嗚ゝ、李明博君! 大韓民国、経済再興戦略の挫折と苦悩 3
李明博政権のもとで韓国という国は今まさに大きく躍動しようとしていた。
長年の宿敵である日本を超える日もそう遠くはない。そう、韓国の人々を信じていたに違いない。
いや、だから・・・検索しちゃダメだってば。「韓国 UAE 原発」とか。
今回は李明博政権の中でもいまだに政策として評価されていそうなところを話すんだから。
こほん。
さて。2009年から2011年にかけて日本では韓国の韓国の音楽グループが次々と来日して話題になったのは覚えているかな。
なにせ当時はあのNHKが「ニュースウォッチ9」でトップニュースとして『少女時代』の有明コロシアムで行われたイベントに2万2000人の観客が集まったと報道していたくらいだからね。
まあさすがにこれには「ほとんど宣伝じゃないか」と批判が多かったんだけれど。
円高、民主代表選押しのける NHKニューストップ「少女時代」のなぜ
http://www.j-cast.com/2010/08/27074472.html?p=all
当時はこういう「韓流推し」がずい分ネットでは批判されていた覚えがある。そしてそれがいわゆるネットでの「マスコミ不信」を増長させた一因ではあったんだけれど、実際に当時の「韓流」・・・より正確にいえば「韓国コンテンツ」がどのように売り込まれていたのかを分析していくと面白いものが見えてくる。
というのも当時この「韓流」で、実際に儲けていたのは韓国ではなく日本側の方だったんじゃないかといえる側面も大きいんだ。
当時韓国のプロダクションと日本の音楽会社との利益配分は大体「8:2」くらいで行われていて、その中から実際に韓国のアーティストに渡った金額は収益の数%にも満たなかったという話もある。
本国薄利“韓流ブーム”に疑問 日本依存…5年後には消える? (2/3ページ)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120512/mcb1205120501003-n2.htm
まあ、別に今更「韓流ブームの実態はなんだったのか」を問題にする意味もないんだけれど、それよりも考えないといけないのは「マスコミも所詮は商売」ということだろうね。
自分たちに利益が入るのであればそれを積極的に推すのはむしろ企業としては自然なことだし、彼らが「中立公正非営利」だなんて考える方がよっぽどどうかしている。
そのため、当時「韓流」をニュースやワイドショーが大きく扱っていたのは別に不思議なことじゃない。
けれど、これだけ不公正な利益配分であるにも関わらず、なぜ韓国側は日本にあれだけ熱心に韓国のコンテンツを売ろうとしていたのか。
実はここに今回のポイントがあるんだ。
ひとつはまず、韓国の音楽需要の問題がある。
あまり日本人は意識しないことだけれど、世界で見ると日本人は非常によくCDを買ったり、音楽を購入している方なんだ。
そのため音楽市場の世界規模は世界で二番目。
一位のアメリカとほぼ拮抗していた時期さえある。
世界の音楽市場規模 国別ランキング TOP20(2012年)【国際レコード産業連盟
http://10rank.blog.fc2.com/blog-entry-205.html
一方で韓国は日本に比べると、非常に市場規模が小さい。
比較の仕方にもよるけれど、2012年には20倍ほどの差がついていた。
K-POPが日本進出する理由 日本の音楽市場は韓国の30倍│NEWSポストセブン https://www.news-postseven.com/archives/20110116_10400.html
もっとも最近の韓国の音楽市場規模はこの比べればほぼ2倍程度に伸びているし、日本も一時期よりは音楽が売れなくなっているから、6倍程度にまで差がなくなっているんだけれどどちらにしても。
「韓国の音楽業界は国内だけではなかなかやっていけない」
という問題がある。
そのため、韓国の音楽アーティストは育成時代から教育全般に力を入れているし、アイドルの育成スクールも数多く存在している。
これが次の「韓流を日本や世界に売り込みたい」もうひとつの理由に繋がる。
と、いうわけで、ここからがいよいよ今回の本題になる。まあ、長い前置きだったね。
君たちはたぶん、韓流をただの文化。あるいはLINEは韓国製ゲームを含めた、韓国コンテンツを「ただの娯楽」だと見ているんじゃないかな。
これはまあでもそうだろうね。本来娯楽に政治性を交える必要なんてないからね。だからみんな好きなものを好きなように、楽しむのが正解だ。
でも覚えておいて欲しいのは。
「韓国人にとって韓流はただの遊びじゃねぇんだ!」
「これはビジネスなんだ! 何より『政策』なんだ!」
ということだね。
前回の話の中で、韓国は財閥企業が強く、若者の雇用が少ない、という話をしたことは覚えているかな?
そしてここからが李明博政権の政策の続きになる。
当時、韓流コンテンツの「輸出」を後押ししていたのは韓国の音楽業界と同時に韓国政府でもあった。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が2011年に出したレポート「韓国のコンテンツ振興策海外市場における直接効果・間接効果の分析」では、このあたりついて、コンテンツ振興院のウェブサイトからの引用という形で、政府による韓国大衆音楽海外進出プロジェクト支援事業の内容を紹介しているんだけれど、それによると海外市場での成功が期待できると判断された現地プロジェクトにはアーティストおよびスタッフの航空料金、滞在費、会場借上費、舞台運営費や、海外販売を目的とする大衆音楽のレコード、プロモーションビデオの制作などを対象に最大で一億ウォンまでの支援(事業費の50%まで)が行われていたという。
https://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000622/korea_contents_promotion.pdf
韓国の音楽が積極的に海外に展開できたのは、こうした政策レベルでの強い後押しがあったことは間違いないだろう。
実際、最近は日本でも、一部の若い女の子たちの間では韓国ブームが続いているという話もある。
でも、それはある意味で当然で。
「だって韓国は国ぐるみで力を入れてコンテンツの輸出をやってきたんだから、そのくらいは売れないとそもそも意味がない」
日韓関係に左右されず…女子高生が夢中になる韓国の「ヒト」と「モノ」とは?(慎武宏) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/shinmukoeng/20181203-00106375/
そして、さらに重要なのは。
「こうしたコンテンツ戦略を本格的に展開したのは、そう、我らが李明博大統領その人なのだ!」
という部分だ。
繰り返し強調しておこう。
「韓国のコンテンツ戦略が成功しているというのなら、それは李明博大統領の成果である!」
え? しつこい?
まあ、いいじゃないか。今回あんまり彼の出番ないし。
しかし、これには問題もあってね。
確かに韓国のコンテンツは海外でよく売れるようになったし、韓国の紙面でも韓流関係のドラマや音楽は「海外で人気」、「売り上げが大幅に増加」という記事がたくさんある。
けれど、そもそもさっきいったように。
「韓国のコンテンツ産業の輸出は単に韓国の音楽なりドラマなりを海外で売れば成功というわけではない」
という点からすると、どうなんだろうという部分だ。
李明博政権が目指していたのは、ごく簡単にいえば「韓国という国そのものをブランド化して売り込む」ということにあった。
そのために「国際ブランド委員会」という組織を大統領の肝いりで発足させたし、さっきの記事にある「韓国大衆音楽海外進出プロジェクト支援事業」のような韓流コンテンツへの支援も積極的に行ったりもしている。
大統領直属の「国家ブランド委員会」が発足 : Korea.net : The official website of the Republic of Korea http://japanese.korea.net/NewsFocus/Culture/view?articleId=76440
国家ブランド委員長「韓流3.0で高品質文化の価値を知らせる」 | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/846/159846.html
このコンテンツ産業を中心としたブランド戦略の目的はまとめると次のようになる。
まず、第一段階として韓国の音楽やドラマが海外で売れれば、その人気が出るのに連れて韓国を訪れる観光客も増え、韓国文化を勉強する人も増える。
そうなるとますますコンテンツ産業の需要は高まり、ここに雇用や投資が生まれ韓国経済が潤う。
そして韓国を知る人が増えれば国際的な認知度も高まり、それが韓国の地位を向上させることにもなるし、韓国製品や伝統文化が注目されて売れるようになる。
と、まさにこう見るといいこと尽くしなんだけれど。
「で、実際にそこまで上手くいったの?」
となるとそれがよくわからない。
確かに韓国のコンテンツはよく売れている。
韓国の音楽グループの育成学校が人気なのも、ある意味では雇用に繋がっているわけだし。
けれど、例えば韓国のコンテンツ輸出で長く主力を支えてきたゲーム産業では中国の拡大に押されつつあるし、タイやベトナムといった比較的に韓流人気の高い地域でさえ「韓国のものはいい」というブランドイメージができているわけでは必ずしもない。
韓経:40億ドル突破した韓国のゲーム輸出…韓国1位のネクソン売却されたらどうなる | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/446/249446.html
韓国ゲーム産業の屈辱?市場は世界4位も売り上げは圏外=韓国ネットからは「自業自得」の声
https://www.recordchina.co.jp/b672338-s0-c30-d0127.html
韓経:ガラガラのバンコク「韓流モール」…タイ各界リーダー94%「韓流、10年も続かない」 | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/187/247187.html
ベトナム、韓流熱風にも韓国製の消費は“微風”…SNSの積極的なPRを | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/957/239957.html
まあ、確かに観光客や留学生は増えているみたいだけれどね。
しかし全体への波及効果、韓国の経済、雇用にまでどこまで恩恵があるのか、となるとこれは結論の出しようがないんだ。
そもそも芸能人の活動で、どこまで国そのものの人気や評価が上がるかとなるとこれは未知数だし、雇用といってもあいまいだからね。
ちなみにこうしてコンテンツ産業に力を入れてきた理由から韓国は「国家ブランド力」というランキングを非常に一時期注視していたんだけれど、最近はどうもあまり騒がなくなってしまった。一応この数年で順位はだいぶ上げたんだけれど。
国家ブランド順位、ドイツが1位…韓国は10位圏外に | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/590/235590.html
だからか財閥に近いとされる中央日報からもこうしたボヤきが出てくる。
韓経:【社説】また出すという韓国政府のサービス業活性化対策、中国くらいはやってみよう | Joongang Ilbo | 中央日報 https://japanese.joins.com/article/246/248246.html
日本も「クールジャパン」というのを掲げているけれど、それがどこまで効果があるのかというと、よくわからないのとまあどっこいどっこいという印象だね。
ともあれ、今回は李明博大統領の遺産としてはおそらくもっとも現在に至るまで影響しているであろう「韓流コンテンツの輸出と、国家ブランド戦略」について話した。
その評価はそれぞれに任せるとして、次回はいよいよ大詰め。 ここで李明博大統領が窮地に追いやられることになる。
さあ、我らのアキヒロ君に何が起こるのか。
次回にこうご期待。
ではまた。
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