ベスボの失恋バナシ‼︎ 〜part1〜

シャッス、ベスボです!

落研人生を振り返ってnoteに残しつつ、恋愛も振り返ってみようと思ったので同時並行でやっていこうと思います。最近ラノベではあるけど初めて活字に触れて面白いなって思えたので小説風に書いていこうと思います。
※出てくるキャラクターの名前は偽名です。

それではみんなハンカチの準備を!

いくぜ!


「キーンコーンカーンコーン」学校のチャイムは1種類しかないが、得られる感情は2種類ある。これから授業が始まるという憂鬱感と授業終了の解放感。今回は後者の方だ。それもとてつもないほどの後者。
なぜならば大嫌いだった歴史の授業が終わったのだ。大昔の過去を勉強して何になる?もう終わったことだろ?同じ社会でも公民だけ勉強した方がためになるのでは?理由をあげるとキリがないほどだった。とにかく次の授業は大好きな理科。移動教室に加えて座席は教室の時とは異なり、理科の先生が勝手に作った理科班である。いつもと違う雰囲気で実験机を4人で囲むというのも友達と会話ができて楽しいし、なにより過去とは違い現代の、未来を勉強している気がしてたまらなかった。つまり、僕は中学2年生の時から将来理系に進むことは決まっていたのだ。だが、これらの他に理科が好きな特別な理由がある。エミリアちゃんと席が近いということだ。身長は160㎝ないくらいで、1つ結びで縛った髪の毛をいつもゆさゆさを揺らすほどによく笑う。真面目でもなく不真面目でもない。身なりにうといのか、若干眉毛が濃いのもまた良い。気付いたら彼女を見てしまう。そう。僕は恋をしていた。彼女とは特別良い関係を築けている訳ではなく、合宿コンクールの実行委員で同じになっただけだ。だが、なかなか練習に付き合ってくれない不良男子の扱いを僕が上手いことサポートしてあげたことから”良い人”という枠組みは獲得しているくらいである。
「なにぼけーっとしてんだよ。勇人一緒に理科室までいこうぜ
「ああ、うん」
理科室へ友達とくだらない会話をしながら向かって席についた。
エミリアちゃんと班員のヒカリの会話が聞こえる。
「エミリア、昨日のテレビみた?」
「みたみた。あんなドッキリされたら私泣いちゃうよ」
「わかるわかる。今まで見たドッキリの中で1番迫力あったよね」
「んね。でもちょっぴりされてみたいかも」
「どっちなんだよ〜」

ガヤガヤした中でも彼女の声だけはハッキリと聞こえる。
「エミリアってもしかしてああいう男の人がタイプだったり?」
「んーどうだろう?タイプっていうわけではないけど」
「じゃあどういう人がタイプなの?」

「はーい。授業始めますよ〜。号令さん?」

新川先生だ。全くなんていうタイミングで来てくれたんだ。特大袋とじが勝手に開かれようとしていたのに。授業の内容は面白いのに、人としてはつまらないで定評のある新川先生。今日も絶好調のようだ。
「起立、気をつけ、礼」
「お願いします」
「はーいお願いしまーす。今日は実験をするからプリント配るから前の人手伝ってちょうだい」
クラスのみんながざわつきだしたせいで、さっきの会話が聞こえなくなった。それもそうだろう。実験は60分間席について先生が書いた黒板をただノートに書き写すだけという派遣のバイト並みの単純作業ではなく、授業中に友達と会話が合法的にできるという神授業である。クラスメイトは歓喜に満ち溢れていた。実験器具を取りにみんな席を立つ。
「腹減ったな〜今日の給食なんだ?」
「今日はわかめご飯らしいぞ!」
「まじ?最高じゃん」
案の定、どさくさに紛れて雑談をしている男子がいる。実際僕も席から1番近い三角フラスコを取って班員に貢献をしつつ颯爽と席につき、ずっとエミリアを合法的に眺めていた。これが実験でなかったらただの変態であるが、実験中はそれが許される犯罪フィーバータイムなのだ。
「キーンコーンカーンコーン」
気付いたら授業が終わった。チャイムと同時に給食を食べられる喜びを隠せない生徒が多い中、このチャイムの音を永遠に聞きたくなかったのはきっと僕だけだろう。

「はーいそれでは結果をまとめたプリントを提出出来た班から帰っていいわよ」

新川先生は毎回このセリフを言うが、居残りさせられた班は未だ存在しないほど内容が優しく、時間配分も完璧なので全員即退出していった。これも好かれている要因かもしれない。
給食当番は準備をするために他の生徒より早く教室を出た。幸いなことに配膳室は理科室の隣にあるのにわざわざ2階登って教室にある割烹着を取り、また降るという無駄な往復をしなければならない。不幸中の幸いという言葉があるのなら、これは幸い中の不幸と言えるのでは?いや、言えないか。僕は給食当番であるがこんなことはしたくないため、事前に理科室に行く段階で割烹着も持ってきていた。この時から身長は高い方だったため、大量のスープがあったドラム缶のようなものを担当していた。教室に着いたが案の定まだ他の料理は来ていない。少し待っていると次々に給食当番が料理を運んできた。僕のクラスでは当番の以外の人がおぼんを持って1列に並び、1つの長机に置かれた料理をベルトコンベアー方式でおぼんに乗せていく。しかし、なぜだが今日は人がいない。そんなことより、廊下がやけにうるさい。廊下の騒がしさに釣られて、どんどん野次馬が増えていき、とうとう給食当番の人間もいなくなった。クラスでは僕1人だけ。勘弁してくれよ。一体何が起こってるんだ?教室のドアから首だけを出して確認してみると他クラスの人含め70人近く集まっていた。ただ事ではないことは確かだと思った時にはもう教室から体は全て出ていた。よくみると70人が円になっていて、その中心に男女が1人ずついるではないか。そしてその女の子は…
目を疑った。なぜならばそこには顔を真っ赤にしたエミリアちゃんが立っていたからだ。男は背中を向けていてよく分からない。
「いけー!シンジ告っちまえ!」
「エミリアー!照れんなよ〜」
????????
シンジなのか?!
シンジとは特別仲がいいというわけでもなく、悪いというわけでもない。集団で遊ぶときに一緒に遊ぶことはよくあったが2人で遊ぼうなんて仲ではないが、一瞬にして大嫌いに変わった。

“好きな子が公開告白される”

この流れはまずい。男からしたらビビって告白しないなんて選択肢は絶対に選べない。なんなら両思いの確定演出すぎて告白するに決まっている。
「こーくはく!こーくはく!こーくはく!」
やめろ。やめてくれ。野次馬が火をガソリンを入れるかのように加速させていく。
お願いだやめてくれ。付き合わないでくれ。もう、見たくない。
僕は1人教室に戻り、まだ何も準備できていない給食を見て悲しみと怒りを覚えた。昔から学校のいわゆる1軍にはいたが、ルールを破ったり、人に迷惑をかけるようなことだけは絶対にしなかった。ポリシーにしていた。仕方ない。1人で配膳まで全てやろう。今思うと当番全員に怒ってもよかったのかも知れないが、大仕事をすることで考えたくなかったのだろうか、怒りが沈み仕事に取り掛かるまでに時間はかからなかった。それからは早かった。おぼんを一気に5つ取り。机に並べ、5種類の料理をおぼんに乗せていく。それを机から遠い席から順に運んでいく。また5つ。そしてまた5つ。
「うわ〜いいものみたね」
「上手くいってほしいね〜」
「カップル成立するところみれて幸せ」
へーー付き合ったんだ。予想は出来すぎていたので驚きはしなかった。だがふと黒板の日付をみて驚いた。6月4日。あれ?俺今日誕生日だった?それは驚いた。誕生日とは親から自分の好きなものを買ってもらえるだけでなく、会う友達みんなからおめでとうと言われて、一日中優しくしてくれる幸せな日だからである。真逆。1番されて嫌なことをされた。誕生日に。悔しかった。泣きたかった。泣けなかった。教室だから。
「あ!金丸1人でやってたの?ごめん!」
遅れてきた女子が謝ってきた。
「ああ。うん。」
「急いで手伝うね!あれ?6月4日。今日金丸誕生日じゃない?」
「そうだね。」
「おめでとう!なんかあげよっか!笑」
こんなに腹が立つおめでとうは初めてだった。
僕は流れる手つきでおぼんを5つ取り、5種類の料理を最速で盛り付けながら真顔でこう言った。
「なら100万円くれ」
「え…」
彼女は固まっていた。そりゃそうだ。普段陽気で有名が僕がボケでもなんでもなく、それはもうひどい怒りを覚えた真顔で言ったのだから。
彼女を無視し仕事を終えて、割烹着を脱いだ。割烹着は着る時より2倍は重くなっていた。
「それではみなさん手を合わせていただきます」
「いただきます」
給食委員の号令でみんな給食を食べ出した。
わかめご飯か。ひと口食べた瞬間に思い出した。好きな給食じゃん。夢中になって食べた。彼氏持ちになったエミリアちゃんを1回も見ることなく。
その後僕はわかめご飯をめちゃくちゃおかわりした。

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