老いと創造 朦朧人生相談のレビューと横尾忠則の人生観と創造性の感想

2023年11月16日に出版された「老いと創造 朦朧人生相談 (講談社現代新書)」は、著名な美術家である横尾忠則氏が人生相談に応じる形で、自身の人生観と創造性について語った一冊です。本書は、横尾氏の独自の視点からの回答とともに、50作品のオールカラーイラストが収録されており、その芸術的な感性と深い洞察が詰まった内容となっています。

本記事では、この本の内容を掘り下げ、横尾忠則氏の人生観や創造性について考察していきます。

第1章: 定年後の居場所

質問: 定年後、居場所がなくなるのが怖いです

この質問に対し、横尾氏は「生きている限り、今、自分の立っている場所が居場所です」と答えています。これは、現在の瞬間を大切にすること、そしてどこにいても自分の存在意義を見出すことの重要性を示唆しています。定年後の不安を抱える多くの人々にとって、この言葉は大きな励みとなるでしょう。

居場所の再定義

横尾氏の回答から学べるのは、居場所は物理的な場所に限らず、精神的な状態や自分自身の認識に大きく依存しているということです。これは、人生のどの段階においても適応できる考え方であり、自分自身の心のあり方が居場所を決定するという視点を持つことが重要です。

第2章: 親のケア

質問: 衰えていく親を、どこまでケアすべきでしょうか?

横尾氏は自身の経験を通じて、この質問に対する答えを提供しています。彼は母が家を売って得たお金で旅行をし、帰国後に母ががんで入院していたことを告白します。そして、「この質問に答える資格は僕にはありません」と正直に述べています。

ケアの限界と自己責任

このエピソードは、親のケアについての限界と自己責任を考えさせられます。横尾氏の回答は、個人の選択とその結果を受け入れることの重要性を強調しており、完璧な答えを求めることよりも、自分の行動に責任を持つことが大切だという教訓を与えてくれます。

第3章: 孤独と創造

質問: 孤独が怖いです。どうすればよいでしょうか?

横尾氏は「孤独は創造の原点です」と答えています。孤独を恐れるのではなく、創造のエネルギーに変えることができると述べています。孤独の前には、巨大な光り輝く太陽があると比喩することで、孤独が持つポジティブな側面を強調しています。

孤独の力

この回答は、孤独をネガティブなものと捉えるのではなく、自分自身を深く見つめ、創造力を高める機会と捉えることの重要性を示しています。多くの芸術家やクリエイターが孤独の中で創造的な活動を行ってきたように、私たちも孤独を恐れず、その中で自己を見つめ直す時間を持つことが必要です。

第4章: 絵の描き方

質問: 絵やイラストを上手く描くコツを教えてください

横尾氏は、ピカソを引き合いに出して「インファンテリズム(幼児性)をいつまでも失わなかったのがピカソです」と述べています。つまり、子どものような自由な発想と感性を持ち続けることが、上手い絵を描くコツであるとしています。

創造性と自由な発想

この回答は、技術的な上達だけでなく、創造性と自由な発想の重要性を強調しています。絵を描く際には、技術にとらわれすぎず、自分の内なる子どもの感性を大切にすることが、真の芸術を生み出す秘訣であることを教えてくれます。

第5章: 仏教の学び方

質問: 仏教をどのように学びましたか?

横尾氏は、「週刊誌を何冊か読みます。そこには『因果応報』『自業自得』の実例が、スキャンダル記事となって満載されているからです」と答えています。このユーモラスな回答は、仏教の教えが日常生活の中に満ちていることを示唆しています。

日常生活からの学び

この回答は、仏教の教えを学ぶために特別な書物や環境が必要ないことを示しています。日常生活の中で、因果応報や自業自得の例を見つけ、その教訓を学ぶことができるのです。これは、どんな環境でも学び続ける姿勢の重要性を教えてくれます。

第6章: 友だちの必要性

質問: 友だちは必要ですか?

横尾氏の回答は直接的ではありませんが、友だちの存在が必ずしも必要ではないことを示唆しています。友だちを持つことが社会的な常識とされている中で、その必要性を再考することが重要です。

社会的なつながりの再考

友だちがいないことをネガティブに捉えるのではなく、自分自身の時間を大切にし、自己成長に繋げることができると示唆しています。この視点は、現代社会において人間関係のプレッシャーから解放されるための新たな考え方を提供しています。

第7章: 老いと創造

老いを受け入れる

横尾氏は、老いを避けるべきものではなく、創造の源と捉える姿勢を持っています。年齢を重ねることで得られる知恵や経験を創造的な活動に活かすことが重要であると述べています。

創造的な老い

この考え方は、年齢を重ねることに対する恐怖を克服し、老いを積極的に受け入れる姿勢を育むためのヒントを提供しています。老いを創造の機会と捉えることで、人生の後半を豊かに過ごすことができます。

第8章: 絵の見方

質問: 絵の見方が分かりません

横尾氏は、絵の見方についても独自の視点を持っています。絵を理解するためには、自分自身の感性を信じ、自由な発想で絵を見ることが大切であると述べています。

自由な絵の鑑賞

このアプローチは、絵を鑑賞する際に他人の評価や技術的な側面にとらわれず、自分自身の感じるままに絵を楽しむことの重要性を教えてくれます。自由な発想で絵を見ることで、より深い理解と感動を得ることができます。

第9章: 人生の教訓

人生の教訓を学ぶ

横尾氏の回答を通じて、私たちは多くの人生の教訓を学ぶことができます。これらの教訓は、日常生活の中で実践することで、より豊かで意味のある人生を築くための指針となります。

実践的な教え

横尾氏の回答は、抽象的な理論ではなく、具体的な実践を伴うものであり、読者は自身の生活に取り入れることができる実践的な教えを得ることができます。


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