ご相談 その37. 彼への気持ちが断ち切れません
今回は「風」さんからのご相談にお答えいたしますよ〜☆
風さん。僕アニ時代からずっと支えていただいたこと、感謝しかありません。
ありがとうございます!
また、行動を起こす前提で、ご質問をいただいていることが嬉しいです。
これからどう動けば良いのか、幸せな家庭を築けるかどうか、ですね?
かしこまりめっこ!(←昔、知り合いが言っていました)
では今から早速、おりられます!
結婚はどうやって?
僕:「八幡様。お教えください。風さんは、今お付き合いしている彼との結婚を諦めて、新しいパートナーを探して一歩踏み出すか、それとも、なんとかして・・・」
八幡様:「まず、結婚は」
僕:「はい、結婚は?」
八幡様:「どうやって決めるものか、おわかりでしょうか?」
僕:「どうやって決めるか、ですか?」
八幡様:「そうです。お二人の門出を、お二人で決めていく順番です」
僕:「そんなの、カンタンじゃないですか!」
八幡様:「ほう?」
僕:「・・・おおっとあぶない! ひっかかるところだった! これは難問に違いない。いろんなパターンがあるはずだ・・・」
八幡様:「いいえ。今回はひとつだけです」
僕:「あらっ! でもだって、どちらがプロポーズするかでシチュエーションが変わってくるじゃないですか!」
八幡様:「どちらがプロポーズしても、パターンはひとつです」
僕:「ふうむ・・・。では、シンプルに考えてみれば良いんですね」
八幡様:「はい。ただ、ひとつ条件を出します。文末に『!』マークをつけたうえで、シンプルにどうぞ」
僕:「ビックリマークをつけるんですね? なんでですか?」
八幡様:「?」
僕:「そっちのマークで反撃ですか。わかりました。とにかくやってみます」
感情に勢いを!
結婚の意思表示をスタートさせるのは、どちらからでもいい!
本気で惚れた相手なら、私はあなたと結婚したいんだと意思表示しまくる!
相手が怖がっているなら、なぜ怖いのかをリストアップしていく!
リストアップした不安要素を一つ一つ潰していく!
潰せない問題は、人に聞いてでも解決の糸口を探していく!
同時に、自分と結婚するとどんなメリットがあるかを提案する!
そのメリットに全てイエスと答えさせる!
選択肢は結婚しかないやん! にもっていく!
親の介護を補助してくれる施設を前もって探しておく!
自分たちの生活が一番大事であることを全力で伝える!
最後に、相手の幸せを一番に考えて結婚を促す!
僕:「ふうーっ、と、こんな感じではどうでしょう。。。」
八幡様:「どうしました? 自信がなさそうですね」
僕:「うーん、自信はないですね。。。なんだか、風さんの心に寄り添えていないような気がするんです」
八幡様:「どうしてそう思うのですか?」
僕:「なんでかな。あ、この『!』マークのせいかも?」
八幡様:「その通りです。」
僕:「やっぱり! じゃあ何でこれをつけなければならなかったのですか?」
八幡様:「感情の勢いを、あえてつけるためです」
僕:「感情の勢い? そんなものが必要なのですか?」
八幡様:「風さんには必要です。最初の突破口とでも言いましょうか。突き抜けるためのスピードが必要な時は、迷って時間をかけて、ゆっくりしていると、逃してしまうことがよくあります。いまだ! という機を自分で作るのです。それが、!マークです」
僕:「なるほど。ビックリするくらいの勢いをつけるためとは分かりましたが、僕が感じているこの違和感はどうすればいいのでしょう」
八幡様:「では、!マークを外し、旦那様にしたい男性に向けての風様になりきって、質問調に変更してみてください」
僕:「わかりました。風さんの代理で、質問調ですね。やってみます」
質問調のプロポーズ
「結婚って、プロポーズするのはどちらからでもいいと思わない?」
「もし本気だったら、私はあなたと結婚したいんだーって、言いまくってもいいんじゃないかなあ?」
「結婚の怖さってなんだろうね。何が一番怖いんだろ? リストアップしてみる?」
「あ、これって解決しない? ほら、これも。リストアップした不安要素、だんだん消えていくかも? どうする? 解決したい?」
「あー、新築の家、これは難しいかもねえ・・・。友達のあっちゃんに聞いてみよっかな。小さくてもいいし、いつか二人の家、欲しくない? 別にいらないかな」
「こんなこと言ってもダメかもだけど、私と一緒になると、楽になることがこんだけあるよ。って、楽にならなくってもいいかな? これだけじゃ足りない?」
「メリットっていうと、おおげさな感じだけど、一緒にできることって感じかな。お互いにできないことを助け合えたらいいね」
「私もね、あなたと一緒に暮らせたら嬉しいことがいっぱいあるんだ。そんなにいっぱいは望まないけど。きっと笑顔の数が増えると思う。そう思わない? 当たり前のことが、なんか微笑ましいというか。安心というかさ」
「うちの親は、私たちに迷惑かけたくないから、自分が入る施設も決めてるんだって。あの人たちらしいな。そっちの方がいいよね?」
「でも結局、私らが一番幸せじゃないとね。できる限り仕事をして、家計も助けて、一緒に頑張れたら嬉しいな。一緒に頑張れそう? 難しい?」
「私は、あなたが元気で、長生きしてくれたらそれだけで嬉しいんだ。いつもありがとうね。結婚の話、重かったかな? ごめんね。歳を取っても、私、あなたと一緒にいたいなって思ったら、こうなっちゃんだ〜」
僕:「こんな感じでどうでしょう!」
八幡様:「よくできました。少し強引なところはありますが、そのくらいまっすぐでもいいでしょう。それでは、これを全てひとつにまとめて、プロポーズの言葉を考えてください」
僕:「え? これをひとつに? 可能でしょうか?」
八幡様:「一番大事な言葉がこの中にありますよ。それを相手に、何度も伝えることができれば、結婚の不安もだんだん薄まっていきますし、あなたのことを本気で大切にしてくれるはずです」
僕:「えええっと。。。難しい・・・どれなんだろう、えっっと、読者の皆さんにクイズにしませんか?」
八幡様:「今回はクイズにしなくても大丈夫です。押し付けがましくなく、それでいて相手の心に直球で届き、可愛い演出もできる、最高の言葉をアニキが見つけてください」
僕:「ううーん・・・お相手の気持ちを考えすぎても出てこないし、考えて言わないと失礼だし、めちゃくちゃ難しいです!」
八幡様:「裏切られて怖いかたに対して、私は裏切らないですよ、と伝えている言葉はどれですか?」
僕:「そう言われると、ますますわからなくなってきます」
八幡様:「わかりました。では、男性の気持ちの動きがわかる短編小説を書いてみますので、そこで気づいていただきましょう」
僕:「短編小説? 今から?」
八幡様:「そうです。結婚を選択できない男の悲哀と葛藤を描いています。そこに戸惑う女性の心理と、行動の全てを書いてみます。」
僕:「最終的に結婚を選択する物語でしょうか?」
八幡様:「さあ、それはどうでしょう。それは風さんがどう動くか、で決まることですので、そこまではいうことができません。しかし、小説ですから自由な表現でお伝えすることができます。何かしらのヒントを掴んでいただければと思います」
僕:「わかりました。では、お願いします」
「小さな家と大きな車」
はちまん 作
「ああ。明日で50かあー」
と呟く男は、仕事に向かう車の中、大好きなシティポップの音楽を聴きながら窓の外を見た。
遠くの黒い雲の塊は、やがてこの車を雨に包んでしまうことだろう。
無理して購入したこの車の大きさは、立体駐車場に拒否されてしまうほどで、いつでもどこでも雨ざらしだ。
同じ会社で30年。
何をしても長続きしてしまう真面目さゆえに、他のことにチャレンジできない臆病な性格。
おそらく結婚をしたとしても、自分を中心に考えてしまうだろう。
今、彼女はいるが、幸せにしてやれる勇気が全く出てこないのだ。
今までに、
「結婚するか!」
と何度心の中で言ってみただろうか。しかし、その度に、重くなる心。
自分の不甲斐なさと、彼女の人生を邪魔するようなことにならないかという不安と、えも言われぬ後悔に似た気持ち。
自分は、彼女を幸せにすることができない。できるはずがない。
実際、お互いに問題を抱えている。この問題を解決するには、いろいろ捨てなくてはならない。しかし、捨てることはできない。
そこまでする必要があるのか。
今はまだ捨てることができない。周りから見れば、大したこだわりではないように思えるかもしれないが、男にとっては譲れないプライドだ。
彼女はそれを大切に思ってくれているし、結婚を強く望んでもこないので、そこに甘えている部分は大きい。
いずれ、行き着くところは夫婦になることかもしれないと思ったりはするのだが、一人で培ってきたこの生活のリズムを変えてしまうことが正直怖い。
誰かが自分のパーソナルスペースに入ってくることに、面倒くささを感じてしまうのは、自分の子どもじみたところだと分かってはいるのだが、それを直すことは難しい。
結局、彼女に甘えて生きているだけの、甲斐性なし。
問題全てが解決する方法は、ないだろうか。
そして、時間だけが過ぎていく。
この男のもやもやの中に、ひとつの光が差したのは、秋の気配が見え始めた季節。
早朝の3時。
新聞配達の車が動き出す頃だ。二度寝もできないくらい、目がバッチリ開いてしまった。長年の経験から、これは何かに導かれている流れだと思った。そうだ、
「富士山に会いたい!」
という念が、どこからともなく湧いてきた。富士山が自分を待っている、とすら思い始めてきた。
男は急いで服を着替え、外に出た。
こういう時は、それを何かのサインと捉え、動くようにしている彼は、自慢の大きな車を駆って薄暗い道をひた走った。
朝日がちょうど富士山の真上にかかった場所。こんな奇跡があるだろうか!と思えるほどのロケーションだ。
男は、駐車スペースに車を入れ、大地に降り立つ。息が白い。寒い。凛とした空気の中、逆光の富士山を眺め、圧倒されてたたずむ。
その横で、電話をしているのか? ボソボソとおしゃべりをしながら大きな一眼レフで、富士山を撮りまくっているカメラマンの男がいた。
大きなワンボックスカーのナンバーは「富士山」だ。かっこいい。
そして、カメラもなかなか良い機材を持っている。三脚もどっしりとした高そうなやつ。
ちらりちらりと、そのカメラマンを覗くと、話しているのは電話をしてるわけではなさそうだ。独り言だ。
カメラマン:「いいぞ。風こい。風こい。吹け。吹けよ。こい!」
隣に佇む自分には全く目もくれず、ただ富士山に吹く風を待っているカメラマンはやがて、重い機材を担いで、歩いて移動し始める。
その時、車から一人の女性が降りてきた。
女性:「あ、移動? 車使う?」
カメラマン:「いや、いい」
そう言っただけで、ガチャガチャと大きな音を立てながら、男は撮影ポイントを探しに行ってしまった。
女性は、軽く微笑んで、いつもこうなのよ。みたいな苦笑をして、また車に戻っていった。
太陽は富士山のてっぺんから右の方に動いている。自分も写真を撮っておこうと思い、3枚立て続けに撮った。そして、思い立って、彼女にその写真を送信した。
なんで一緒に連れて行かなかったのかと、後でなじられたとしても、この風景だけは送っておきたかった。すると、後ろから声をかけられた。
女性:「コーヒー、飲みます?」
男:「え? あ、、、はい。いただきます。」
あまりにも自然に話しかけられて、うまそうな香りが漂っていたので、遠慮をせずにいただくことにした。
女性:「うちの人、変でしょ?」
男:「あ、さっきのカメラの方。」
女性:「目の前にあれがあると、人が変わっちゃって。」
そう言って富士山を眩しそうに見た。男も一緒に富士山を眺めながら言った。
男:「それ、わかります。なんかね。富士山って、届かないんですよ。届きそうで届かないっていうのかな。つい、追い求めてしまうんです。で、独り占めしてはいけないものだし、みんなの富士山だから・・・」
そう言っていて、なんだか違和感を感じてきた男は、黙ってしまった。
女性:「みんなの富士山。。。うちの人は、俺の富士山って思ってるけどね」
笑う女性は、そんなカメラマンの彼のことを全肯定している雰囲気でいっぱいだ。
女性:「富士山が届かない山ってことは、よくわかるし、憧れちゃうもんね。でもうちの人は、自分のためにある山だって思っちゃってるから、毎日、朝の1時間はこうして写真を撮りに来てるの」
男:「いつも一緒に? ですか?」
女性:「いつもじゃないけどね。今日はなんだか、いい写真が撮れる予感がしたの」
そう言って笑う女性は立ち上がって、車に戻った。そしてベーグルを一枚、男に差し出した。
女性:「うちで焼いてるの。食べてみて」
本業はパン屋さんだったのだ。裏に貼ってあるシールには、パン屋「ふじの」とあり、電話番号。それだけだ。
男:「ホームページとか、LINEページのQRコードとか、シールで貼っておくといいですよ」
男の仕事柄、おせっかいだとは思ったが、いただくお礼に軽く宣伝の仕方を教えようとした。しかし女性は笑顔で首を振って、
女性:「うちの人が嫌いなのよ。LINE。苦手なのね。簡単すぎて、人の気持ちが分かりづらいって」
男:「あ、そうなんですか? 簡単すぎて苦手って。。。」
女性:「人の感情を伝えるには、声が一番なんですって。顔文字とか、スタンプとか、微妙な心の動きを伝えることが難しいって。確かにそうなんだけど、時代に乗り遅れてるよね」
男は、LINEより電話をかけることの方が面倒だし、声じゃなくても相手の気持ちはわかると思っていたので、新鮮な驚きだった。
女性:「だからうちは、電話番号。24時間。いつでも取れる電話になってるから、LINEよりも速いと思います」
そう言って、女性は笑った。
男:「そうか。LINE。より電話か。」
彼女はもうすぐ起きるころだろうか。富士山の写真をLINEで送ろうかと思っていたけど、直接見せに行ってもいいのかもしれない。LINEより、電話。電話より直接会う。
人間関係のつながりは、会えてこそ広がりを見せていく。相手への情が増えていく。薄れていく環境を作るには、LINEでの連絡のみで、ある日突然既読しなくなればいいだけのこと。簡単だ。
繋がっていたい人たちとは、直接声を聞いてつながり合うことが、自分には足りないのではないか。と思い始めた。
女性:「どうぞ。もしよかったら、召し上がってください。一応焼き立てなので」
男がぼんやりと彼女のことを思い返していたことを、目の前の女性に見破られていないかが気になったが、それを飲み込んで、ベーグルの入った袋を破った。
おもむろにかじる。ううむ。もちもちした食感と、いい感じの焦げ具合が香ばしい。
男:「うまい」
ベーグルは正直そんなに好きではなかったが、素直にこれは美味かった。中に入っているナッツみたいな食感はなんだろう。
女性:「アーモンド。わかった?」
男は驚いた。心が読めるのか?
それとも、自分の表情を見て察したのか。いずれにしてもこの女性の観察眼は鋭い。
男:「アーモンドなんですね。かなりうまいです」
女性は安心したような顔をして、富士山に向き直った。そして、声を上げた。
女性:「雲、出てきた!」
さっきは見えなかった雲が、右の方から頂上を目掛けて蠢いている。遠くからも声が聞こえる
カメラマン:「上がれ上がれーー!!! いけー!!!」
そういうことか。彼は雲を待っていたのだ。
女性:「これで安心。あと30分で仕事に戻れるわ」
男は、富士にかかる雲を見ながら、夫婦であろう二人の関係を感じながら、自分の進むべき道が見えた気がしていた。
自由奔放に見えるカメラマンは、パートナーの女性を一緒に連れてきて、ちゃんと感動の共有をしようとしている。
女性も、イヤイヤではなく、カメラマンが喜ぶならと、早朝から付き合って、ここまでついてくる。二人のサバサバした関係が羨ましく、自分の悩みなどもしかして小さいのかもしれないと思い始めた。
ベーグルを食べ終わって、コーヒーも底をついた。男は、礼を言って立ち上がった。女性も立ち上がり、
女性:「もし、これ。食べてくれる人がいれば。」
そう言って、袋に入ったベーグルを男に手渡した。その渡し方がとても自然で嫌味がなかったので、安易に受け取ってしまった。
すると、その表情を見た女性は、
女性:「いるんでしょ? 可愛い人」
男は思い浮かべた。そういえば彼女に、ベーグルのフレンチトーストを作ってもらったことがある。外側はパリッとしていて、内側はもちもち。そこにバニラアイスを乗せたデザートを一緒に食べたとき、自分が言ったセリフまで思い出した。
孝之:「ああ〜! 美味い。これ、毎日でも食いたい!!」
その時の淳美の顔も覚えている。顔を赤らめて言った、
淳美:「いいよ〜。毎日でも作ってあげる」
その幸せそうなはにかんだ笑顔を、孝之は何度でも見たいと思ったのだ。
なんで忘れていたんだろう。
ガッツポーズをしながら戻ってくるカメラマン。軽く拍手をして笑顔を送る女性。
同時に、帰る支度を始める慌ただしさを感じて孝之は女性にお礼を告げ、カメラマンに軽く会釈をし、車に戻ろうとしたその時。
女性が背中から声をかけてきた。
「LINEより、電話ね〜!」
孝之は、振り返って頷き、早速スマホを取り出して淳美に電話をかけた。呼び出し音が鳴っている間に、この大きな車を売ってしまうことを決めた。
そして、小さな家でもいい。二人でゆっくり、お互いを成長させ合いながら、お互いのやりたいことを尊重し合える家族をつくりたい。そう思ったら、固執していたものが見えてきた。
自分がこだわっていたから、進まなかっただけだ。
相手を自分に合わそうとか、都合のいいように動かそうとか、身勝手すぎた。
あと、車がデカすぎて車庫がないからとか、昔女性に裏切られて怖いからとか、幸せにできるかどうかわからないとか。そんなの彼女には関係ないことだ。
彼女自身が幸せになりたければ、結婚した後でも自分なりに動くだろうし、自分の以前の女性関係などは1ミリも彼女とは関係ない。
この車も。もっと安い維持費で生活すればいいだけだ。
今まで、長い間、つかず離れず付き合ってきたけれど、全て自分が止めていたんだ。
淳美:「・・・はい。」
孝之:「あ、おはよう。寝てたか?」
淳美:「うん。寝てた。。。どうしたの? 珍しい。電話で」
孝之:「うん。ただ、声が聞きたくなった。元気か?」
淳美:「元気だよ〜。今日は肌寒いね。あれ? 外にいるの? 鳥の鳴き声聞こえるね」
孝之:「富士山。富士山見えるところにきてる。」
淳美:「え! なんでまた? 富士山って!」
孝之:「おいしいベーグルをもらったんだ。今日持っていくね。それと、この車、売ろうと思ってさ」
淳美:「え? 大丈夫? どっか悪いの? 富士山とベーグルと車売るのって、なんか繋がりがあるの? あんなに大好きな車なのに、いいの?」
孝之:「明日、一緒に富士山行かないか。お前と一緒に見にきたい。」
淳美:「ほんと? 一緒にいっていいの?」
孝之:「いやか?」
淳美:「あなたの誕生日に一緒に行けるなんて、嬉しいじゃん」
孝之:「ああ、そうだった。誕生日だったな。うん」
淳美:「うん。待ってるね」
孝之:「おう」
エンジンをかける音が聞こえ、孝之が振り向くと、カメラマンが運転しながら、駐車場を出るところだった。女性は両手でばいばいと手を振りながら、最後にグッドマークと笑顔。孝之は大きく頷き、右手を上げた。
運転席に座って、古くなった室内を眺めた。この大きな車は、孝之のパートナーだった。この車を信用し、この車を愛し、この車とともに、人生を歩んできたのだ。
それで満足していたのだ。
大事な存在を無視することは、何もかっこよくないし、相手の気持ちをわかっていながら行動に移さないこともずるい。
それよりも、カメラマンのように、自分が惚れた存在に対して真っ直ぐで、そしてベーグルの女性のように奔放な男を愛し支えて自立して生きるその姿。よほどかっこいいし、美しい。
どうせ自分なんかだめだ。
という孝之の根底にある思いを払拭させるには、ひとつしかない。俺があいつを富士山に連れていくことだ。
電話より、会って行動に移す。
偉そうに見せず、自分の精一杯でいい。大きな車は必要ない。小さな家でいい。多くを望むことなく、日々の暮らしを笑顔にすればいい。
孝之は、富士山を左に見ながら山道をのぼる。全開にした窓から流れ込む空気の爽やかさよ。針葉樹林の香りよ。待っていておくれ。
また明日。ここに来るから。あいつと一緒に。
終わり
一緒に
僕:「わかりました」
八幡様:「わかりましたね?」
僕:「一緒に、という言葉です」
八幡様:「そうです。軽い一緒にではだめですよ。しっかり未来の想像をさせてあげる表現を使ってください」
僕:「未来予想図を描いて、それを一緒にってことですよね?」
八幡様:「そうです。不安神経症も、一緒に乗り越えられますし、動悸やめまいなども、薬で抑えられますし、誰からも愛されないなんてことは起こりえませんし、二人でできることが増えていけば、壁はどんどん氷解していきます」
僕:「やはり。ということは、風さんの行動は一つですね。一緒に、というフレーズを多用する!」
八幡様:「どんどん使ってください。一緒に、という言葉は、相手を安心させるのと同時に、一緒にいることが素敵なことなんだという刷り込みもできます。しかし、約束は守ってくださいね。一緒にやろうとしていたことを反故にしてはいけません。突然のキャンセルはだめです」
僕:「突然キャンセルは相手も傷付きますし、何より自分を信じられなくなっていきますもんね」
八幡様:「その通りです。最後にもう一つお伝えします。結婚は契約です。これも約束なのです。
自分にできることはこれです。と明確にリストアップしてください。そして、自分がこれから習得したいこともリストアップです。
さらに、自分が苦手とすることも出してください。そして、相手との相性を占います」
僕:「占う? どこでですか?」
八幡様:「好きな場所で。自分で占います。つまり、お金を稼ぐことができるのかどうか。それが難しければ、どんな方法で稼ぐことができるのかを考えるということです。
そして、現実的に、収入は2人合わせてどのくらいあるかも計算しましょう。
足りなければ、自治体で助けてもらいながら生活も可能。もしくは実家を活用することもありです。将来のお金の問題を解決することも、大切です」
僕:「たしかに。大事ですが、そのあたりを考えると不安になるかもしれませんね?」
八幡様:「不安になる必要はありません。仕事などは、探せばいくらでもあります。今住んでいるところで探さず、引っ越してでもやりたい仕事を探してもいい訳です。
親のことは、プロにまかせつつ、自分の人生を成長させることを重要視してください。
あなたの未来予想図は、どんな図になるのでしょう。それを、楽しみながら描いてみてください」
僕:「それはいいですね。押し付けがましいものではなく、可愛く愛嬌いっぱいに描いてみてください」
八幡様:「ここでまた、ご報告をお待ちしております」
おわりに
ということで、風さま。いかがでしたか?
ずっとお付き合いしてきた仲って、結婚に発展させるには、勢いも必要なのかもしれません。その時、大事なことは!マーク。
暑くなるようなパッションで、なぜ彼が必要なのかを出し尽くしましょう。そして、順番を考えて、一つ一つ、行動に移していきましょう。
それでだめなら、次に進みましょう。
未来を不安に思いながら、過去の難しさに囚われていたら、うまくいきません。
人生をかけるなら、貪欲に行ってもいいと思いますよ。
僕も八幡様も、応援しています。
貴重なご質問をありがとうございました!
ではまた次回、お愛しましょう♡
ここから先は
KAMI ing out マガジン
「僕のアニキは神様とお話ができます」「サイン」の著者、アニキ(くまちゃん)が執筆。天性のおりられ体質を活用し、神様からのメッセージを届けま…
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