見出し画像

ロードムービー原作 「また会えたときに 2」 第14章 (エンディング)

僕:「ついにこの日が来てしまいましたね。」

八幡様:「これがやりたかったのです。」

僕:「と、いいますと?」

八幡様:「これから書く、エンディング映像のシナリオです。」

僕:「はい、僕も楽しみです!」

八幡様:「さて、今回書いた中で、登場人物は数えて何人いましたか?」

僕:「ええ? 何人? そんなの数えておりません。」

八幡様:「そうですか。では。よーい・・・。」

僕:「え、まさか?」

八幡様:「どん。チッチッチ・・・。」

僕:「うっそ! 今ですか!? ちょ、ちょっとお時間ください。

今まで書いた原稿から数えてみます!!」


「また会えたときに 2 」 第14章

登場していただいたみなさん

<第1章「瀬戸内フェリー 編」の登場人物>

「プロローグ」より 

  • 僧形の男 

  • 八幡様

  • 幼い頃の僕

  • 若き日の母

本編より

  • フェリーの3人兄妹(男 男 女)

  • お母さん

  • 4年生のリョウタくん 

  • 近くにいた船員 

  • 他乗員乗客30人  

    →小計:40人

<第2章「天空の指揮者 編」の登場人物>

  • 小野村先生 

  • ハシモトのばあさん 

  • その息子さん 

  • 青年団のタケゾウさん 

  • 白ひげのワカナさん 

  • 小野村さんの娘さん 

  • 他、村人子供も合わせて20人 

    →小計:26人

<第3章「徳島の霊水 編」の登場人物>

「霊水のありか」より 

  • ガソリンスタンドのおばあちゃん 

「弘法さん」より 

  • 仁王像2体 

  • 手拭い作務衣のおじいさん 

  • 言霊を聞いたお遍路さん10人 

  • 青年の両親2人 

「そして海へ」より

  • カヌーの御一行の3人 

  • その取り巻き8人 

  • ガソリンスタンドのお姉さん 

    →小計:28人

<第4章「高知の川エビ漁 編」の登場人物>

導入部分より

  • 夜をバカにすんなおじさん 

  • 交番で寝かせてくれたお巡りさん

「堤防での出会い」より

  • 光樹 

  • お母さん 

  • 光華

  • おっさん(回想のみ)

「カヌーの男」より 

  • 男性3人 

  • 1匹 

    →小計:10人

<第5章「バック・トゥ・ザ・高知 編」の登場人物>

「鬼の近道」より  

  • 天谷さん 

  • セダンの運転手 

  • そのお母さん 

「いじめから得たもの」より 

  • 中学生のくま

  • 先輩1人

  • 同級生3人

  • 中学時代の母

「福福交換」より 

  • 霊水のおじいちゃん(回想) 

  • 高知の若い姉妹 

    →小計:12人

<第6章「道後のとみちゃん 編」の登場人物>

「居酒屋カンジ」より 

  • 大将 

  • 店員3人 

  • とみちゃん 

  • とみちゃんの子供(回想)

  • とみちゃんの元旦那2人(回想) 

「裏切りの代償」より 

  • 若き日のとみちゃんと順子さんとその婚約者 

→小計:11人

<第7章「奄美奇譚 前編」の登場人物>

「順子さんを探せ」より 

  • 通りすがりの地元のお母さん

「3人の子どもたち」より

  • カズキ 

  • ジロー 

  • イワちゃん

「2年計画」より 

  • 亜紀さんと孝臣くん

「順子と富美子」より 

  • 順子さんのお母さん 

    →小計:7人

<第8章「奄美奇譚 後編」の登場人物>

「トンネルくぐり」より 

  • 番台のおばあ

  • たっくん

  • 男湯3人のおじさん 

  • 女湯の声3人

「出航」より 

  • もぎりの船員さん 

  • たっくんのお父さんとお母さん 

    →小計:11人

「とみちゃんの決意」より(これはノーカウントとします)

  • とみちゃん再登場 

  • 中学時代の回想 

  • 奄美のカップル回想

<第9章「諫早の櫂」の登場人物>

「繋いで、流して、平らかに」より 

  • 交番の奥様せっちゃん 

  • タカ坊赤ちゃん

「多比良から諫早へ」より 

  • 白崎夫妻 

  • ラナイちゃん

  • カワちゃん

「消えゆく自然の恵み」より 

  • カヌーの男(回想)

「折り鶴の想い」より 

  • 学童保育の小学生の顔10人(回想)

  • 松葉杖の奥さんと旦那さん 

  • 春木さんとお友達 

  • メガネのおじさん 

→小計:22人

<第10章「長崎サチアレ 編」の登場人物>

「ノブさんからのメール」より 

  • 古川ノブさん 

  • さちこさん 

  • ご友人二人 

  • 東洋館のゴンちゃん 

  • 長崎旅行のバスガイドさん 

  • 写真撮影に並んでいる人の数50組(100人くらい) 

  • バス旅行のメンバー20人 

    →小計:126人

<第11章「福岡白バイ 編」の登場人物>

  • 成長した松山拓海さん 

  • 店員さん2人 

  • 民宿のおじさん 

  • 救急隊員二人 

  • 亜紀さんと孝臣くん28年後の2人 

  • 白バイの警察官(おじさん) 

  • 白バイのおじさんのお父さんとお姉さん(回想) 

    →小計:11人

<第12章「山口瓦そば 編」の登場人物>

「瓦そばを求めて」より

  • 酔っ払いのおじさん(虎)と若者(豹) 

  • 肉屋の高校生(菜穂ちゃん) 

  • お父さん

  • お母さん

    →小計:5人

「お好み焼き屋 もんちゃん」より

  • 大将

  • 女将

  • お客さん(10名ほど)

    →小計:12人

<第13章「岡山の少女 編」の登場人物>

  • さちこさんの娘、みなみちゃん 

  • 古川ノブさん

  • 手芸店のお客様9人

  • 先生(手芸店のオーナー)

  • 信号待ちのマダム 

  • 発掘調査の5人 

    →小計:18人

総出演者と社会学

八幡様:「ご苦労さまでした。では、全部を合計すると?」

僕:「339人になります。」

八幡様:「ほう、『皆サンキュー』ときましたか。アニキからの感謝が込もった数字になりましたね。」

僕:「はい、皆様に心から感謝しております。

カウントはひょっとしてかぶっている人もいるかもしれませんが、ざっと数えると、そのくらいです。」

八幡様:「ここに出てきていない関係者も含めると、この旅でアニキと触れ合った人々はおそらく、その倍はいるでしょう。」

僕:「700人近く!?」

八幡様:「しかしこれは、アニキだけに限らないのです。」

僕:「あら!」

八幡様:「皆さんも一人で生きたいと切に願っても、誰かと関わり合ってしか生きられません。

そして、大事なのはその数の多さとか、少なさではありません。

これをひとつの社会学として見ることです。」

僕:「社会学・・・?」

八幡様:「想像をしてみてください。あなたがいま着ている服の話です。

あなたが着ている服の繊維は、どこかの国の原産で、それを収穫した人がいて、それを日本に運んできた人がいます。

それを仕分けして、加工して、デザインして、印刷して、卸して、小売りして、縫製して、検品します。

そこからコマーシャルのためにモデルさんが汗をかき、それを撮影する人がいて、エディターもいます。

これで売れるとなったらそれをWEBや流通に乗せて、仕組みを作り、それを管理しながら販売します。

そこでお客様からフィードバックをいただき、さらに良いものを企画し、また新しい服を作ります。

そしてまた誰かの手に渡っていきます。」

僕:「こ、工程が多い。。。」

八幡様:「これは全くざっくりな工程ですし、服も一例に過ぎません。

車、パソコン、携帯、エアコン、ソファー、病院、道路、電車、食べ物、コンビニエンスストア。

あなたが何気なく使っているものに、どれだけの人々が関わって生きているか。

そこに気づけた時に初めて、人間はお互いを尊敬し合える仲間になります。

誰一人として、たった一人で生きていられるものではないのです。」

僕:「おっしゃる通りです・・・。

今回の旅をまとめている時に、どれだけたくさんの方が、当時の僕に対して全力の応援をくださったか。

書きながらずっと、お陰様であることを身に染みて感じていました。

今でも、これで執筆が終了してしまうことが寂しいくらい、書くことが楽しくて、とても集中した2週間になりました。(少しおやすみをいただいたおかげで、最後まで乗り切れました)

お付き合いいただいた読者の皆様。

そしてこれを毎日投稿していくにあたり、文章の校正、丁寧な修正、真心の改善を加えてくださったスタッフの皆様にも心から感謝いたします。

僕一人では到底できませんでした。

本当にありがとうございました。」

八幡様:「よく言えましたね。

旅の途中、アニキにとってはきっと、出会えた方々に特別な何かをした、という意識はなかったはずです。

自分はただ、風のように通り過ぎただけだと思っています。

結果が良くなるかどうかの問題ではなく、その場面、その空気感、その会話、その想いを大切にしただけです。」

僕:「はい、まったくもって、それだけです。」

八幡様:「一瞬で下した難しい判断もありましたね。」

僕:「逆に、なかなか決めきれずに悩んだこともありました。」

八幡様:「それが、人間らしいアニキを形成しました。

物語の最後に、登場した皆さんのお顔が走馬灯のように流れます。

出会えた皆さんにどんな未来が待っているのかを、全員で共有できるチャンスです。」

僕:「この原作は、事実に基づいています。

しかし、少しの脚色もあります。

そこはどうか、大目に見て頂きつつ、ご覧いただきたいと思います。

すでに、ノブさんの奥様、さちこさんがブログで発表している内容と被るところもありましたので、あえて大きくアレンジした部分もあります。」

八幡様:「同じ出来事を、大きく広げて映画風にアレンジすることは、エンタメですので構いません。

大切なことは、アニキがどうこうではなく、見ているあなたはどう感じるか。です。」

僕:「読者さんにすべて委ねる、ということですか?」

八幡様:「そうです。旅をする男が、大旋風を巻き起こすでもなく、ただ子どもと戯れ、素敵な人たちと出会い、会話し、お互いに助け合い、受けた恩を返し合い、許し合い、約束を守り合い、目の前に起きる命の輝きを消さない行動を集中してとっていく。

その生き方が、この世の誰かの小さな道しるべになれば、それで良いのです。

それをどう感じるかは、受け取る側の自由です。」

僕:「なるほど。そう言ってくださると、気がラクになります。

僕が旅をして、人と会って、通過していったすべての事柄。

それと、関わった人の人生と、その周りの人の人生。

それが絡み合い、混ざりあい、不思議な化学変化で噛み合って、素敵な世界を作っていくきっかけになったのであれば、本当に嬉しいです。」

八幡様:「いいですね。では、その嬉しい気持ちで、始めましょう。さあ、アニキ、いきますよ。」

僕:「は?」

八幡様:「映画につきものの、あの掛け声です。」

僕:「ああっ! ぜひ!」

八幡様:「それでは、皆様に大きな感謝を込めて・・・。」

僕:「せーの!」

八幡様 & 僕:「アクション!」

エンディング映像

Scene 1. 青年の下宿にて

大阪に戻ってきた青年は、

帰ってきたぞー! と下宿の畳に大の字で寝っ転がる。

伸ばした足がリュックに当たり、内ポケットからコロンと出てきたのは、長崎で拾ったネガフィルム。

大袈裟に「しまった!」という顔で、玄関を出て、急いでヘルメットを被り、バイクで現像サービスのあるカメラ屋さんに走る。

Scene 2. 鹿児島伊集院、順子さんの家

緊張して向き合う2人。

髪の毛を黒く染めたとみちゃんが、頭を下げたまま、上げられずにいる。

その肩にゆっくりと手を置く順子さん。

その流れでいつの間にか、順子さんがとみちゃんを抱きしめて号泣。

とみちゃんはカチューシャを握りしめたまま、羽の飾りが震えている。

Scene 3. カメラ屋に到着

カウンターに飛び込む青年。

受付に名前を書く。1時間後に取りにきてほしいとのこと。

ここで待ちますと言って、窓際の椅子に座り、街路樹を見上げる。

Scene 4. 福岡の道路

青年の見つめる街路樹の先に、白バイが見える。

太い眉毛とサングラス。バイクを厳しく取り締まっている。

違反者をただ捕まえるのではなく、その人に、命の儚さを伝え、真剣に安全を祈る強面が見える。

Scene 5. 徳島のガソリンスタンド

徳島の霊水を飲ませくれた、若々しいおばあちゃん。

立て看板の横に立ってニコニコしている。

看板に書かれてある文字が映る。

「霊水あります。冷えてます。お肌ツヤツヤ。燃料満タン!」

青年が走り去った後、思いついて看板にこれを貼り付けたところ、お客様が増えていったのだ。

ほくほく顔のツヤツヤおばあちゃん。

Scene 6. 小野村先生の同窓会

おじいさんばかりが集合し、みんなで泣きながら「仰げば尊し」を歌う。

この日本は大丈夫じゃ。これからの教育は、安心せい。

良い若者が育っておる!

じゃから、わしらはもう身をひかにゃならんぞ。

いつまでも、若いもんの邪魔はするな。はよう渡せ。

頷いて酒を呑み交わすお爺たち。

Scene 7. カメラ屋さん

「お待ちどうさまです!」

現像した写真を確認する青年。

たくさんの子どもたちが写っている。

これはきっと、学校の先生が写したものに違いない。

しかし、この写真の中に、学校の名前が分かるようなものは写っていない。

青年は困り顔だ。

店員さんに見せながら、このフィルム拾ったんですけど、返せないかなあ。どうすれば、この落とし主がわかるでしょう。と尋ねる。

店員が、小さく叫ぶ。

これ! ちょっと待ってください。と言って、ルーペを出して写真を拡大して見る。

すると、バスに乗る子どもたちを写している写真に、小さなプレートが半分映り込んでいた。

会科見学
村小学校4年

これだ! 社会科見学。村の前に1文字か!?

店員も面白くなってきたのか、調べます! と言って奥に引っ込んだ。

Scene 8. 岡山のおむすび屋さん

長崎で青年に写真を5枚も撮ってもらった松葉杖の奥さんとご主人が経営する、おむすびやさん。

ご主人と奥さんが、テーブルに座っているお客さんと喋っている。

奥さんが「で、そのお兄ちゃんが、ホンット面白くってなあ」と笑顔で写真をお客に渡す。

それを見ているお客さんは、古川ノブさん。

隣はさちこさん。その隣にはみなみちゃん。家族で食事にきたのだ。

みなみちゃんはご飯粒をほっぺたにつけながら、おにぎりを頬張っている。

ご主人:「結婚するんじゃろ?」

さちこさん:(照れながら)「あ、はい。。。」

みなみ:「するよ! みんな幸せになるけぇね。もうこの人、うちのお父さんやけ!」

ご主人:「うんうん。みんなに幸あれ。幸あれー!!! あっはっは!」

Scene 9. 諫早湾の海上デモ隊 

シーカヤックが画面右端からすーっと入ってくる。

その後からカヌーやカヤック船などのぼりを立てて進む。

声がフェードイン。

諫早、干拓事業の中止を求めて、海の上でその先頭に立つのは、店主の白崎さんだった。

自宅を出る前、ベビーラップにくるまれて見送ったラナイちゃんは、お父さんがんばれ! と言ったのかどうかわからないが、

「あうおああん、ああんあえい。」

節子さんはそれを解読し、「お父ちゃん、がんばれ!」そう言う目に涙が光る。

その後ろには猫のカワちゃんがドーンと座っている。

Scene 10. 奄美大島の海岸

奄美大島の3人組は、海で遊んでいる。

カズキ:「クイズ! イワちゃんのむちゃくそスゲェところを3つ答えよ!」

イワちゃん:「それって別にクイズじゃねーし!」

ジロー:「いっちゅも、いっちゅも、やたちいところーっ!」

イワちゃん:「ちがう。イケメンなところ!」

ジロー:「じゅるっとにゃ!」

3つ以上出てくる答えを、全て正解にするカズキ。

みんな、笑いが止まらない。

Scene 11. 奄美大島、前田のおばあの家

黒電話を受け取るおばあ(順子さんのお母さん)。

「なんと! 富美子か? あああ嬉しいなぁ。

そうか、順子に会えたか。で、いつ帰ってくる? 

顔だけ見して。。。うん。いいよ。仕事落ち着いたらさ。

あ、でも(私も)長くないから早めに来てーな。

・・・コラあ。富美子。泣くな。泣くなよ。

お前はちっとも悪くない。悪くないんだよー。」

Scene 12.  高知のフルーツ専門店

梨の販売をしている店舗に、青年に幸水を渡してくれた姉妹が笑顔で立っている。

このお店の看板娘だ。

「今年の梨は、みずみずしゅうてうまいぜよ〜。試食で腹いっぱい食いよってもえいきね。この梨は、食べると幸せになって、誰ぞにプレゼントすると、その人も幸せになる、福が詰まった梨ちや〜。」

それを聞いてお客さんがひとり、

「これちょうだい。」

と言って、5個入りの梨を購入。

この姉妹とは接点はないが、福があるなら買わねばなるまい。

そう感じて手が伸びた人こそ、天谷さんだった。

Scene 13.  高知の病院

腰の緊急手術をして、入院し、横になっているお母さんと、その隣で何かとあたふた気をつかっている息子。

そこにお見舞いに行く、天谷さん。

そんな義理は無いのだが、これは何かのご縁ですから、と言って梨を持ってくる。幸水を一緒に食べましょうと。

お母さんは動けないので、息子さんが不器用ながらも梨をむいてくれる。

小さく切ったものをお母さんの口に入れてあげながら、3人でゆっくり味わいながら食べる。

息子:「それはそうと、あのバイクの人、無事でしょうかね。」

天谷さん:「あー、あの人はきっと大丈夫でしょ。そんな気がします。」

3人一緒に梨をほおばりながら笑顔。

Scene 14.  カメラ屋さんにて

カメラ屋さんの奥から、店員が「分りました!」と言って、飛び出してくる。

「これ、長崎の小学校ですね。大村小学校です。僕の親戚に先生がいたんで、調べてもらったら、すぐわかりましたわ。電話番号もらえましたので、ぜひ連絡してみて下さい。住所もあるんで、これ送ってあげましょうよ!」

店員さんのご厚意に甘え、お店の電話をお借りして、長崎の小学校へ電話をする青年。

社会科見学の担当の先生が恐縮して電話に出てくださり「送っていただけるとありがたいです」と言ってくださった。

青年は快く返事をし、その足で郵便局に行き、写真を送った。

Scene 15.  広島のお好み焼き屋「もんちゃん」

お昼。お好み焼き屋の店主夫婦が、鬼瓦に向かって何かを唱えている。

その言葉がところどころ聞こえてくる。

店主:「・・・皆様の健康を、お守りつかぁさい。今日も元気でがんばっとります。お見守りつかぁさいまし。」

パンパン。拍手を打って店主は仕込み作業に入る。

女将が言う。

女将:「この前のお兄さんのあのコロッケ、ぶちうまかったね。今度休みとって、山口に行ってみる?」

店主:「そうやな。久しぶりに、旅でもするかのう。」

女将:「ええのぉ! 2日ぐらい休んでも、みんな許してくれるやろ。」

店主:「よっしゃ! あのコロッケを探しに行こうか!!」

Scene 16.  下宿から大学、そして部室へ

旅を終えて、1ヶ月後。

青年は朝起きて、顔を洗って歯磨きをするとすぐ、熊の着ぐるみに着替える。

下宿のポストを開けると、大きな白い封筒があった。それを急いでカバンの中に入れ、熊のまま学校へ向かう。

流石にお頭付きは暑いので、下だけだ。

先輩から1年間、熊さんの着ぐるみで過ごせ。と言うミッションをいただき、それを真面目に着こなしている青年は、大学のそばにあるスーパーでコッペパンと牛乳を買い、2号館にある、少し木陰になるベンチまで行き、封筒を開けた。

手紙には、長崎、大村小学校の先生からの丁寧な手書きのお礼状が入っていた。

最後にはこう書かれている。

そして、もう一つ、これは、子どもたちから鈴木さんへの歌のプレゼントです。

このたびは、子どもたちに「優しさ」「行動することの大切さ」を教えていただき、誠にありがとうございました。

子供たちが、鈴木さんの心に感動して、みんなが歌を歌おうと決めたことです。どうぞお聴きになってください。

青年はコッペパンと牛乳を一気に喉の奥に流し込んで、そのカセットテープを持って、部室へ急いだ。

授業中なので、誰もいない。

部室には人形劇の音響に使うカセットテーププレイヤーがある。早速、再生ボタンを押す。

「鈴木さん! 写真を届けてくれて、ありがとうございます! みんなの気持ちを歌に乗せて届けます! 聞いてください!」

歌が始まる。

三日月の目から涙がこぼれる。

歌声はそのままで、場面が変わる。

Scene 17.  香川の公民館。病院、そして改築風景

旅の2年後の春。

4月。

桜の季節。

公民館の遠景。

桜が舞い散る。

病院の一室の窓に、桜の花びらが貼りつく。 

部屋の中には小野村先生と娘さん。他、村人が数人。

娘さんがベッドの1番近くに座っている。

横になっている小野村先生は、口をパクパクさせて何か物言いたげ。

娘さんが先生の口に耳を当てると、か細い声でそれを伝える。

「・・・神社の壁を直して欲しい。青年にまた会えた時に、驚かせてやりたい。」

頷く娘さん。

小野村先生は右手をゆっくり上げて、指揮をとる姿勢になった。

3拍子だ。

数回振った後、その手はやがて、自らの胸の上に落ちた。

娘さんは次の瞬間、突っ伏してして泣く。

小野村先生、逝く。

Scene 18.  村の神社にて

(回想シーン)青年が外に出て、海風で錆びついたトタン作りの神殿を触って、ボロボロと落ちるサビに対し、

「ごめん。これは今日綺麗にならへんわ。。。ごめん。」

と謝っている姿。

小野村先生が亡くなったすぐ後。

若者たちが汗を流し、壁のトタンをはがし、無垢の木材を使い、張り替える作業。

見上げる娘さんの目は空。

「お父さん、これでいい?」

桜が散っている。

大村小学校の合唱は続く。

Scene 19.  徳島の平等寺

平等寺のお水の管理人であるおじさんが、小さな布の垂れ幕を持っている。

うまい、冷たい、柔らかい。

弘法の霊水の素晴らしさを一言で表したその言葉を、来る人に言うのではなく、見せている。

このおじいさんは自分の命の続く限り、これをやってみようと決心した。

水を飲んでいる人々の笑顔。おじいさんの笑顔。

おじいさん:「これ、読んでみい。」

お遍路仲間たち:「うまい! 冷たい! 柔らかい! キャハ! いいね!」

満足そうなおじいさん。これは言霊と言うてやなあ・・・。

フェードアウト。

Scene 20.  奄美大島の銭湯

銭湯の浴槽のお湯が抜かれている。

たっくんのお父さんが、大汗をかいてトンネルに柵を作っている。

これは取り外しもできるので、掃除も容易だ。

子どもがここで遊ぶことのないようにと、看板に、「子どもおひとり様はお断りします」と掲げられた。

たっくんも一生懸命手伝っている。

こうやって、手間をかければ事故は防げると少年は学ぶ。

Scene 21.  奄美大島の集会所

あの日、青年とお風呂に入っていた漁師風のおじさん。

救急の先生の真似をして、人工呼吸と心臓マッサージの蘇生術を勉強中。

友達と一緒に学ぶ。

たっくんが死にそうな時、何もできなかった自分を恥じて、講習会を企画した。

Scene 22.  高知の高校生の家

母と妹が光樹の帰りを待っている。

玄関には毛布に包まれたあるものが置いてある。

ギターを担いだ光樹が口笛を吹きながら帰ってくる。

母と妹は土手に上がって待つ。

「なんや二人とも、どいたが? ニコニコして。」

妹が待ちきれず、指をさした。

お母さん:「あんたが、いつも頑張ってくれちゅーき、あたいらからのお礼やき。受け取っとーせ。」

光樹:(毛布の大きさをみて)「ちっちゃ。自転車? やったら大きい方がえいにー。」

そう言って毛布をめくって唖然。

HONDA DAX。

青年とお揃いのバイクだった。

振り返る光樹、顔が嬉しいやら悲しいやら。

光樹:「た、高かったやろうに〜!!!!」

言葉にならない喜びに打ちひしがれる。

お母さん:「まず免許とって、これでおっさん探しに行ってちょうだいのぉ。」

おどけて言うお母さんの目には涙。光華も涙。光樹も涙。

「必ずみつけちゃるき。待っとき。」

そう言って、肩を震わす光樹。

Scene 23.  山口のコロッケ専門店

女子高生は卒業して、顔の暗さは吹き飛んでいる。

コロッケ専門店を立ち上げた。

そこに訪れるのは、仲良くなった担ぎ手の政(虎柄)。

若手の甚太(豹柄)。

さらに、この2人の取り巻きがこのコロッケ店を贔屓にしている様子。

ひとり10個ノルマで買うように指示。

無理さすなー! と言う菜穂店長の帽子には、可愛いお肉のエンブレム。

吹っ切れたみたいだ。

肉推しコロッケは、みんなに愛されている。

Scene 24.  大村小学校音楽室の録音風景

大村小学校のテープ。

エンディング曲が終わる前に、春木さんと、そのお友達の映像が入る。

録音した曲は、2人の小学校だった。

2人は手を繋いで、一生懸命歌っている。

歌い終わって、2人で顔を見合わせて、叫ぶ。

「鈴木さん! 愛を届けてくれて、ありがとう〜!!!」

※ちなみに、このテープは青年の実家に今も残っている。

Scene 25.  手芸洋品店から帰ってくる、みなみ

一瞬暗くなる画面。

さちこさんとノブさんが自宅で誰かの帰りを待っている。

ノースリーブの水色ワンピの少女が帰ってくる。

「ただいま〜!」

お父さんも一緒に待っているとは知らなかったから、持っているハギレと糸と針を後ろ手に隠すのがやっとな少女。

お母さんに「どこにいってたん?」と聞かれて思わず、涙が出てくるみなみ。

「お母ちゃん。ごめんね。うち、寂しくないからね。全然、寂しくないよ。全部、一人でできるからね。」

今日書いた手紙のことを考えると、どうしてだろう。涙が止まらない。

やさしく、つよく、我が子を抱きしめるさちこさん。

なんも言わんでもええよ。こっちこそごめんね。

みぃちゃんをひとりぼっちにさせてしもて。

ずっとずっと大好きよ。

みぃちゃん。死なんといてよ。ずっと一緒にいてよ。

みぃちゃんの背中に手を乗せるノブさん。

3人の背中を見せながらフェードアウト。

Scene 26.  いいだ人形劇フェスタ

2023年8月。

颯爽とバイクに乗っていた青年は、既に中年の域に達している。

なのに、相変わらず、旅の空だ。

あらゆる場所で、ひとり人形芝居と銘打って公演を重ねている。

バイクは HONDA F6C に変えて、ヘルメットも新しくなっているが、オレンジ色。

人形が入ったとてつもなく大きなリュックを背負ってバイクを走らせている。

熊野神社にて。

赤鬼:「どおしてそんなに、長く生きてるかって? それはの、桃太郎の桃ちゃんが、お宝の中から打出の小槌を見つけたからじゃ。それはなんでも願いが叶うアイテムでなあ。」

桃ちゃんのセリフ。

桃太郎:「赤鬼よ、1000年生きよ! 1000年生きて、弱き人たちのため、小さき命のために、力一杯働け。力を出し尽くせ。それがお主の徳になろうぞ。頼んだぞ赤鬼ぃ!」

赤鬼:「いやあ〜、桃ちゃんにそう頼まれたら、断るわけにはいかんっしょー!」

赤鬼は、こうして桃太郎から1000年の命をもらい、真面目に働いた。

そしてあと約20年で、約束の1000年になる。

残りの年数を、しっかり勤めあげる所存の赤鬼。

という自己紹介だけで、お客様をわかせている青年(中年)。

ここは飯田市の人形劇フェスタ。

その時期と時を同じくして、請われて演台に立つ男がひとり。

Scene 27.  瀬戸内フェリーの周年記念パーティー

瀬戸内のフェリーの機関長として働く高羽涼太は、41歳。

ホテルの周年記念パーティーでの挨拶を任される。

とはいえ突然押し出された形で、戸惑いつつも前に出る。

社長が頷きながら、「出なさい」と笑顔で促す。

謙虚に、笑顔で前に出る。

関係者の皆様に対し、帽子を取り、挨拶する。

「この度、9月からの新しい企画に伴いまして、機関長という大任をいただきまして今、その責務の重圧に押しつぶされそうですが、マイクをいただきましたので、僭越ながら、皆さんにご挨拶をかねて、お伝えさせていただきます。

私は研修でもよく言っておりますが、私は、6歳の時、この瀬戸内の海の藻屑になるところを、ある方に命を救われました。

その時、そのある方が私に伝えてくれたことを、長い時間をかけて私なりに咀嚼いたしました。

命、この大切ないただきものを、粗末に扱ってはいけないということ。

そしてこの命に対して、誇りを持って生き抜くと、周りに宣言すること。

さらに、この命に見守られながら、どんな問題が起きても、誰のせいにもすることなく、ただ、目の前にいてくれる人の笑顔を見るために、今そこにある問題を全力で解決していくこと。

こうやって、偉そうなことを申し上げておりますが、すべて、あのお方のお言葉です。

見て見ぬふりをせず、どんなに辛くても、苦しくても、やると決めたら、やるんだと教えていただきました。

私にも経験がありますが、信念を持って行動すると、どこかに強く当たってしまいます。

そうなると、面白くない人が現れて、当然叩かれます。

出る杭は、必ず打たれるものです。

しかし、その杭は、打たれるとどんどん硬く、強くなっていきます。

打たれても、外側は痛いですが、心の中は案外耐え抜けます。

なぜなら、信じてくれている人がいるからです。

私の先輩に、いつも汗だくで真っ黒になって、油でべとべとになりながら、仕事をしていた人がいます。

その先輩に教えていただいたことを、最後に皆さんにシェアさせてください。

『嫌われてもいい! 

相手の未来を案じて、動け! 

相手の未来に起こりうる災いと、襲ってくる敵を封じ込めて守り抜け! 

誤解されても良い! 

信じてもらうようにするのではなく、まずは君が相手を信じなさい! 

間違った解釈で、責められることもあるだろう。

それでも、言い訳をすることなく、ただ責められなさい! 

それで相手がスッキリするのなら、それもよし! 

君は、ただ、己の信じる道を行け! 

孤独になる事は無い。

私が、君のことを信じている! 

私が、必ず君の横にいる!』

私はその時、人を信じることの本当の意味を知りました。

どんなことがあっても、そばを離れない覚悟でいることだということです。

もし、疎遠になったとしても、相手の幸せを祈り、繁栄を祈り続けることができれば、離れた人もいつか戻ってきて、さらなる力を貸してくれることになるでしょう。

案ずるより、前に出ましょう。

まずは動きましょう。

以上です。ありがとうございました。」

満場の拍手。

Scene 28.  いいだ人形劇フェスタ

赤鬼に寄ってくる子どもたちと、にこやかに会話をする青年(中年)。

赤鬼:「辛いことがあっても心配するな〜〜!

僕がそばにおるよ。

ほらほらみんな、ここにおいで〜! 

みんなで握手!

みんなで拍手!

みんなで笑おう!

みんなに、幸あれ〜!!!」

フェードアウト

「また会えたときに 2」 完

ダックス号と(ナンバーがニコイチ!)

ここから先は

0字
月額880 円の定期購読マガジンです☆

KAMI ing out マガジン

¥880 / 月 初月無料

「僕のアニキは神様とお話ができます」「サイン」の著者、アニキ(くまちゃん)が執筆。天性のおりられ体質を活用し、神様からのメッセージを届けま…

ご支援ありがとうございます。このnoteはサポートのお志で成り立っております。メッセージにお名前(ご本名とご住所)も入れていただけると、感謝とサチアレ念をダイレクトに飛ばさせていただきます。