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県営住宅条例改正案に対する反対討論

有志の会の折本です。それでは議案第6号、「千葉県県営住宅設置管理条例の一部を改正する条例案」に対し、以下の理由で反対します。

第一に、少子化対策が後回しにされている事です。

本条例案では、県営住宅における空き家戸数が増加しているほか、全入居世帯数に占める高齢者のみの世帯の割合が上昇していることから、入居にかかる同居親族要件を削除し、60歳未満の単身者の入居を可能にすると共に、同居者の要件として親族に加え、里親委託された子どもと、市町村の制度を活用してパートナーシップ宣誓をした方の入居を可能とすることで、県有財産の有効活用や県営住宅のコミュニティーの活性化を図る、としています。

たしかに、本県の県営住宅は現在ある19,171戸の内、令和5年度末で3,050戸が空き家になっており平成26年の1,116戸から3倍近くに増加しています。また入居する世帯の状況をみても、高齢世帯は9,742世帯と入居者全体の62.1%に達しています。

しかしその一方で、入居者のうち、18歳未満の子を扶養している子育て世帯は15%に止まっています。先日、厚生労働省が発表した23年国民生活基礎調査では18歳未満の子どもがいる世帯の65%が「生活に苦しいと」と回答し、前年の調査より10.3%上昇しています。

特に、本県の合計特殊出生率は、令和4年で全国平均1.26を下回る1.18であり、新婚や子育て世帯の負担軽減による出生率の引き上げは国家民族の存亡に関わる県の最優先課題です。

しかしながら、現在、本県の県営住宅に入居が可能である子育て世帯の政令月収は21.4万円以下に過ぎず、例えば4人世帯の場合の年間の給与収入でいえば約531万円以下ということになります。

一方で、平成23年の公営住宅法改正により、県の裁量で子育て世帯を含む裁量階層の収入基準を政令月収25万9千円、4人世帯だと年間の給与収入が599万円まで引き上げることが可能になりました。

したがって、空き家が増えていることを理由に同性カップルや60歳未満の単身者へ入居対象を拡大するのであれば、新婚や子育て世帯への収入基準の上限を引き上げ、生活に困窮するより多くの新婚・子育て世帯が入居できる環境を整備することが先決ではないでしょうか。少なくともその様な検討がなされた形跡はありません。

また、私が昨年12月議会での一般質問でも質問した、子育て世帯限定住宅の拡充についても、「地域の需要などを踏まえながら、限定住宅の提供戸数を増やすなど、子育て世帯がより入居しやすくなるよう取り組んで参ります」との前向きな答弁を頂きました。しかしながら、あれから半年以上が経過しているにも関わらず、いまだ県は何らの具体方針を示しておりません。遅い!と言わざるをえません。当局とのヒアリングでは、子育て世帯限定住宅の選定基準として・建設年度が昭和50年代以降、立地がモノレールを含む鉄道駅から比較的近いところ(徒歩圏内)、間取りが3DK・3LDK以上などの要件が内規で定められているとのことですが、リモートワークの進展など社会環境の変化に対応し県は速やかに内規を改定し、魅力ある住居にリノベートして新婚子育て世帯に提供すべきです。

以上のような対応をみても、熊谷知事は多様性の名の下に、LGBT政策を優先し、少子化対策を後回しにしているのではないかとの疑念を拭えません。

第二に、県下の市町村にパートナーシップ宣誓などのLGBT政策を促す事実上の圧力になるということです。

本条例案では、市町村の制度を活用してパートナーシップ宣誓をした方のみが入居対象となっております。現在本県では54市町村の内、12の市でパートナーシップ宣誓の制度を導入しておりますが、私が当局にお聞きした所では、同制度を実施している自治体で宣誓をした方であっても、他の同制度を実施していない自治体に立地する県営住宅に入居することはできないとの見解でした。しかし実際の運用面で、その様な対応を続けることが果たして可能でしょうか。特に、多様性尊重条例を制定した本県において、居住する基礎自治体によって県営住宅への入居要件が変わるのは「法の下の平等に反する差別」だと言われときに、県やパートナーシップ宣誓を実施していないそれぞれの自治体はどの様に抗弁するのでしょうか。辻褄が合いません。事実、一昨年、「性の多様性尊重条例」を制定した埼玉県では、市町村でのパートナーシップ宣誓を受けなくても、独身を確認する戸籍謄本や1年以上の居住を証明する住民票と、そしてパートナーシップ関係申立書があれば同居者の要件を満たします。

したがって、今回の条例改正は、県が自治体の頭越しに同性カップルの入居を認める布石となり、さもなくばパートナーシップ宣誓を実施していない県下の自治体に対して、多様性尊重条例の趣旨を徹底すべく同制度の導入を促す事実上の圧力になり、基礎自治体の自律性を損なうことに繋がることを危惧致します。

第三に、時代の要請に逆行していることです。

前述したように、県は条例改正の理由として、県営住宅で全体の約16%に当たる3,050戸の空き家が発生していることを挙げておりますが、空き家数の増加は本県を含む全国的な傾向です。県が作成した県営住宅の長寿命化計画によると、本県の空き家数は増加を続け、平成25年(2013)時点では36万7千戸と、10年間で6万1千戸増加しており、その内52.9%は賃貸用の住宅が占めております。

かたや、新設の住宅着工数は、持ち家は減少傾向にありますが、貸家は増加傾向にあり平成28年(2016)には2万戸を超えております。

当局は県営住宅で空き家が増加している要因として、建物の老朽化やエレベーターの未設置など利便性の欠如を挙げております。しかし、根本的な要因は、住宅市場において貸家住宅が供給過剰になっていることや、住まいや働き方が多様化するなかにあって、これまでの直接建設による住宅供給の在り方そのものが県民の住宅需要にマッチしなくなっていることにあるのではないでしょうか。

したがって、「県有財産の有効活用」を謳うのであれば、既存住宅ストックの修繕・改修による長寿命化と耐用年数を過ぎた住宅の建替えだけでなく、再編・集約化による戸数の調整や土地の高度利用による余剰地の創出、PPP/PFI等の導入検討といった再整備方針の具体策を速やかに策定し、民間住宅の借り上げや、用途廃止した県営住宅の用地処分で得た資金での家賃補助など、社会情勢の変化に見合った住宅政策を実施すべきです。

こうした努力を尽くさずして、空き家を理由に同性カップルや単身者などに対象世帯を広げることは、問題の本質に目を向けず、歴史的役割を終えた施設をいたずらに延命し再整備を遅らせることに繋がりかねません。

以上の理由により本議案に反対いたします。

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