シン・ウルトラマンはほぼ幕末の日本だよね、というお話

 ときは21世紀。
 日本では禍威獣なる巨大生物が出現し、人々の生活を脅かしていた。

 そんなとき人々の前に謎の銀色の巨人があらわれる。
 
 「ついに外星人の登場か」

 と世間も騒がしくなる中、なんと銀色の巨人「ウルトラマン」に続き、次々と異なる星の外星人たちが姿をあらわし、政府に交渉を求めてきたのであった。

 圧倒的な科学技術を持つ彼らに日本政府は

 「かくなる上は不平等条約の調印もやむを得ず」

 と判断するが

 「宇宙人何するものぞ。地球を宇宙人などの好きにしてなるものか。やつらはこの星を自分たちのものにするのが目的に違いない。今こそ尊地球、攘外星人だ」

 とにわかに世論がわき起こり、弱腰政府退陣せよとの声が高まり、かくして日本は政府派と攘夷派との分かれ、宇宙人との条約調印をめぐり長期の内乱に突入するのであった。

 あれ、これどこの銀魂だっけ?

 それはともかくシン・ウルトラマンって、こう見ると結構幕末ものっぽいんですよね。

 ザラブにしてもメフィラスにしても、地球人に自分たちの優位性をまず見せつけてから条約の調印を迫ってくるあたり、かなり当時の西洋列強っぽいです。

 そうするとウルトラマンってどんな感じになるのかといいますと。

 「いち早く地球に潜入して実際に地球人として生活してみたところ、地球人の未来に可能性を見出して、できるだけ外交でも地球人の自主性を尊重してあげたいと思うようになった宇宙人。いうなら幕末に日本に来て日本が好きになっちゃった外国人みたいな感じ」

 かと思います。

 この構図。つまり

 ・外星人 = 文明国
 ・地球人 = 文明国にとってはまだ未開の国

 としますと、ウルトラマンというのはシーボルト博士みたいなものなのかも知れません。
 
 しかし、こういう解釈をすると「あの事件はどうなるんだろう」となる話がウルトラマン以降の物語でも結構あります。

 例えば帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」なんかは、こうした地球と外星人との関係を前提にすると

 ・人間の持つ差別意識や、宇宙人という未知の存在への恐怖感から凶行を行った恐ろしい事件

 ではなく

 ・未開の地で現地調査をしていた科学者が、現地の部族住民とトラブルになった末に殺害された

 という事例になってしまう可能性が高く、そもそも地球とメイツ星との間には交流もないので「メイツ星人が勝手に地球に来て何かの調査をしていた」ことになるため、メイツ星としても地球に直接抗議し難いだろうなと、なんか妙に現実的な話になるなと思ったりします(メビウスではメイツ星人が賠償求めてましたが、実現は結構難しそう)。

 また、ウルトラセブンに登場するノンマルトも

 ・地球の本来の所有者だったのはノンマルトかも知れない。彼らを海底においやった人類もまた征服者である可能性がある

 という部分はあまり重要ではなく

 ・地球で現地の政府と自分たちがその土地の先住者だと訴えてるゲリラ組織との間で紛争が起きてるらしい

 くらいで宇宙的には処理されているのかも知れません。
 反対にウルトラマンとバルタン星人のケースは一番問題になる可能性が高く

 ・地球に移住しようとしたバルタン星人の代表と地球人(とウルトラマン)との交渉が決裂して、20億以上のバルタン星人が虐殺された

 とかなり、これは地球も光の国も宇宙中から批判されそうではあります。

 もっとも、ウルトラマンは実際にはバルタン星人を虐殺したりはせず、敗れた彼らは宇宙船で逃げていっただけ、というのが真相という話もありますが、それにしても地球人とバルタン星人との交渉にウルトラマンが介入したとなれば結構揉めるでしょう。

 今回、なぜバルタン星人がシン・ウルトラマンに登場しなかったかを考えると、どうもこうして部分での扱いの問題があったように思います。

 シン・ウルトラマンの世界線の解釈だと、こういう風に比較的扱いやすい物語と、そうでないものとの差が激しいんですよね。

 また怪獣も外星人に作られた生物兵器だとメフィラスが明言したことで、そもそも地球に古代からいた怪獣たちは何だったんだ、という新たな疑問と、怪獣と宇宙人がセットでないと出現し難い設定も生まれてしまいました。

 もしかすると先ほどのセブンに出てきたノンマルトが怪獣を操っていたように、当時の人類(どっちが侵略者かでノンマルトと揉めてる)にも怪獣を操る能力があり、人類とノンマルトとの間で生物兵器(怪獣)を使った戦争が起きたか、あるいは当時の人類と他の星との間で戦争が起きて、大量の怪獣を送り込まれたことがあったのかも知れません。
 しかし、その後になんらかの理由で古代人類の文明は崩壊し、コントロールを失った怪獣たちも眠りについていたのではないか、とか想像することはできます。

 こうした古代の怪獣たちは「旧式」のため、メフィラスが送り込んできたと思しきネロンガやガボラに比べればだいぶ戦闘力が劣るようですし、やはりあくまで古い時代の遺産なのでしょう。

 こういう設定ですからウルトラマンでもジェロニモやレッドキングといった強力な怪獣たちが出現するのは難しかったのだろうと思います。
 おそらく出るとしても帰ってきたウルトラマンのブラックキングのように最初からウルトラマンを抹殺するための兵器、という扱いになる可能性が高いでしょう。

 こうしてみるとシン・ウルトラマンは初代ウルトラマンよりも、宇宙人が怪獣を連れて地球侵略に来ることが多いセブンの方に近いのかも知れません。

 シン・ウルトラマンの後に今後シン・ウルトラセブンやシン・帰ってきたウルトラマンが続くのかはまだわかりませんが、基本的には今回の「ウルトラマンという異星人と地球人のはざまにいる存在が主人公」というスタイルは続けていって欲しいと思います。先ほどの幕末の話ではないですが、これも結構日本だからこそできる部分というのはあると思いますので。では。

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