「先般の原発処理水放出を受けた中国政府による我が国への不当な措置を強く非難・抗議し、本県として政府に対し、中国への毅然たる対抗措置を講じるよう求める要望書」
先般の福島第一原発のアルプス処理水放出を受けて、中華人民共和国政府は、我が国からの全ての水産物の輸入を禁止する措置を発動し、また、その統治下にある香港政府も、10都県からの全ての水産物の輸入を禁止した。
我が国にとって中国と香港は、水産物の輸出先の一位と二位を占めており、その額は令和4年でそれぞれ871億円、755億円に及ぶ。今回の輸出禁止措置が我が国の水産業者に与える被害は甚大である。
もっとも、本県を含む十都県は、平成23年の東日本大震災以降、中国向け農林水産物の輸出を全面的に禁止されてきた。東日本大震災での原発事故で我が国に対して輸入規制を講じた55か国のうち、これまで48か国が規制を撤廃したなかにあって、中国のみが何らの科学的根拠もなしに本県への全面的輸入停止措置を続けてきた。したがって、今般の輸入禁止措置が本県に与える被害は他県と比べると軽いが、長年の輸入停止措置が本県に与えた機会損失は莫大である。
かたや、我が国の中国からの農林水産物輸入は、令和2年には11,907億円に上り、輸入相手国のなかではアメリカ(15,579億円、17.5%)に次ぐ第2位(13.4%)を占めている。こうしたアンバランスな貿易関係は不公正であり、自国の農林水産業の犠牲の上に中国からの輸入が成り立っている。
今般のアルプス処理水放出も、処理水に含まれるトリチウムなどの放射性物質は、国や国際機関の規制基準をはるかに下回るにも関わらず、中国政府は「処理水」を「汚染水」と喧伝して不安を煽り、我が国農林水産物の国際的信用を傷つけている。しかも一方では、中国の原発におけるトリチウムの排出量は、福島原発を大きく超過する上に、いまも中国の漁船が我が国周辺海域で海産物を乱獲し続けている。
このような中国政府による我が国への不当な仕打ちは、我が国を貶める政治的な悪意に基づくものであると断ぜざるをえない。
これまで本県は、「国の施策に対する毎年の重点提案・要望」において、中国や香港、台湾など我が国に輸入規制を実施している国や地域に対して「食品の安全性に関する正確な情報を十分に提供するとともに、科学的根拠に基づかない過剰な措置をとることがないよう、引き続き働きかけを行うこと」との記載を繰り返してきたが、もはや中国政府による公正と信義を期待することは困難であり、このような生温い提案・要望では本県の農林水産業者を守ることは出来ない。
以上の理由から、今般の輸入禁止措置に至るこれまでの中国政府による我が国への不当な措置を強く非難し、抗議するとともに、本県としても、中国に対する毅然たる対抗措置を発動するよう政府に求めるべきである。右要望する。