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おりおりいっぴつ #056(八幡様の好きな風景)

この一瞬がたまらない。

ああ 気持ちいい。


どこまでも広がる畑と、それを包み込む空と、太陽の光。

見ているだけでも、みずみずしく、爽やかで、愛しい。

皆さんは、何気ない風景を見て「あー気持ちが良い!」と思える機会はどれくらいあるのでしょうか?

八幡様は、

「人がどの一瞬を感じて、それを気持ちよいものにするかは、その人の心の充実に比例します」

と、おっしゃいますが・・・。

今回僕は、そんな八幡様に質問してみました。

「僕と一緒に全国をめぐっている八幡様は、どこか気に入った場所はありますか?」

つまり、一体どんな場所を、気持ちいいと感じるのか、を尋ねたわけです。

そういえば八幡様は、どんな風光明媚な場所に行っても無感動なんです。だから僕もなんだかつまらないんですよね。一緒に感動できないというか、共有できないというか。僕は案外、どこでも気持ちよくなれるので。

八幡様:「つまらないと思ったことはありませんよ。どこに行っても大変心豊かに過ごせております」

僕:「なーんか怪しい・・・。いつも感嘆している感じは全くないですが」

八幡様:「いえいえ。心静かに、堪能しております」

僕:「じゃあ、今まで行ったことのある場所で、ここはよかったな〜って場所はありますか?」

八幡様:「ありますよ」

僕:「おお! それはどこですか?」

八幡様:「鹿児島の指宿(いぶすき)から、宮崎の西都原(さいとばる)、熊本の阿蘇を巡り、湯布院への旅。これは面白かった。砂風呂でのぼせ、西都原で祈りを捧げ、草千里で馬に乗り、湯布院の小川で鴨と遊び、水の属性のアニキが火の国を鎮めていく旅が、一番頼もしかったですね」

僕:「ああ、九州のミッションのことですね」

八幡様:「一緒にいることで、最高の思い出になる瞬間は、ハプニングがあればこそ。博多で新幹線に乗り遅れそうになったことや、どうしても乗りたかった“湯布院の杜2号”でのお弁当は、予約していなかったため食べられず、ホテルでは部屋のお風呂に携帯を落として焦りまくり、湯船にしたたかにスネを打ち悶絶、そして勢いで買ったライオンのネックレスは人前に出すのが恥ずかしかったのか、持ち腐れになってしまいましたね。あとはそれから・・・」

僕:「はい僕ノックアウトーーー! 恥ずかしい個人情報なので、もうそれくらいにしていただけますか?」

八幡様:「という感じで、アニキと旅をすると、楽しいのです。やらかしてくれるから、だけではなく、良い風景がみられる機会が多くなるからです」

僕:「そうなんですか? でも僕は雨男ですけど」

八幡様:「だからますます面白いのです。雨だからこそ、ハプニングがさらに増えます。そしてアニキは不器用です。同時に別々のことをしようとすると何かが抜け落ちます。抜け落ちることがわかっているのにも関わらず、同時に複数のことをやろうとしてしまうが故に、落とし穴に真っ逆さま」

僕:「・・・」

八幡様:「しかし、落ちたと思ったのに、穴の中で楽しいことを見つけてしまい、またそれに夢中になっていく無邪気さも、見ていて飽きない理由です。土地の神とすぐに仲良くなる奥深い技を持ちながら、それを今までひけらかすことなく生きてきて、ようやく今、それを人に伝える準備をしているアニキを見ていると、それだけで胸が熱くなります。これまでよく頑張ってきたと」

僕:「ちょっとごめんなさい。やっぱこんな話、誰も聞きたがらないと思います。あと、人前で僕を褒めるのはもうやめてください。自分で書いていて頭が変になりそうです。僕は、自分のことはあまり書きたくないんです。恥ずかしいんです。八幡様もおわかりでしょう?」

八幡様:「そこも面白いのですよ。旅に出て、アニキはいろんな人に話しかけます。話しかけられた人はみな、喜んでいることはわかっていますか?」

僕:「いえ、それは逆です。僕が喜んでいるんです。でも、相手も喜んでくれているんですか? それならよかったです」

八幡様:「知らない人に話しかけることは恥ずかしくないのですか?」

僕:「あ、それだけは全く恥ずかしくないです。むしろ、助けてもらえて嬉しいし、感謝しかありません。旅の有益な情報は、人からダイレクトにゲットするようにしていますので、観光案内とか、雑誌とかも読みません(読めません)から、それだけが頼りですしね」

八幡様:「自分が無知であることは恥ずかしくないのですか?」

僕:「そんなことは、自分がよく知っていますし、今更それを恥じても始まりません。僕は、正真正銘のおバカですので、知らないことの方がずば抜けて多いです。あ・・・だからか」

八幡様:「そうです。話しかけられた相手が喜ぶのは、自分が情報を渡せば、目の前の中年小太りオヤジの役に立つ、と思えるからです。その情報をもらってアニキは大喜びして、まず相手の言う通りにしてみるでしょう。そこに行ってみるでしょう。食べてみるでしょう。登ってみるでしょう。それがまた嬉しいのです。自分を全肯定されたことになりますし、地元の良さをおバカな旅人に教えることができたし、何よりも笑顔でありがとうを何度も言われるんですから、一瞬で気持ちよくなるし、嬉しいに決まっています」

僕:「納得しました。なるほどですねえ。バカで良かったなあ僕、まじで」

八幡様:「そうです。私が風光明媚なところに行ったとしても、普段から見慣れているせいで感情をあらわにはできませんが、アニキが風景を見て絶句し、涙する姿を見ているだけで、それが面白いと思っています。しかし、面白いからといって笑いはしません。笑えば、アニキに失礼かと思うからです。ですから余計にポーカーフェイスになっているのだと思います」

僕:「これまた納得しました。でもね、八幡様。いいんですよ、笑っても。僕は笑ってもらえる方が嬉しいですから。笑いを押し殺しているなんて、健康に悪いです。どうぞ遠慮なく、思いっきり笑ってやってください。僕は、なんの取り柄もないけれど、人の気持ちを柔らかくすることだけは得意かもしれません。八幡様も疲れることもあるでしょうから、僕で和んでください。って、今やっと理解しましたのかも。僕の存在って、八幡様の癒しだったのでしょうか」

八幡様:「いいえ、アニキは、世界の癒しです」

僕:「せ、世界!? だから、もーーーっ! そういうわけわからんちんなビッグマウスはやめてください!!!」

八幡様:「アニキに、今日も幸あれ」

僕:「ぎょえーい!!! 顔が暑いーーーっ!!!」

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