織田泉┊毎月末掌編小説ネプリ配信

小説、アート評論、短歌。毎月末ごろ、掌編小説のネットプリントを配信していきます。

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最近の記事

粉々の虹、出奔

望んだわけではなしに、理を超えてしまう。  妻の髪に白が目立つようになっても、おれの髪はつやめきを保って新鮮に黒いまま。  随分とお若いですね。  かけられる言葉はそやしから疑義へと転じ、山あいの町の風に、細く確かな操り糸として交じった。  妻の喀血は鮮やかで、それが頃合いだった。  少し、陽を浴びに。昼食を済ませると、妻は裏庭に回る。そのとき出ていくと決めていた。  今おれはこの家を置き去りにする。まばたきと呼ぶには長い、かりそめの黙想。そして、踏み出した。  ぱり、