緊急公開、『KAMINOGE』おぼん・こぼん師匠解散ドッキリ論。

こんにちはプチ鹿島です。

大変なことになってしまいました。

私は『KAMINOGE』(東方出版) という雑誌で連載をしているのですが、今回送った原稿が「すいません、掲載できませんでした」と井上編集長から連絡がありました。誤って前々回の私の原稿を掲載してしまったらしいのです。


毎号ご購読いただいている皆様にはご迷惑をおかけします。

さぁ、幻の原稿どうしよう。

今でこそ私は新聞・雑誌・WEB・メルマガなどで月に16本の連載を抱えていますが、一番最初に紙媒体で連載を持たせてくれたのが井上編集長です。恩人なのです。

さらにですよ、井上さんも私も「プロレス者」です。こういう逆境をむしろ利用して盛り上げていくものです。昨日も二人で協議していたら、なんだか楽しくなってきてしまいました。

というわけで、今回『KAMINOGE』88号に載るはずだった原稿をこちらで緊急公開することにしました。井上編集長の英断&許可いただきました。

ブログで公開してもよかったのですが、せっかくですのでnoteでアカウントを作成してこちらを新たな発信先とすることにしました。

ピンチはチャンス。

今後noteをおもしろく利用していけたらと思います。

たとえば、過去の原稿に追記したものやブラッシュアップしたものを掲載していこうと思います。そうすることで今まで読んだことなかった方や、業界の方の目に留まればうれしい。ひょんなピンチをチャンスにします。

さて、今回の原稿は「水曜日のダウンタウン」(TBS)の解散ドッキリに唸ってしまい、こんな素晴らしいものは久しぶりに見たと感動して書いたやつです。

この原稿を書き上げた夜に「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)の収録があったので、そこでもマキタ・タツオ局員とも盛り上がりました。活字とラジオは相性がいいし、なにより無駄話ができる仲間がいるのは大切ですね。

そんなことも確認した原稿でした。

許可局の「解散ドッキリ論」を聴いた方もあらためて読んでみてください。

では、原稿をどうぞ。

「アングルとは何か?」(『KAMINOGE』88号、幻の掲載)

今年もプロレスについて考える日々が続く。

2月15日(金)におこなわれた『プロレスリングマスターズ』にセコンドとして前田日明が登場。相手チームには長州力がいた。ファンの希望通り、長州と前田が後楽園ホールのリングで向かい合うという嬉しい展開(しかも金曜夜8時に!)。

試合後に前田はコメントを出したのだが、その内容も目を引いた。抜粋する。

《プロレスに対して、“決めごとで”っていう定義も浸透しちゃいましたけど、それを分かってても『ひょっとしたらプロレスはリングの上でホントにやり合ってんじゃないか』って思わせるようなものをね。前田日明自身が成功したのは何かって言うと、業界の人達まで騙したんですよね。猪木さんもそれが出来たし、自分もそういう猪木さんを見習って、業界の人間、一緒にやってる人たちも騙すのは最高なんだなって、やってました。》

私が最も印象に残ったのは次の言葉だ。

《若い人もそこまでやってね、何が現実で何がウソなのか、何が作り込みなのかって分かんないように、やってる内にやってる本人も分かんなくなってくんですよ。》(バトル・ニュース )

しかしプロレスは深い。同時刻に大阪でおこなわれた大会の記事は次のような見出しだった。

『新ベイダーがジャイアントパンダとの3メートル対決で勝利…マサ斎藤さん追悼大会』(スポーツ報知)

一体、何がどうした!?

記事には《新ベイダーは、風船のように空気で膨張させて大きくなるパンダに対抗してリングイン。3メートルの巨体がリングで向き合い、立会人の初代タイガーマスク(佐山サトル)も絶句。》とある。

前田が「何が現実で何がウソなのか」と言ったそばからこんな世界があった。その翌日には両国国技館で「マッスルマニア2019 in 両国~俺たちのセカンドキャリア~」がおこなわれた。言わずと知れた「プロレスの向こう側」である。この後楽園→大阪→両国の並びは素晴らしかった。プロレスは進化し、そして深化している。

さらにプロレスについて考える機会があった。雑誌「EX大衆」3月号でのマツコ・デラックス氏のコラム。抜粋する。

《以前だったら、田中みな実とバラエティ番組で一緒になったら、プロレスで言うところの”アングル”をやれたんだけど、もうプロレスは成立しない時代なんだわ》

ある番組で女子アナについて話していたら「わりとシリアスなネットニュースになってしまった」という。なので今までと同じ感覚で笑いにできなくなったのを痛感したという。

相手をクサしているように見えて結果的に相手と「上がっていく」。それを”アングル”と呼ぶなら最高の使い方だが、マツコ曰くそれはもうやれない時代なんだと。通りすがりの人が行間を読まないまま信じてしまうから。

私がすごいと思った言葉は次だ。

《だって、そういう時代なんだから。「シャレが分かっていない」と言うのはナンセンスなのよ。》

ちょっと前までだったら「息苦しくてつまんない世の中になった」とグチを言ってりゃよかったのだけど、マツコは「それってただのノスタルジー」と断言。新しいルールの中で面白くできる術を見つけなければいけないと言うのだ。テレビの最先端で仕事してる人の言葉だと思った。

その数日後、”アングル”の使い方について「おっ」と思った番組があった。

『水曜日のダウンタウン』(TBS)の「芸人解散ドッキリ、師匠クラスの方が切ない説」である(2月27日放送)。

ドッキリってテレビでよく見かける手法だ。安心、安定の企画なのだろう。

でもこのドッキリは違った。大御所コンビ「おぼん・こぼん」は8年間も私生活では口をきいていないほど仲が悪いという。

そんななか、おぼん師匠からこぼん師匠にニセの解散を打診してもらうという企画なのである。ところが、おぼん師匠から解散の話は全然出てこない。こぼん師匠への不満が次々に出るだけ。そのうち口論が始まる。ドッキリは吹っ飛んでいるが、視聴者は不穏試合から目が離せない。

つまり、おぼん師匠はドッキリというアングルに乗っかりつつ、こぼん師匠に「8年ぶりにたまったうっぷんを晴らす」場として利用しているのである。これってテレビの新しいアングルの使用方法ではないだろうか。

バラエティですといいつつ、リアルな感情のぶつけ合いに利用してもらう。

《何が現実で何がウソなのか、何が作り込みなのかって分かんないように、やってる内にやってる本人も分かんなくなってくんですよ。》

という前田日明の「プロレス論」がまさにここにあるではないか。当然ながらそれは視聴者を圧倒する。

こんなドッキリの使い方はあの番組でしか使いこなせないだろうが、最初は半笑い気味の視聴者を畏れさせるのはつくづく見事。

”アングル”という言葉や概念は安易に使うと危なっかしい言葉だが、マツコ・デラックスにしろ『水曜日のダウンタウン』にしろ、プロレスに敬意を払い理解してる人が使うとこれだけ痛快になるのだ。

面白い「プロレス」はあちこちにある。

※ここまで読んでいただきありがとうございました。「KAMINOGE」88号、発売中です。私のコラムは86号と同じものが載っているのである意味「お宝号」かもしれません。次号では今回の原稿と共に新作も掲載してくださるということです。

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