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何故人は芋を食べるのか

前回の宣言どおり、重度のゲーマーであるOL・ゆりあ嬢とともに、相席居酒屋に行きました。

ご存じないかたにどんなところかご説明しますと、男性客と女性客が相席をする、友達・恋人づくりのための出会いの場として昨今注目されている居酒屋です。
男性は有料ですが、女性は飲み食い無料です。
以前テレビで、食費を浮かせるために相席屋をはしごしている女性が取材されていましたが、メニューはカラオケのスナックフード並で、タダ飯だけを目当てに通いたいほどのものは置いていませんでした。
みんな出会いが目的だ!

口頭ではコミュニケーション能力の向上を目標に掲げ意識高そうな姿勢を見せつつも、その実秘密組織に潜入するスパイのような気分で入店しましたが、この日は雨で店内は女性客がまばら、男性客もぽつぽつ来店する程度。
私もゆりあ嬢も、誰とも相席にならないことに気が緩んで下戸のくせにお酒が入り、赤くなったり青くなったり白くなったり。その間、店内を見回すと相席している席が二、三程度。
もういいやよくがんばった帰ろうと言いながら私が寝不足も相まってぐっすり寝てしまい、そのせいで随分長居しましたが、今度こそ本気で出ようという段になって、男性二人客が席に着きました。
互いになんとなく来店動機を言い合って、ジョッキで乾杯。しかし店員さんの誘導により、十分足らずでよそへ移っていきました。

その後、ゆりあ嬢が「私たち、出会いに恵まれないね」とかなしそうにぽつりとつぶやいて、私はその場では言葉が出ませんでしたが、出会いのよしあしで語ってよいものか今一度考えなおしたいです。
あのまま留めたところで、会話が弾むとはとても思えなかったもの。

振り返ればあの日の私は、いもばかり食べていました。女子力向上と称して行った料理教室でアンチョビポテトのパンをつくり、イギリスの貴婦人気取りで英國屋にてチキンとポテトサラダのワッフルを注文し、出会いを求めた相席居酒屋でポテトサラダや皮つき厚切りのフライドポテトを食べまくり、お腹いっぱいでもう入らないと言いながら、帰宅後さらに、持ち帰ったアンチョビくさいじゃがいもの入ったパンを丸飲みしました。そんな一日でした。
私は正真正銘の、いものなかのいもおんなに相違ございません。
現実を受け止めるには勇気が要ります。

ともにポテトのパンをつくったものの、おいもまみれを回避したゆりあ嬢は、私のようないもおんなではないけれど、しかしワッフルにトッピングされていたバナナや生クリーム、酒のつまみの茹でたウインナーを前に、惜しげなく下ネタを披露してくれたので、行き着く先は同じところのような気がしています。
仲間がいるって、心づよいね。

胃の中をじゃがいもでいっぱいにしたまま、寄る辺のなさを振り切るように、ゆりあ嬢と次回、京都の美術館で開催されている春画展を見に行く約束をして別れました。

えっ、これまだ続くの?
次こそ、楽しいと……いいな。

(2016年2月22日はてなブログ掲載の記事を修正したものです。)

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