視能訓練士軍団誌2021.2月号

目次
□急性内斜視
□調節麻痺薬の効果
□上下斜視の定量
□アイパッチ
□硝子体手術後(ガス置換)
□瞳孔径の性差
□上斜筋の作用
□HFAの検査結果
□HFAのパラメータ
□眼底写真の撮影
□OCTと同じ原理の検査
□網膜対応欠如
□白内障術前検査
□近方視力の換算
□IOLの入れ替え
□高齢者のの近見眼位
□Jacoのジャコダー
□コンタクトレンズの取り置き
□学会所属の方法
□症例検討1
□症例検討2
□症例検討3
□症例検討4
□コスト
□施設の特徴
□職場での医学書購入
□女性医師との関わり
□職場からの課題
□転職
□Hirschberg法の影響因子(国家試験問題解説)
□大型弱視鏡(国家試験問題解説)
□偏心固視の斜視検査(国家試験問題解説)
□国家試験会場
□国家試験の時間配分


□急性内斜視

【質問①】
急性内斜視で頭位異常がみられないのは、麻痺性の斜視ではないからですか。

〈回答①〉
・共同性斜視だからです。
麻痺性斜視に限らず、非共同性斜視や眼瞼下垂や眼振でも頭位異常はみられることがあります。

【質問② 】
共同性斜視だとなぜ頭位異常がみられないのか教えて頂きたいです。

〈回答②〉
・共同性斜視とはどういう斜視をさすのか調べてみて考えてみてください。
【質問者】▶どちらの方向を見ても偏位量が変わらないためですね。


□調節麻痺薬の効果

【質問】
サイプレ2回+ミドリン1回でアトロピンと同等という認識は合ってますか?

〈回答〉
・はじめて聞きました。
・薬物の分子単位で違うので理論上は違うと思います。臨床ではデータを取ってないので何とも言えないですね
・全く別物です。EBM的にも、1%アトロピンと0.5%アトロピンですら別物、という認識です


□上下斜視の定量

【質問】
上下斜視の定量がうまくできません。瞼を見たらいいよとアドバイスされましたが、小さい動きだと判断つきません。これは、慣れるしかないのでしょうか?
また交代カバーしてる時目の位置が行き過ぎて戻るタイプの人が難しいです。何回も交代カバーしても綺麗に動いてくれなくてどうも斜視角が決め切れない時があります

〈回答〉
・瞼を見るのは有りだと思います。あとは両眼の動きを確認する事です。上がる動きより落ちる動きの方がわかりやすいです。もちろん慣れもあるかと思います。 戻り(リバウンド)と言いますが、遮閉を長くしたりしっかり固視してもらえば止まることもあります。あとは、僅かな上下を矯正すると動きがスムーズになる事もあるので試してみてください。


□アイパッチ

【質問】
1.遮蔽時間は最低何時間?最長では何時間までとされていますか?
2.アイパッチによる遮蔽弱視はどういった場合におこりますか?
長時間アイパッチし過ぎたら遮蔽弱視になる可能性があると患者さんに説明する事があるのですが、終日遮蔽を指示している施設もあるので、どういった条件が揃った時に遮蔽弱視を起こすのかわからなくなりました。

〈回答〉
1.最低時間は再発防止(メンテナンス)のために30分などがありますし、訓練開始でも1hなどはあります。最大は6-8hでしょうか。終日遮閉をしている施設もありますね。ですが症例によって考え方は異なるため注意は必要かと思います。
2.これは個人的意見ですが、終日遮閉を行なった場合、遮閉弱視が起こる可能性があるのではないかなと思っています。他に付け加える項目となるとアバウトですが「感受性が高い幼少期」でしょうか。ちなみに6h/日の遮閉で遮閉弱視になった症例は、当院では見たことがありません。
【質問者】▶1つ質問なんですが、感受性の高い幼少期って大体で構わないのですが、何歳位までとされていますか?
・(運営より回答)8歳ごろまでが一般的ではないでしょうか。
・私は患者さんには遮蔽弱視になる可能性については敢えてお話ししません。
注意深く経過観察をしますので必ず来院してください、くらいに留めておきます。アイパッチで経過観察中の方が、予約日に連絡なく来院しなかった場合には、必ずこちらから電話を入れることにしています。


□硝子体手術後(ガス置換)

【質問①】
術後のガスが入った状態でOCT,眼底等を撮る際、ピントを-15D程度に設定した方が写りは良い事が多々あるのですが、それはどうしてでしょうか。

〈回答①〉
・眼内屈折率が変化するから、でしょうか。以下の表にあるように硝子体・シリコンオイル・空気でも屈折率が変わりますのでガスではマイナスに振れます。

・入っている眼内レンズがマイナスレンズの場合は遠視になっている。

【質問②】
黄斑円孔の患者さんの術後のガス下OCTを撮影しました。いつもはピントを−15Dにして撮影しています。しかし写真の患者さんは前房内にもガスが入り込んでしまったせいなのかピントを+15Dにした方が鮮明に写りました。レフケラでも+20Dぐらいになりました。その理由がどうしても分からないので教えていただけないでしょうか。

〈回答②〉
・術後何日ですか?
ガス下OCTというより、ガスが上に上がってる気がしますが。
IOL眼ですか?無水晶体眼ですか?
 【質問者】▶ガス下OCTは術後3日目の硝子体内のガスが65%の時に撮影しました。前眼部の写真は術後4日目に撮影しました。なので、ガス下OCTを撮影した時はまだ前房内にあるガスが瞳孔中心にかかっている状態で撮影しました。
IOL眼で、術後のガスが抜けた後の屈折は−4Dぐらいです。
・経験はありませんが、角膜後面は凹レンズと同じ効果ですので、後面の屈折力が強くなったと思われます。
角膜の屈折率は1.376
房水は1.336 だったかな?
その比率で成り立ってる屈折で-4Dです。
通常角膜では後面のマイナスレンズの効果は-6ですが房水が空気に変わったことにより増加して遠視になったのではないかと思います。
 【質問者】▶わかりましたありがとうございます。
しかし硝子体にガスがある時は屈折はマイナスになって、前房にある時はプラスになるのはなぜなのでしょう?同じガスなのにある場所によって屈折が変わるというのがあまり理解できません。
・硝子体中にあるときは、眼内レンズ(プラスレンズ)→ガスで近視化。
前房中にあるときは角膜後面(マイナスレンズ)→ガスで遠視化です。
・ガスがあると、その屈折の効果が強くなるということなので、硝子体にガスがあると、眼内レンズは+の度数が入っていてそれが強くなって近視化する。
前房にあると角膜後面はマイナスの屈折なので、それが強くなって遠視化する。

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