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メガバンク銀行員ぐだぐだ日記を読んで

ふだんの生活の中で、自分にはあまり関係がなくて、でもなんだか気になることがあります。

それは、銀行。
まだ明るい午後3時に窓口をシャーっと閉めたあと、銀行は何をしているんだろう。ドラマの世界では、一円が合うまで全員でお金を探す、なんてシーンがあったけれど、本当にそうなのかな。

夫にすすめられて「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記ーーこのたびの件、深くお詫び申しあげます」を読みました。

著者の目黒冬弥めぐろとうやさんは、現役の銀行員です。
バブルの終わりのころに大手都市銀行に入行され、地方都市や首都圏の支店で法人営業の担当を経て、現在は窓口事務の管理者としてメガバンクM銀行にお勤めされています。

そう。M銀行は、2002年にF銀行とN銀行、D銀行の経営統合により誕生した、あの銀行です。

世間を騒がせた不祥事の際、目黒さんは多くの行員とともに最前線で対応や処理にあたったそうです。ニュースでは知ることのない銀行のあれこれを「語らずにいられない」とおっしゃる目黒さん。そんなことを言われたら、聞かずにはいられません。

なお、目黒さんは現役の行員であるため、支店名や登場人物はすべて仮名です。しかしながら、目黒さんのこれまでの経歴をたどりながら、銀行業界の実態を知ることができました。


読み終わって思ったのは「銀行は、良くも悪くも、人間くさい場所だなあ」ということです。

わたしにとって、銀行は事務的できっちりとした、お堅いイメージです。でも、それだけじゃなくて。

マイホームを建てたいお客さんの住宅ローンの審査をなんとか通したい目黒さんと「返済は無理だろう」と突っぱねる上司。たしかに回収できない人に貸すことはできません。
しかしながら目黒さんの頑張りがあって無事に審査が通り、お客さんから「借りたお金はしっかり働いて必ずお返しします」と感謝され、仕事の醍醐味を知ったとありました。

すべてはお客さんのために。

そうかと思えば、転勤の多い銀行業界。出世レースの火花がバチバチと音を立てていました。出世のために頑張る人たちも、もちろんいるのです。

目黒さんの同僚に、10億円の融資が取れそうだという案件が舞い込んできました。目黒さんたちは、本部に決裁を通すため団結して稟議に取り組みましたが、支店長から「いくらなんでも貸しすぎだろう」とストップがかかり、結局立ち消えに。ええー。支店の売上を伸ばせ伸ばせって言ったのはあなたでしょ。外部のわたしが思いきりつっこみます。

人は何のために働くのでしょう。
お客様のため? 成績のため? 出世のため? ライバルを引きずり落とすため? 上司に気に入られるため? 自分の権威をひけらかすため?
仕える上司によって変わってゆく、自らの立ち位置と出世街道。悲喜こもごもの人間模様には、驚きと切なさがあります。

また、経営統合の裏で繰り広げられる各銀行のマウントの取り合い。物の呼び方ひとつにしてもそれぞれ違い「統一用語集」なる冊子が配られたそうです。

それぞれの銀行での呼称をひとつひとつ統一していった。頒布品は「ノベルティー」、支店長の専用車は「支店長車」になった。統一用語を間違わないよう、朝礼では読み合わせ確認が行なわれた。

メガバンク銀行員ぐだぐだ日記より

奇妙で滑稽。この一言に尽きます。

でも、けして他人事ではないのです。どの業界においても、自分たちが常識や正しいとしていることは、外から見れば案外そうでもない。みんないたってマジメで真剣で、だからこそ妙におもしろい。

四世紀半という銀行員生活のなかで、20数人の支店長、10数人の副支店長に仕えたという目黒さん。銀行のため、お客様のため、そしてご自身のために働くその姿は、けしてぐだぐだではありませんでした。


仕事柄、銀行の営業担当の方や、支店長や支店長代理、課長など「長」の付く方とも関わりがあります。この本を読んでからというもの、

〇〇さんは、急にA支店に異動されたよなあ
□□さんは、今はグループ会社なんですって
支店長の△△さんから退職されると連絡があったよ

血が通い、心があり、喜怒哀楽がある。銀行業界のあれこれを知ってしまった今、なんとも言えない感情がふーっと湧いて消えるのです。

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