下火

ひとりでちょっとだけ、簡単に欲を出せるのに、私にはその一滴も掻き立てられないんだよね。家族になる前に家族になってしまった。メイクをしたって新しい服を買ったって美しい下着を身につけたって何の意味もないから、私自身に価値がないように思う。どんどん老けてどんどん醜くなっていくようで、でもそれを見せてはいけない。悲しんだり泣いたりしてみせることが逆効果だということはもう知っている。知ったところで遅かった。自分のために努力していたはずなのに全て無意味に思えるなんて、やっぱり男の目を気にしていたのだと気付いてしまうとなんて空っぽで凡人的なんだろうとかなしい。世の中にはこんなに男の人がいるのに、ひとりのこともみんなのことももう知らない。もう知らぬまま終わるかもしれない。

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