見出し画像

インバウンドサミットを聞いて、観光業の未来は明るいと思った話。

当日参加を決めたくせに、聞いといて本当によかったと思ったこのオンラインイベント。構成も、内容もめちゃくちゃよかったので、熱が冷めやらぬうちに残すことにしました。

https://inbound-summit.com/

神津島は4年前からの東京宝島事業において、ターゲットを外国人旅行者に設定、インバウンドを積極的に取り入れていくこと。ブランドコンセプトを”ありのままの奇跡に気づく、豊かな水と生きる島”と定め、ファミリアは結構中心となって取り組んでいました。

もちろん、私の中でも、海外からのお客様にも、神津島の良さを知って欲しい!多様な対応のできるおもてなしとしてここでも経験が活かせたら…!と思っていましたが、常に疑問がありました。

「日本人か外国人かっていう違いは、そんなに大きかったっけ?」

その疑問にいきなり答えていただけたのが、冒頭のデービット・アトキンソンさんによる基調講演と続くパネルディスカッションでした。

少しまとめてみます。

遠くからわざわざ…と言う意味で、せっかくだからと多くのお金を使う人が多い=訪日外国人の消費額は大きくなる

ただし、旅行先での過ごし方は、滞在日数によって異なるのであって出身国によって異なるものではない。つまり日本人がオーストラリアで1ヵ月旅行する過ごし方とオーストラリア人が日本に1ヵ月旅行する過ごし方はほとんど同じである。国民性による違いは少しはあるが、国によって全く違うものではない。つまり、外国人旅行者と日本人旅行者は観光客という括りでは同じであること。

消費額単価のUPを図るため、富裕層に向けた3つの柱 
1、新しい顧客エリア(中東、南米など)
2、新しい事業(今までなかった施設、事業、サービス)
3、既存事業、施設、サービスなどの磨き上げ

情報発信について
現在ではSNS等によって良い場所はすぐに、しかも勝手に広まる。そのためポスター制作や一方的な発信(公式FBを戦略無しに毎日更新など)にお金をかけるより、観光地自体中身の整備が重要である。情報発信に予算を使うのであれば同じ金額でコンテンツや環境の整備を。世界中どこにいてもインターネット上で観光地の様子がわかってしまい、個人の発信ができる現代においてはお客を騙す事はできない(例:残念な観光地あたかも古い町並みが続いているようにうまく写真を撮ってPR、実際は3軒しかない。と言う場所はネット上で真実が暴かれるため)

データを元にしっかり科学して、ビジネスとして観光事業をそして、適正価格の設定が続けていく上でも単価UPのためにも必要不可欠である。

もうこの時点で結構お腹いっぱいである…。

続いて地域別セッションは、離島ブランディングの海士町を拝聴。
気になっていた、Entoをオープンされた青山さん、観光庁の小俣さん、東芝国際交流財団の白井さん、そして、目指したい宿の形を示してくださったアレックスカーさんのディスカッションが聞けるなんて贅沢すぎる。

・旅行は非日常を味わうものなので、やっぱり宿はちょっと洒落てるのが人気。それは田舎でも都会でも同じ、そしてインバウンドも国内も関係ない。
・宿そのものが地域である、地域と旅人とが密接に関わる場所が宿。
ただ、交流、地域の体験と快適な空間、自然と向き合う時間など旅行者によって求めるものが少し異なる。

地域の発信の前にやるべきは、地域と真剣に向き合う機会と時間(人、自然、ご飯、景色が魅力と謳う地域は日本全国どこにでも一緒)
海士町の現実 田舎=安宿 という認識のため、底辺の価格に合わせがちだった。また、そこに集まる顧客の特徴も混在していた
海士町の提供価値議論 人が魅力でも「人」というワードを使わないなら、何が魅力か、何が違うのか。→”ないものはないという精神” その精神が人を作り上げてる部分もある。これらの議論には外の目線を利用。魅力を発見し、それを地域に理解してもらう。

<アレックスさん>
海士町に限らず限界集落であっても住民に危機感がない。住人一丸となって、足並み揃えて一緒の成功はほとんど見たことがない。誰か一人がやりたい!と推し進められばできる。町長がやりたい!となったのが祖谷。

”まず、やる。”住民など周りは訪れたお客さんの反応をみてわかってくれる。危機感持ってやっちゃう、やったが勝ち。住民はお客さんがきて賑わってこればついてきてくれる。
祖谷のツアーでは有名な場所に連れて行かない。誰も知らない場所に連れて行く、地域の良さがわかる場所にいく。するとお客様も地域のことをわかってくれる。石、崖、木とか空気や歴史、雰囲気が伝わる場所であること、また”隠れていること”(写真とって終わりな観光地ではないこと)

ブレイクスルーのポイント
(海士町)
気づいたら巻き込まれている。関係人口に支えられている。
また、当事者の覚悟だけでなく、当事者を支え切ると決めている人がいる。
とにかく決心してやること。

<アレックスさん>
初めは行政のバックがないと成り立たないケースがほとんど。
村で決心ができる人がいるのは強い。
作ればくる、ぐずぐずとして、やらないからできない。

外国人と宿
・滞在時間が長いため宿で過ごす時間も重要、宿の役割は重要
・隠れたストーリー(=お宝)私しか知らない特別な場所、その時出会えた景色、人、味など
・外の力を借りる(スタディーツアーとしても可能)

キーワード
隠れた、離れた、不便にニーズがある。という認識
怖がらないでやってみよう!(アレックスさん)
外の力も借りて、お客様が気に入ってくれるポイントに気づくこと、数を追わないこと、気に入ってくれる人に応援してもらう(小俣さん)

私達”よそもの”が作ったファミリアも地域にはなかったB&Bというスタイルであって、中々地域の方には理解していただけない形式ではあったものの、それを貫いています。そして、地元の方にとっては当たり前となってしまった風景や慣わしなど、この島の魅力を全力で語ってきました。
私たちは間違ってなかったんだ…このセッションを聞いてなんだか安心できました。

最後に、カテゴリー別セッションは聞きたいタイトルが多すぎて迷いましたが一番長い時間視聴したのが伝統文化をテーマにしたセッションでした。(冒頭部分を聞き逃したので少し抜けている箇所があるかも)
映画作家の河瀬さん、文化庁の丸岡さん、アレックスブラッドショーさん、お祭りジャパンの山本さんとこちらも豪華…!

文化体験
上部だけになってしまっている文化体験の問題→案:段階(松竹梅)を分ける工夫
地域の深いところの体験が伝統文化の体験であるため、深い部分は特に価値がある。

お祭り
文化にとってなぜ観光が必要か 
祭り=保護、継承、健全な運営の3つが必要 地域コミュニティーに入っていくきっかけ。

祭りの後、地元のおじさんと飲み明かす、来年も来いよ!→リピーター、関係人口の増加 祭りは地域の中に入って行くためのパスポート

目には見えない言葉にできない魅力
目には見えずに感じるものを説明しようとするとき、マスに出す時に表面的になってしまう
見えないこと→ 見たい、欲求につながる。
見えないものにはストーリーが必要→文化の価値をわかる人が語り手となり伝えることができれば魅力が伝えられる。感じるもの=わかりにくいものにはストーリーとそのつなぎ手が必要。

さらに、ストーリーの編み方が大切。
伝えたい人に届ける編集者も重要であり、そのストーリーテラーが地元にいるのが理想

感じさせるためには、その伝統文化をまず理解することが絶対必要。
説明が良くない!現状。心に響く説明を。
伝統文化、文化に対して地域の人が本当に理解しているのか?
滞在時間のうちの1時間を埋めるため、使い捨ての観光体験は良くない。
ロングセラーで高単価を得るための体験作りには年月が必要である。
ここでも適正価格が重要。決して安売りしないこと。
旅行者側の意識を高めて体験してもらう。

文化の担い手をどう探していくか?
文化担い手も変わっていく必要がある、伝統文化の領域に観光は必要がないと思っている現状がある(例:わしらは観光のためにやってないから)
事例)
薙刀の演舞 3000円
剣を振り回すだけのショー(偽物)15000円
旅行会社はマージンの観点から商品に組み込むためにニセモノショーに流れがち。それはなんのためにもならない…。外からの評価を共有する、時間をかけて。やってるのことの価値を理解すべき。

問題点
・観光活用=保護という考えに地域がついてきていない。
・地域に寄り添った専門家が少ない。
・ターゲット、価格、運営の責任 が曖昧。
・ボランティアが多いのもある意味問題。

誰がやる?という場面において信頼関係や間に立つ人の重要性
外の人は怖いという意識=地域出身の人に間に立ってもらうとうまく行く場合がある。
1回目に来たお客さんがめっちゃいい人だったから2回目できた事例。(もえの桜祭り)
1回目の姿勢が大切。外の人がゴリっといくのではなく、中の人と共に耕していくことができれば良い。
地域活性化はなんのためにやるのか? お金?人の流れ?
→地元の人が、外からきた人の喜んでる顔を見ることじゃないかと思う(河瀬さん)

何かを変えたいと思っている中の人がいることに対してサポートをする外の人であること。(山本さん)そして、量を求めず、文化と関連する事業の掛け算で長い目線で文化観光を続けて行くこと。
両者にとって意味がある体験である必要があり、その案内人が必要である。 宝を安売りしないこと。

文化は生活に根差すもの 
文化を観光にするということには違和感があるのは仕方ない。(日常に知らん人がやってくる)
でも、違和感を超えて行くことで価値観が生まれる。ワクワクする。
違和感を超えて行く人はつなぐ人であるが、その”繋ぐ”スキルを持っている人が少ない。
本当の文化を紐解いて、ストーリーを作り上げることで訪れる人も、地元の人も新たな価値を発見する。

もうなんだかため息しか出ない。

宝島事業において地域の魅力を再発見していく過程で、言語化するのがいかに難しいか、また、体験に落とし込むには丁寧に磨き上げたいと思っていた矢先にこのセッションが聞けてよかったと本当に思います。神津島では、何か変えたいと思っている漁師さん、その漁師さんが中心となっている伝統神事。豊かな水と四季折々変化する自然と一緒に暮らす文化が生きているこの島の良さを外に伝える方法はまだまだありそうです。河瀬さんの独特でいて本質をついた感性が伝わるお話に感激しました。

最後に

観光業の垣根を超えて、ここまで前向きな人たちがこんなにもいれば、私たちもまだまだ頑張れる、未来は明るい!と思いました。

訪日旅行客をターゲットに定めたものの、実際私たちは同じような過ごし方、つまり連泊してゆっくり過ごす日本人だって惹きつけるだろうし、英語にした時と同じくらい丁寧に文化を解説することや旅行者に寄り添って接することで満足度は確実に上がるだとうと信じていたことが正しかったのだと自己肯定感も上がりました。

また、オンラインイベントの中でも基調講演、パネルディスカッション、それぞれのセッションと分かれていて一つのイベントとなっている構成もまとまりつつも興味ごとに楽しめたので、大変有意義な配信でした。

他にも、ガイドは必要か?組織づくりなど、まだまだ気になるテーマが満載だったので、アーカイブの配信も期待しています!
こちらのチャンネル に編集されたのちアップロードされるはず…です。

#インバウンドサミット2021
#神津島 #東京宝島


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?