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おりおりいっぴつ #060(八幡様が消えた日)
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地上の星の
ぬくもりは
人々が生む
ミラクル
夜景というものに異常なレベルの執着を見せる僕ですが、夜、ポツリとひとつ電気がついている街灯を見るだけでも、心が和みます。
幼い頃、母に抱っこされながら見た、漁師だった父が乗るイカ釣り漁船の集魚灯は、空から星が落ちてきたのではないかと思ったくらい眩くて感動したものです。
電気。そして、それを使って恒常的に明るく照らすフィラメントという発明がなければ、夜のイカ釣りは不可能だったはずです。
電気がなかった時代もあったことに思いを馳せてみると、
「いやあ、よくそれで生活できていたなぁ」
と、尊敬の念しか出てきません。
現代は全て、電気があればこそ、生活が成り立っています。
実は今日、僕は完全オフなんです。思い立って阿智村の昼神温泉にきております。
「三日月の輪舞曲」の次の物語である、ラジオドラマ「また会えたときに」の舞台となった場所です。
さて、突然ですがここでみなさまにニュースです。
なんと、
今朝、
八幡様が、
四日間の留守を宣言して完全に気配を消しました。
とても静かです。静かすぎて、ちょっと怖いくらいです。
八幡様がいることが当たり前すぎて、気づかなかったことが今噴出しています。当たり前すぎることが、急になくなると、人間どうなるのかというと、寂しいとか悲しいとか苦しいとかではなく「虚無感」に襲われることがわかりました。
はい。これは完全に、「虚しさ」です。
いままで当たり前に、自分が存在していて良いというひとつの通行手形(八幡様という大きな存在)があったわけですが、それが消えてしまったために、目的を見失ってしまった状態と言えば良いのでしょうか。
先ほど宿に着いて、お風呂に入り、リラックスし、もうすぐご飯だとワクワクしていたにもかかわらず、いつもの食事時の会話ができなくなるということに、なぜかガッカリしている自分がいるんですね。
ちなみに先日はこんな会話をしていました。
八幡様:「それは、うまいか? 食感が固そうだが・・・」
僕:「あ、これですか? 美味しいですよ。多分、このイカは一回焼いてあるんだと思います」
八幡様:「料理名は何と言う?」
僕:「料理名? ちょっと待ってください。お品書きは・・・あーこれか。
「旨鳥賊」
ムネトリゾクの味噌焼。だそうです」
八幡様:「うまいか」
僕:「はい。うまいっす!」
八幡様:「うまいか」
僕:「・・・そっか。八幡様は食べれませんものね。じゃあちゃんと食レポしますと、この歯ごたえもいいんですけど、味噌がイカに絡んで、しかも香ばしいもんだから、食欲が増進されますよ。あーご飯が欲しい!」
八幡様:「ムネトリゾクの漢字は、うまいかと読むのだ。が、そんなことはどうでもいいか」
僕:「イカだけにーーーっ!? いやいや、どうでもいいだなんて、八幡様らしくないじゃないですか。読み間違えたのは、わざとですよ。冗談ですから。僕だってこれぐらい、ちゃんと読めますよ!」
八幡様:「私も調子に乗りすぎたようだ」
僕:「いえいえ、八幡様は何も調子に乗ってませんよ」
八幡様:「そのお品書きの、漢字をもう一度よく見てみなさい」
僕:「はい、うまいか。ですよね?」
八幡様:「よーく観察してみなさい」
僕:「ん? ・・・あー! 真ん中の漢字が、烏じゃなくて、鳥になってる!」
◯ 烏賊
✕ 鳥賊
八幡様:「そうだ。お前がムネトリゾクと読むことはわかっておった。きっとそうやって私を笑わせようとするだろう、と思ったゆえ、最初に『うまいか?』と聞いたのだ」
僕:「ええっ? なんですかそれ。怖っ! 裏の、裏の、そのまた裏を読んでの会話術とか、やめてもらっていーーーかーーー?」
八幡様:「相変わらず、ぜんぜんうまくないな」
とまあ、今までは、ミッションデーが続く旅の宿で八幡様と他愛もない会話をしながらご飯を食べていたのですが、今日は静かに1人で黙々と食べることになる・・・という一抹の不安が、僕を襲ってきたわけです。
その途端、まるで星のように綺麗だなあと思っていた目の前の温泉街の夜景が、一瞬にして寂しい光に変わってしまいました。
当たり前にある電気は、人が生んで育ててきた奇跡のエネルギーです。それが重なり合って温もりを作ります。その温もりは、当たり前に目の前にいてくれる人と同じで、普段気づかないのです。どれほど自分にその心のあったかいところを与えてくれているか。
普段それに対して感謝することもしないのに、今初めて、当たり前にいてくれるその存在(八幡様)に対しての感謝でビビッとリンクしちゃいました。
電気をここまで到達させてくれる人たちに感謝するとともに、いつもたわいない会話で僕を楽しませてくれる八幡様に、心から感謝します。
まあ戻ってきたら戻ってきたで、うるさいんですけどね。
あなたに、今日も幸あれ。
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