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自分が壊れないように

あ、もうアカン。と思いました。
昨年は出だしからいやーなムードだったのです。まずでっかい組織がうちの会社を訴えた。訴状の意味がどう考えてもわからない。納得なんてできない。誰もがそう思いました。
何とかしたくて弁護士を雇い戦った。弁護士の先生方も良い方ばかりで懸命に戦ってくれた。しかし不利な情勢は覆ることなく、負けが確定しました。
しかし、それは今にして思えばさざ波。

 この戦いのせいで業務にぽっかり穴が開いた。
やばい。このままいくと赤字になる。そう思ってみんなして頑張って営業をかけた。業績は少し上向くが、本調子とは程遠い。
しかし、今から考えるとそれはちょっとしたつまづき。

(自分が)壊れるな。と感じたことありますか?
今回まさにそうでした。体が震えて、目の前が真っ暗になった。一瞬、気を失いかけました。
思えば年末にふと不安がよぎったあの時が分岐点だった。

「こいつ、こんなに悠長に構えて大丈夫なんだろうか?」

こいつとは、同僚のS君です。10年以上の付き合いです。忘れん坊でそのくせグループウエアのスケジュールに全く記入しないのでいつもみんなが書いたりリマインドしてあげていました。プロジェクトを終わらせること、そのための工程を組むのがとにかく苦手で通年納品が始まる12月頃から誰よりもあたふたしていました。
その彼が、休日出勤もせず、悠然としていました。1月になっても変わらない。
2月にさすがに言いました。
「大丈夫なの?」
彼はけろりとして言いました。「そろそろ(言われるかな)と思ってた。」
2月の終わりにS君のクライアントからクレームが入りました。
このままでは終わる気がしない。彼をフォローしてほしい。
そこで本人に問いただし、殆ど報告書ができていないことが判明。
慌てて、私やTがフォローすることに。
もちろん私もTも自分のプロジェクトをいくつも抱えています。でも、一番やばいのは彼の案件だから。そりゃ頑張ります。
3月からは毎晩深夜2時頃まで頑張りました。

実は、私は正月以来まともに休んでいませんでした。無理して追加で受注したせいでかなり厳しい状況でした。1月は正月休みを含めて4日間、2月も半日休みを2日取っただけ。3月は全然休んでいません。

さて、S君の納品の2日前。これじゃ終わらないなと誰もが理解しました。
お客様に迷惑をかけないよう一旦期日に納品し、3月末までに報告書を差し替えることで勘弁してもらおう。そんな話を深夜2時にしました。

3月14日。納品の前日。
彼が出社しません。
即座にお客様にその旨伝え、今後の対応策を伝えました。
お客様は納得してくださいました。ありがたいことに彼のことを心配もしてくれました。

プロジェクトリーダはS君なので、彼がいないと全体像がわからない。
翌日(納品日)は金曜日でしたが、私たちは目の前の作業の他にどんな作業が残っているかまるでわからない。
加えて、彼がデータをサーバに入れていなかったため、彼のPCを開けてみない事にはなにもわからない。絶体絶命です。
金曜日も連絡がつかなかったので土曜日に役員と一緒に彼の自宅にお見舞いに行きました。

 彼、元気でした。
ぺこっと頭を下げて、でも全然悪びれる様子でもなく「こんな仕事を押し付けた会社が悪い」なんて言ってました。内心、この業務やらないのなら君、仕事ないんじゃない?と言いたかったけれど、彼がキレるのが怖くて我慢しました。PCが開かないので、パスワードを教えてほしいこと、業務の説明をしてほしいこと。どうしてもやりたくないならもうこのプロジェクトやらなくてもいいからとにかく引継ぎだけはやってほしい旨伝えました。本人了承してくれました。

 月曜日、S君は出社しません。まもなく弁護士から連絡が入りました。
辞めさせ屋でした。

この弁護士にお願いして、PCのパスワードを教えてもらいました。開けてびっくり。からっぽ。
6月に受注し、3月に納品する業務でした。9月に中間報告を出したのを最後に全くまとまっていませんでした。経過すらわからない。
1週間後彼の部下の派遣さんが、突然会社に来なくなりました。その下で働く派遣さんも。これでこの件を知っている人はゼロになりました。

 ああ、もう駄目だと思いました。自分の業務だけでもパンパンなのに、半年前の仕事を(学びつつ)納品するなんてできっこない。頼みの綱の派遣さんも辞めてしまった。
耳鳴りがしました。疲れ切っているのに眠れなくなりました。
しかし、そんな私の下で、文句も言わず毎晩夜中まで働いてくれる人がいました。私が投げ出すわけにはいきません。

 本当に辛かった。結局、全部終わったのは5月下旬でした。このことが原因で、他のクライアントにも納品で迷惑をかけてしまいました。

 今回のことは一生忘れないと思います。
来なくなる前日のS君は、たった1行すら、まともな文章がかけなくなっていました。彼もまた追い詰められていたんだと思います。
53歳のエンジニアが辞めさせ屋を使って突然リセットをしたことは、長年付き合ってきた私たち仲間にとって大変ショックでした。

 これを読んでくださっている方で、もし、追い詰められている方は、次のことを肝に銘じてほしい。
1.絶対に寝る。
 眠れなくても横になる。眠れなくても焦らない。目が休まるだけ楽になっ
 たと思おう。
2.なんで?という想いに振り回されない。
 腹が立っても絶望しても、なにも変わらない。それよりは前をむこう。難
 しいけど。明けない夜明けはない。
3.食べよう。
 食欲がなくても、食べよう。できれば誰かと食べよう。忙しいからとコン
 ビニで済ましたりしないで、ファミレスでも、カフェでもいいから外に出
 て、温かいものを食べよう。
4.お酒はやめよう。
 眠れないからと飲んだら、途端にげーげー吐いてしまいました。体が弱っ
 ているときは、飲むより睡眠。乾杯は嵐が去ってから。
5.人を使おう。
 眠れないせいですが、頭がしびれて思考能力、パフォーマンスがガタ落ち
 でした。いつもならなんてことはないレポートを読むことすらできなくな
 ったり。そういう時は同僚とお茶したり会話して、アイデアを出して貰っ
 ていました。(自分で考えるより余程早い)。
6.SNSやyoutubeは(逃げてしまうから)見ない。
 気が付くと時間泥棒されてしまうから、見ない。
7.味方を作ろう。
 なんとか一緒に踏ん張ってくれる相方を見つけよう。相方の健気な姿に何
 度勇気づけられたか。
8.それでもダメなら逃げよう。
 自分が壊れてしまう前に逃げよう。すぐには許して貰えないだろうけど、
 いつまでも人は怒ってばかりじゃいられない。そのうち忘れてくれるよ。
 

 


 

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