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藤浪晋太郎、BALへ。

7月20日の朝、Twitterを開くと衝撃のニュースが飛び込んできた。「藤浪、オリオールズにトレード」。ボルチモア・オリオールズ(BAL)はア・リーグ東地区に所属していて、7月20日の時点で、開幕から驚異的なペースで突っ走っていたレイズを追い越し首位に浮上した。
「トレード」と聞くと日本ではネガティブな印象があるが、MLBではそんなことはない。地区首位争いをしているチームに、藤浪晋太郎は必要とされたのだ。シーズン前の評判、シーズン序盤の成績を考えるとこれは快挙と言っていいだろう。本当にすごい。すごいよ藤浪。

OAKにとっての藤浪晋太郎

オークランド・アスレチックス(OAK)は、現在再建期に入っているチームだ。年々主力が移籍し、昨年は地区最下位に沈んでしまった。だからこそ若いプロスペクトを集め、チームをまた作り直す時期に入っている。OAKはそんな風にして何年か周期で定期的に強くなるチームなのだ。そんなチームが、今年で29歳と決して若手とは言えない藤浪を獲得した。

このことを踏まえるとOAKには、「ポテンシャルは高い藤浪を獲得しておいて、成績が良かったらトレードで若い選手と交換、悪かったらオフに戦力外」という思惑が初めからあったと思う。1年契約だし。


藤浪の今季の年俸は約4億円。日本球界で年俸4億円はトップクラスの選手の水準だが、メジャーではそこまで高い金額ではない。参考までに、今季の千賀滉大(NYM)の年俸は約20億円、大谷翔平(LAA)に至っては約43億円となっている。藤浪のように年俸が安いということはトレードで他の球団も獲得しやすいということだ。やはりOAKには藤浪をトレード要員として使いたいという意図があったのだと思う。

スプリングトレーニングから開幕直後にかけての藤浪はとても苦しんだ。ノーワインドアップからの2022年式のフォームがなかなかハマらず、ボールは荒れ、打ち込まれた。現地メディアからは批判され、日本でもSNSで格好のネタにされた。それでも、中継ぎに配置転換されてからはフォームを2020年のようなセットポジションからの始動に変え、6月からは覚醒。直近11試合連続無四球、防御率も7月は2.25と1ヶ月以上にわたって安定感のある投球を見せている。
さらに特筆すべきはやはり球の速さだろう。リリーフに転向してからは平均98.4マイル(158.3km/h)のフォーシームを投げており、これはメジャーでもトップクラスの数値だ。さらに最高球速は102マイル(約164km/h)と、最速162km/hだった阪神時代よりも明らかに進化していることが分かる。

今回のトレードで、OAKはEaston Lucasというリリーフの左投手を獲得した。今年で27歳と少し高齢ではある。だがEaston Lucasはマイナーでは好成績を残しており、球団プロスペクトランキングでは30位にランクインしている好投手だ。それなりに良いトレードになるのではないだろうか。


BALにとっての藤浪晋太郎

Félix Bautista

ボルチモア・オリオールズはリリーフがとても強いチームだ。特に8回を任されているYennier Canoと9回を任されているFélix Bautistaの2人は共に1点台の防御率を誇り、安定感がすごい。特にFélix Bautistaは奪三振率17.80の怪物だ。そんな勝ちパターン事情を考えると、藤浪はおそらく点差がある時の勝ち試合、または負けている時の追撃要員などで起用される可能性が高いと思う。

今年のBALは野手陣もとても良い。若きスター、Adley Rutschmanや3割を超える打率を残しているAustin Hays 、WBCベネズエラ代表のAnthony Santanderなど良い選手が揃ってきている。

このままいけばBALのポストシーズン進出はほぼ確実だと思う。藤浪がどう起用されるか注目だ。

終わりに

どんな役回りだとしても、現在地区首位のチームに必要とされて移籍したことには間違いない。ポストシーズンの大舞台で、躍動する藤浪晋太郎が見たい。そして来年以降のメジャー契約も勝ち取ってもらいたい。(敬称略)



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