他者に転嫁する心理的な攻撃のメカニズムが、日本人に特有の日本的サディズムでかる。日本的サディズムは他者の責任を問い、それをあくまで追及することであり、その場合に他者への嘲笑と他者に対する規制の強要をともなう。そこから得られる優越感と快感を楽しむのが日本的サディズムの特徴である。(中略)個人としてはしないようなサディスティックな行動が、集団の力を借りる場合にあらわれるのであり、(中略)このサディズムの集団性とならんでサディズムの匿名性が見られるのも、日本的サディズムの特徴といえる。」(本書P.57-58)

————————(転載了)

四象限に関して抽出するなら、要するに
●外的と内的、主観と客観の2軸から、外的主我・外的客我・内的主我・内的客我の4象限に分割
●アウトプットとしての精神構造と行動パターンをこの4象限の相互関係の結果として分析

というところ。

「自我とは何か?」というのは哲学の永遠のテーマな訳で、「自我ってのはコレですね」と単一的に定義付けるものがない訳だが、自我自体を定義付けせずとも自我をMECEに分類したものをツールとして使って、人の言動や思考を分析する、というのはとても面白いな、と思った次第。

ベストオブと言うからには他に比較対象となる四章限はあったのかというと、まぁ、ないのだが、母集団が1つならそれがベストで問題ないはずである(多めに見てください)。

尚、ベストオブブックスではないのは、読書感想文中でも述べた通り、この本自体はベストでもなんでもないからではあるが、そもそも読んだ本の中からベストを選ぶというのは僕にはとても難しい。

何故ならどんな本でも、少なくともワンセンテンスやワンワード、自分の心に深く刺さるものを見出してしまうからだ。しかも、刺さるか刺さらないか、何が刺さるか、その刺さり度合いはどの程度か、などはその時々の自分の状況(特に興味)に大きく依存する(僕らは自分の興味に引き付けてしか文脈を理解できない)。

更に言えば、刺さった瞬間に「自分」はこれまでの「自分」から変位し新たな「自分(ネオ)」に脱皮してしまっている。即ち“ベストオブ”をチョイスする主体が毎回変わってしまう訳であり、母集団なんて常に1個しか存在し得ないのかもしれない(だからこそ僕は「時空を乗り越えるという超絶に非人間的知的負荷を抱えながらもベストオブを選ぶ」という試みに人智を超えた神々しさを感じてしまうのだ)。

こんなことを日々考えていると「確固たるものなど世界には存在しないのではないか?」という気すらしてくる。が、それでも僕らは生活していかないといけない。この思索と現実との乖離を埋める必要性に迫られる中で、自分の中の落とし所として選択したスタンスが冒頭の「節度を持って臨む」という身の振り方なのかもしれない。

閑話休題。

Kindle。読みながら刺さった部分にマーカーをつけるのだが、一つの本の中でマーカーを付けられる上限があるようで、後でマイクリップで見返そうとすると「このアイテムのクリップの上限に達しました」と出てきてしまう。ブックワーム的に、これは構造的な大問題だと思うのだが(著作権などの問題なのは理解してますが)。

グッバイ2019aka令和元年

さて、体感ではあっという間に終わってしまいそうな2019年。ほんと早かった。

一方、こういう機会を使って振り返ってみると少し体感の加速度が低下するような気もする。時間の流れに逆らう方向に思考を飛ばすからかな。ささやかな抵抗である。

ブログ含めて、日々の思索を言語化することにすごく大きなメリットを感じた一年でもあったが、そんな一年の締めに面白い企てに参加できたことがこの上なく嬉しいっす。

この記事は 2019 Advent Calendar 2019 18日目の記事として書かれました。昨日は hysysk さん、明日は takawo さんです。お楽しみに!

では、また。