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「数年単位の ONE TEAM 」 プレミアリーグ 第18節 マンチェスター・シティ vs レスター マッチレビュー

試合結果

結果:マンチェスター・シティ 3 vs 1 レスター
場所:エティハド・スタジアム
得点者:22分 ジェイミー・ヴァーディ(レスター)
    30分 リヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)
    43分 イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)
    69分 ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)
スタメン:下図(マンチェスター・シティは水色、レスターは黒で表記)

Man City vs Leicester スタメン

 以下ではマンチェスター・シティをシティと表記する。

前半 〜現状でベストな戦い方〜

 現在2位につくレスターと3位につくシティの一戦。去年のリーグ戦でのこのカードは、一戦目は負け、二戦目はコンパニのミドルが決勝点となって勝つなどCityzenの記憶に残るようなカードとなった。17節終了時点で勝ち点差4の両チームによる試合がエティハドで行われた。

シティ ボール保持 × レスター ボール非保持

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 まずはシティのビルドアップを見ていこう。シティは前節と同様にデ・ブライネをトップ下にした1-4-2-3-1を採用。B・シウバが2ボランチの一角に入る。しかし、前節と違う点がいくつかあった。前節はピッチの横幅いっぱいを2ボランチで穴埋めするような配置だったのに対し、今節はギュンドアンがアンカーの位置に入るとともに、B・シウバはオタメンディとメンディの間に落ちるような形に。1-4-2-3-1よりは1-4-3-3の延長だと言った方が妥当だろう。それに対してレスターはマディソンがギュンドアンをマンマーク。その一方でティーレマンスはB・シウバに出て行くべきなのか迷っている状態となる。また、レスターの守備における弱点と言われるエンディディの脇のスペースにはデ・ブライネとWGから中に絞ったスターリングが立っていた。このようなシティの配置であるため、ティーレマンスがB・シウバに出ていけばその背後をスターリングに使われてしまうこととなるため、容易には出ていけない。そしてレスターのトップはヴァーディ1人であるためシティの後方での数的優位性は担保される結果に。前節のシティはただ2ボランチにしてビルドアップのしやすさを作った感じに見えたが、今節はそのビルドアップのしやすさ、とりわけメンディとオタメンディのビルドアップ時のサポートをB・シウバが担うだけでなく、逆サイドでフェルナンジーニョがドリブルで上がれるスペースができるようになる。前半開始から15分はフェルナンジーニョの持ち上がりから楔のパスを狙う意識が強かったように思われる。

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 1-4-3-3のIHが落ちるような配置としたものの、結局ティーレマンスがむやみにB・・シウバへ出て行くことはなく、レスターが崩れるようなことはなかったため、前半15分を過ぎるとシティは配置を少し変え、ウォーカーが内側に絞って偽SBのタスクを担う形に。ティーレマンスがB・シウバに出ていかず、エンディディの脇のスターリングが位置するスペースを埋めるような立ち位置を取ったため、フェルナンジーニョが持ち上がって楔を入れるよりはサイドで勝負という判断であろう。そうなると当然勝負所はチルウェルとのマッチアップとなったマフレズに。大外でボールを受けることの多かったこの日のマフレズはトラップやドリブルにキレがあり、輝いていた。

 このような形で前進したあとも基本的にシティの配置が変わることはない。その一方でレスターはティーレマンスがエンディディと2ボランチの一角となるような4-4-1-1の守備陣形に。レスターはシティに高い位置でボールを保持されるのを嫌がり、なるべく押し返そうとする。守備をするならゾーン2でというイメージだろう。B・シウバにボールが渡ればティーレマンスが出ていっていたことからそれは窺える。

レスター ボール保持 × シティ ボール非保持

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 続いてレスターのビルドアップ。レスターはビルドアップ時も1-4-1-4-1のシステムだが、この日はシティのハイプレスのサポートとしてマディソンが落ちてくる形をとる。シティは前節とは異なり、デ・ブライネが2トップの傍らとなる4-4-2の陣形でハイプレスをかける。CB2枚に対して2トップがプレスをかけてくるからビルドアップ時の手詰まりをなくすべくしてマディソンが下りてくるのだが、それにはギュンドアンが対応した。

 今シーズンのシティは、4-4-2のハイプレスをかけた際にDFとMFのライン間を突かれて前を向かれることが多い。下りてくるマディソンについていたこの日のギュンドアンは、きっちりマンマークでという感じではなく、前を向かれないことが優先という感じ。シティのこの日のハイプレスはショートパスによる前進を防ぐことが第一優先で、トラップミスや遅いパスなどがあったら一気にスイッチを入れて、クリア気味のロングボールをレスターに蹴らせるという算段だった。実際、前半にレスターが前進してシティの守備組織を押し込んだ場面は一度もなかったし、ハイプレスにはまって仕方なくロングボールを蹴るというシーンも多々あった。

 ここまで述べてきたことからわかるように、この試合で主導権を握ったのはシティである。速攻からヴァーディにこの日のレスターの初シュートを鮮やかなループで決められて先制されるものの、マフレズのカットインとスターリングがもらったPKを沈めたギュンドアンの得点で前半のうちに逆転。一瞬「またカウンター一発かよ」とCityzenの間で流れた不穏な空気を前半のうちに払拭し、ハーフタイムを迎える。

後半 〜空回りした修正〜

レスターの守備の変更

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 後半になるとレスターは守備陣形を修正する。ギュンドアンにマンマークでついていたマディソンは中盤のラインの一角に入って4-1-4-1のブロックを形成。狙いとしては、ボールを左右に動かして相手の守備組織を崩そうとするシティに対して、ライン全体で中央を塞いで前進を防ぐような感じ。後半になってティーレマンスとマディソンは背後のスペースにポジションをとるスターリングとデ・ブライネを気にしてそこに楔のパスが入らないようにしようとしていた。揺さぶらせるようなボール回しをするシティに対してラインとしてスライドして縦パスを入れさせないようにしようとしているようにも思える。

動じないシティ

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 しかしこの変更は、シティに対して通じるものではなかった。4-1-4-1の守備陣形の場合、先程も述べたように、穴となるのはアンカー脇のスペース。スターリングやデ・ブライネはそのスペース内でどの相手選手からも遠いポジションに立つのがものすごく上手い。この二人が巧みなポジショニングでボールを引き出し、中央を閉めるレスターの二列目のラインを突破していた。また、中央を閉めるような守備陣形になればサイドはフリーになりやすくなる。前半マディソンのマンマークがついていたギュンドアンは後半になってフリーになったことでサイドへのボールの配給係に。中央→サイド→中央のサイドを経由した前進の仕方でそのレスターの穴を簡単についていた。

 69分のシティの得点はデ・ブライネがウォーカーから縦パスを受けたことから生まれている。もちろんこの得点はデ・ブライネの圧巻のプレーから生まれたのだが、そのきっかけはレスターの守備の構造上の問題から生まれているということは後半の流れを見る上でもおさえておきたいところである。

 前半のレスターはシティに押し込まれた時にマディソンがギュンドアンにマンマークだったため、守備陣に吸収されやすかった。そうするとヴァーディは孤立することになり、カウンターはロングレンジのボールが主となる。自身の武器で孤軍奮闘ができるのがヴァーディの強みでもあるのだが、可能性はそこまで高くない。このことを踏まえると、4-1-4-1の陣形への変更は、そのカウンター時のサポートがしやすいような配置にしようという魂胆だったのかもしれない。しかし何度も言うように、この変更は結果的にレスターの守備における問題が分かりやすく露呈しただけとなり、そのカウンターのシーンも見られなかった。

 ここまで述べたレスターの問題が解決することはなく、そのまま試合は終了。ホームのシティが調子の良いレスターを破って勝ち点差を1に近づけた。

あとがき

 ダービーで敗北を喫し、雰囲気が微妙な中で手強い相手が続く12月での2位レスターとの一戦。離脱期間の長短はともあれ怪我人が多く、プランが限られてくるであろう中で、まずこのビルドアップの構造を編み出したのは流石ペップとしか言いようがない。調子を戻すという段階にあるメンディの補佐としてB・シウバをボランチに置き、ビルドアップのリスクマネージメントをしつつも、フェルナンジーニョの持ち上がりとウォーカーの偽SBで中と外を状況によって使い分けられるようにしていた。その後も相手のミクロな視点でもマクロな視点でも相手の動き方をよく認知し、それに応じたプランを共有して実行できていたこの試合は、ペップの目指す理想像に全員が向かうようにして数年単位で作られたシティというチームの強みがよく出ていた試合で、個人的にはラポルト離脱以降ではベストゲームかなと。まさに「ONE TEAM」。ちょっと意味違うか。笑

 そしてここのところ絶好調でこの試合でもMOMのケヴィン・デ・ブライネには頭が上がらない。ポジショニングや判断の良さだけでなく、キック精度やドリブルで相手のプランを崩せるレベルにあるこのMFがいるだけでシティは点が取れる。この試合の終盤の交代は足をつっただけだったらしいので、棒にふった昨シーズンを払拭すべく、怪我なく一年を過ごしてほしいと心から願っている。もちろんいつでも誰にも怪我なんてして欲しくないけど。

 次節はウルブズ戦。ニューカッスル戦以来のvs5バックということで要注目。こういう試合でダビド・シルバがいないのが悔やまれるが、プレミア連覇そしてCL制覇に向けて全力で応援していきたい。


トップ画像引用元
https://twitter.com/ManCityJP/status/1208439743798595584

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