嗚ゝ、李明博君! 大韓民国、経済再興戦略の挫折と苦悩 2

 韓国という国は、まこと大統領に厳しい国である。
 え?

 「でも自業自得なのがほとんどだろ」

 だって?
 そんなー。ひどい。

 でも李明博政権にしても、朴槿恵政権にしてもなかなか支持率が下がると回復しないのが韓国という国の特徴で、李明博は米国産牛肉の輸入再開、朴槿恵はセウォル号事件の後、どちらも支持率に低下に苦労していたのは確かなんだよ。

 けれどボクらのアキヒロくんはそこであきらめなかった(エラい)。
 某掲示板のコリンアンウォッチャーたちから「これもうダメじゃないか」と思われていた2008年の通貨危機を克服すると、2009年のリーマンショックも耐え抜くことに成功するよ。

 ん? その頃の日本はどうだったか、って?

 あー・・・麻生政権がリーマンショックの対応がんばってたけど、年末の選挙でハトヤ

 うん。忘れようか。

 さあ、こうして韓国経済の再興に力を入れだした李明博大統領なんだけれど、韓国経済にはそもそも構造的な問題というべきものがいくつかある。

 ひとつは今も続いているように若年層の失業率が高いこと。
 次は日本とも共通しているけれど鉱物や石油などの資源に乏しいこと。
 そして何より韓国経済の特徴でもあるのが財閥系企業とその他の企業との格差だ。

 韓国を代表する企業といえばサムスン電子とヒュンダイ自動車だけれど、現在この2社だけで、韓国のGDPの20%以上を売り上げているというんだから大したものだね。

 サムスン電子と現代自の売上高合計 韓国GDPの20%│韓国経済│韓国ドラマ・韓流ドラマ 韓国芸能ならワウコリア http://www.wowkorea.jp/news/korea/2018/0905/10219826.html 

 しかし当然これだけ財閥が国の中で影響力を持っていると、当然不満も出てくる。
 そのため韓国では選挙のたびに財閥の扱いが争点になってきたんだけれど、実際のところ財閥抜きで韓国という国が立ち行かないのも確かだからね。
 結局は大掛かりな改革はなかなか行えない。

 さて、こういう状況で李明博大統領は考えた。
 まず、重要なのは失業率と景気対策だ。
 李明博氏の経歴を読んでいる人はおそらく知っていると思うんだけれど、彼はもともと建設会社の会長をしていた人間でね。つまりインフラ整備が最も得意というわけだ。
 そこで最初に思いついたのがまず「大掛かりな公共事業を行う」ことだった。
 実は彼は大統領選挙の際にも「朝鮮半島大運河構想」というのを公約に掲げいたんだよ。これは韓国の南部と北部の河川を繋ごうという壮大な計画だったんだけれど、さすがに実現性に乏しいということで取りやめになった。
 その代わりにはじまったのが「4大河川再生事業」だ。
 こちらは韓国を流れる大きな4つの河川を整備することによって環境を改善するとともに、地域発展、雇用の創出など、複数の効果をもたらそうとする一大プロジェクトだった。

 <総合>「4大河川再生事業」9月着工へ
 http://www.toyo-keizai.co.jp/news/general/2009/post_918.php

 李明博大統領の「雇用と景気対策のためのインフラ整備」という発想のもとで行われたものはこの他にもある。
 例えば2010年から開催された「全羅南道(チョルラナムド)F1韓国グランプリ」に代表されるような国際イベントの招致がそれだね。
 韓国はとくに民主化後、自国を「先進国」としてアピールするために、公共事業も兼ねて国際的なイベントの誘致などを積極的に行っていたんだけれど、2010年以降を見ても。

 2011大邱(テグ)世界陸上選手権大会。
 2012年麗水(ヨス)国際博覧会(万博)。
 2014仁川(インチョン)アジア大会と、大規模な国際イベントが続いている。

 中でもとくに韓国政府が力を入れていたのが、当時まだ韓国で開催されていなかった冬季五輪の誘致だった。
 これが去年2018年に行われた平昌五輪のことなんだけれど、当時どうしてもこれを誘致したかった韓国は、当時脱税で有罪の判決を受けていたサムスングループの前会長で、IOC(国際オリンピック委員会)の委員でもある李健熙(イ・ゴンヒ)氏の恩赦を行うなどもしている。
 これを受けて李健熙氏は様々な工作を行っていたという指摘もあるけれど、それだけ韓国が五輪をやりたがっていたのは間違いない、というところだろうね。

 サムスン、五輪誘致で不正疑惑 会長の特赦直後から - SANSPO.COM https://www.sanspo.com/geino/news/20180411/tro18041105000003-n1.html 

 李大統領のもとで行われた、または継続された事業には、この五輪誘致のように単純に経済効果だけを狙ったものではなく、国威発揚を意図したものもかなり多く見られる。
 代表例が「宇宙開発事業」だ。

 この時期、韓国の「ナロ号」というロケットが毎年のように打ち上げられていたのを覚えている人もいるんじゃないかな。
 もともとこの計画は2000年からはじまっていたものだったんだけれど、その成功までにはずい分と苦労があった。
 実はこのナロ号、知ってる人は知っているんだけど、ほとんどロシアの技術で造られていたんだ。
 一応韓国とロシアの共同事業ということになっているけれど、ロケットの一段目。つまり打ち上げの際に使用するエンジンなどは完全にロシアが設計している。
 だから当時ネットでは「ロシアがほとんど作ってるじゃねーか」と揶揄されたりしていたんだけど、そこまでして韓国が宇宙を目指したかったのにはわけがある。ひとつは北朝鮮がすでにロケット技術の開発をしていたことなんだけれど、それ以上に彼らが「宇宙強国」というスローガンを掲げていたことが大きい。

 羅老宇宙センターが完工、「宇宙強国」実現の足場に│韓国IT・科学│韓国ドラマ・韓流ドラマ 韓国芸能ならワウコリア http://www.wowkorea.jp/news/korea/2009/0611/10058507.html 

 さて、細かい説明はともかくとして、ここまでの話を聞いて何か思うことはないかな?

 ・大規模な公共事業
 ・国際的な大イベントの誘致
 ・宇宙開発

 どうだい。どれを見てもとても夢がある話じゃないか。
 ちょうど行動経済成長時代の日本みたいにね。
 そして実は李明博大統領を評価する上でこれは重要なキーワードになる。
 というのも、彼ともっとも似ていて、そして彼がおそらく模倣していたであろう人物は、日本の田中角栄首相ではないかといわれていたからなんだ。

 【噴水台】李明博と田中角栄、似ている点も多いが似ないでほしいことも | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/730/151730.html

 つまり李明博大統領の政策は。

 「高度経済成長時代の日本を韓国で!」

 だと思うと非常にわかりやすくなる。
 ようするにとてもビジネスマン的であり、同時に土建屋でもあるわけだね。
 では、そんな彼の外交や他の経済問題に対する手腕はどんなものだったのか。
 次に公共事業以外の部分を見ていこう。

 まず、財閥と企業との格差を埋めることを目標として「同伴成長」というスローガンを掲げた。

 大企業と中小企業の同伴成長、李大統領が指示
 http://www.wowkorea.jp/news/korea/2010/0726/10073028.html

 財閥だけでなく、中小企業もともに成長する社会を目指そう、というわけだね。
 続いて外交では、大統領本人が直接他国に自国の製品などを売る「トップセールス」が注目された。
 中でも当時彼の最大の成果とされたのがUAEからの原発受注に成功したことだろうね。

 当時、UAEの原発をめぐっては日米、フランスなど複数の国で受注競争が行われていたんだけれど、これらの国に比べて韓国はまだ原発輸出に参入して間もなく、これまでにほとんど実績がないため出遅れたと見られていた。
 ところがそれを逆転させたわけだから、これには国内外か賞賛する声が相次いだ。

 例えば日本貿易振興機構(ジェトロ)は2010年に「韓国の原発受注に学べ―中韓企業躍進への対応―」というレポートを掲載し、その中で李大統領の手腕を高く評価している。

 「李明博(イ・ミョンバク)大統領が積極的に動いたことも評価されている。フランスのサルコジ大統領も、UAEと原子力協力協定を締結した08年1月と、アブダビにフランス軍基地を開設した09年5月に2年続けてUAEを訪問し、軍事協力なども提案しつつ、原発の売り込みを図っていた。互いにトップセールスを行う中、韓国は原子力に加えて再生可能エネルギー、情報通信技術、造船など幅広い分野での産業協力を提示。軍事面でもフランスの1人勝ちを許さず、09年11月には金泰栄(キム・テヨン)国防部長官を2度UAEに派遣し、軍事交流協力協定を締結している。

 こうした国家レベルでの取り組みが競争力のある価格や提案内容を補強し、総合力で受注に結び付いたといえよう。トップセールスは当然で、むしろ「その先」が問われているほど、商戦は激しい。工事が成功するかどうかは今後明らかになることだが、受注活動だけをとっても日本が学ぶべき点は極めて多い。」

https://www.jetro.go.jp/biznews/2010/04/4bc67076d2730.html

 この他にも李大統領は当時新たな資源国として期待されていたボリビアのリチウム抽出実験への参加や、鉱山の開発など次々と大きな取引を決めていくなど、次々に大きな取引を成功させていく。
 資源外交ではこの他にイラクのクルド人自治区での大規模な油田開発の権利も獲得したりと、非常に好調だった。

石油公社、三星物産などクルドで油田開発権獲得 | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/07/96007.html
 

 このように、まさにこの時期韓国は経済の明るいニュースに溢れていたといっていい。
 え?

 「ちなみにその頃の日本は?」

 あー・・・うん。民主党政権の・・・忘れよう。

 と、ともかく、どうだろう。李明博大統領という人物はなかなか優秀だと思わないかい?
 
 ああ、でもくれぐれも「韓国 UAE 原発」とか「4大河川再生事業」でググってはいけないよ。
 なんでって、最初に結末を知ってしまったらつまらないじゃないか。
 ネタバレというのはできるだけ避けた方がいいんだよこの場合。
 
 次回はそうだね。もう少し李明博大統領と彼の残したもの、目指したものについて話していこうか。

 
 それではまた。

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