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価格理論 (消費者/生産者/均衡理論)

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ミクロ経済学の主要分野の1つである価格理論に関する記事のまとめ。消費者や企業の行動、そして両者が直面する市場メカニズムの特徴に関する原理・原則を学ぶ。
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2024年1月の記事一覧

均衡理論(1):消費者と生産者の集計

前回までは、個別の消費者や生産者の最適化行動を取り扱ってきた。今回は、消費者や生産者が複数存在する市場経済において、市場全体の需要関数や供給関数が、個別の需要関数や供給関数の総和として表現されるために満たすべき条件を明らかにし、均衡分析の準備を行う。連載はこちら。 生産者の集計$${J}$$社の生産者が存在する生産セクターを考える。第$${j}$$番目の生産者は$${Y_j}$$で表され、各$${Y_j}$$に対し供給関数、利潤関数が定義できる。この生産セクター全体の生産集

均衡理論(2):部分均衡分析

前回、集計により求めた市場需要関数と市場供給関数を用いて、市場における均衡概念を導入する。今回は主要な均衡理論:一般均衡理論と部分均衡理論の差異をまとめつつ、部分均衡の分析について議論する。連載はこちら。 市場需要と市場供給消費者が$${K}$$人、生産者が$${J}$$社参加する市場経済を考える。ある財$${n}$$に対する消費者$${k}$$の需要を$${D_k^n(p)}$$とすると、前回の通り消費者の準線形効用を仮定することで、市場全体の需要(市場需要)を以下のよう

均衡理論(3):経済の記述

前回の部分均衡理論に続き、一般均衡理論の議論に入る。今回は議論のセットアップとして、経済の記述方法と効率性の定義、更に価格メカニズムによって達成される価格均衡の定式化を行う。連載はこちら。 経済の記述$${N}$$種類の財、$${I}$$人の消費者と$${J}$$社の企業$${(N, I, J < \infin)}$$からなる経済$${E}$$を考える。各消費者$${i=1, \cdots, I}$$は消費集合$${X_i \subset \mathbb R^N}$$と$$

均衡理論(4):厚生経済学の第一基本定理

今回と次回で、ミクロ経済学において最も重要な帰結である「厚生経済学の基本定理」を学ぶ。これは価格均衡と効率的配分の関係を特徴づける定理であり、完全競争市場における需給均衡分析の核心であると言える。定理は第一基本定理と第二基本定理からなるが、今回は前者を取り扱い、均衡により望ましい資源配分を実現するための条件について議論する。連載はこちら。 前回、一般均衡分析の準備として経済の記述方法を議論し、その中で効率的な資源配分の指標であるPareto効率性、「価格メカニズム」により全

均衡理論(5):厚生経済学の第二基本定理

前回に続き、ミクロ経済学において最も重要な帰結である「厚生経済学の基本定理」を学ぶ。今回は第二基本定理を取り扱い、任意のPareto効率的な配分を価格均衡により達成するための条件について議論する。連載はこちら。 証明の準備弱Pareto効率性と価格準均衡 厚生経済学の第一基本定理の逆は成り立つだろうか。その疑問に答えるものが、厚生経済学の第二基本定理である。まず、この定理に現れる弱Pareto効率性、価格準均衡を定義する。これらはそれぞれPareto効率性、価格均衡よりも