国会図書館にない本の話

「納本制度」とは、図書等の出版物をその国の責任ある公的機関に納入することを発行者等に義務づける制度のことです。わが国では、国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)により、国内で発行されたすべての出版物を、国立国会図書館に納入することが義務づけられています。

国立国会図書館 https://www.ndl.go.jp/jp/collect/deposit/deposit.html

そんな国会図書館に"ない本"があった話

事件概要

国会図書館オンラインで検索しても出てこない、つまり、蔵書がないとされた本がこちら、「ラヴクラフトの幻夢境」

ラヴクラフトってラブクラフトなときがあったりして表記ゆれのある名前なのでいつもISBNで検索していました。ISBNはAmazonの販売ページに掲載されているのでそれを確認して、コピペ。そしたら、
「該当する資料はありませんでした」
の表示。?????となりました。その後、タイトルで検索してもヒットせず。国会図書館にもない本が存在するんだと思いました。(実はここで致命的なミスをやらかしています。)

捜査開始

この話をなんとなく友人にしたところ「普通に国会図書館にあるよ」との知らせ。NDLの書誌IDも付与されているから存在しないと思っていた本はちゃんと存在したらしい。ISBNで検索してもヒットしなかったのになぜ?と思い登録されているISBNを確認してみると、「978-4-7577-4737-1」
Amazonで見たISBNは「978-4047299962」
「なんだ、Amazonが間違ってるのか」「書誌情報は公式を当たろう」
など言って解決ムードの中、公式サイトを見てみると、、、

公式:ISBN「978-4047299962」
まさかの国会図書館が少数派!
ここに来て国会図書館が間違っている説が浮上。しかし時間は2023/12/31の0時。国会図書館が次に開くのは1/5。こうなったら自分たちで調べるしかない。

捜査続行

捜査を続行していると不思議なことに

1冊の本に2つのISBNが付与されていることが発覚。現場は混沌を極めていました。しかし、片方には気になる一言が。「出版社コード変更」いや、なにそれ?ISBNには出版社コードというものが含まれているらしく、どうやらそれが変わったらしい。そして、出版社コードを調べてみると
978-4757747371→7577=エンターブレイン
978-4047299962→04=KADOKAWA
どうやら、KADOKAWAがエンターブレインを合併したことで、ISBNが変更されたらしい。これにより、ISBNによる検索が機能しなくなっていたのである。残された謎はISBNが変更されたとき、データベースは更新しなくて良いのか。国会図書館としてはどのように対応しているのかである。これは国会図書館に問い合わせるしかない。国会図書館が再び開く1/5まで結論はお預けとなる。

いざ国会図書館へ

というわけでやってまいりました。

国立国会図書館

かくかくしかじかでと伝えるとわざわざ詳しい人に聞いていただき、答えてもらうことができました。(ありがとうございます!)その結果がこちら

ISBNは流通のための番号なため、変更されることがある。しかし、国会図書館に納本されているオリジナルの本は流通初期のものなので当時のISBNを登録している。流通している本のISBNが変わっただけで、オリジナルは変わっていないので変更することはない。ISBNでヒットしないときはタイトルや著者で検索してください。

(このまま話したわけではない)

ISBNが変わっても登録内容は変わらないという回答に非常に納得させられた。タイトルや著者で検索しろというのも、ごもっともである。
しかし、なぜ最初に検索したとき、タイトルでヒットしなかったのだろうか。悩みながら検索履歴を見ていると、
「ラヴクラフトの幻夢境」ではなく「ラヴクラフトの幻想郷」と検索していたではないか。
シンプルに検索ミス。国会図書館に存在しない本は検索ミスから生まれたのでした。人を疑う前に己を疑いましょう。

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