2024 共通テスト 理科③ Extereme化学 問題

理 科 ③
(Extreme 物理 化学 生物 地学)
(各科目 100点)

注意事項

1 解答用紙に、正しく記入・マークされていない場合は、採点できないことがあります。特に、解答用紙の第1解答科目欄・第2解答科目欄にマークされていない場合又は複数の科目にマークされている場合は、0点となります。
2 出題科目、ページ及び選択方法は、下表の通りです。
 略
3 試験中に問題冊子の印刷不鮮明、ページの落丁・乱丁及び解答用紙の汚れ等に気付いた場合は、手を高く挙げて監督者に知らせない。
4 解答は、問題用紙の解答欄にマークしなさい。例えば、10と表示のある問いに対して3と回答する場合は、次の(例)のように回答番号10の解答欄の3にマークしなさい。また、同一欄に複数解答するよう指示された場合は、そのようにすると同時に、解答欄のズレに特に注意しなさい。
(例) 略
5 問題冊子の余白等は適宜利用してよいが、どのページも切り離してはいけません。
6 不正行為について。
 ① 不正行為に対しては厳正に対処します。
 ② 不正行為に見えるような行為が見受けられた場合は、試験者がカードを用いて注意します。
 ③ 不正行為を行った場合は、その時点で回答者の眼前で濃硫酸に水を加えて希釈します。
7 2科目受験者の試験の進行方法について(2科目受験者のみ確認)
 ① この試験は、前半と後半に分けて実施します。
 ② 前半に回答する科目を「第1解答科目」、後半に回答する科目を「第2解答科目」として取り扱います。回答する科目及び順序は、志望する大学の指定に基づき、各自で決めなさい。
 ③ 第1解答科目、第2解答科目ともに解答時間は60分ですが、このテストは60分で回答することを想定していません。適宜自分でそれっぽい時間を設定してください
 ④ 第1回等科目の後に、答案を回収する時間などを設けてありますが、休憩時間ではありませんので、トイレ等で一時退出することは出来ません。
8 試験終了後、問題冊子は持ち帰りなさい。
9 このテストは昨今の共通テストと化学に対するニュースについてのアンチテーゼです。察してください
10 結構問題に偏りがあります。来年もこのコンセプト(世間に対する皮肉と重箱の隅つつき大会の悪問オンパレード)でやるといつかネタが切れるので、ネタを募集しています。@Penta_Cyanide までお願いします。ほんとうに。
11 少しだけ野生の良問と実際の入試問題からの引用が入ってます。
12 たまに高校化学範囲外入ってますが許して♡ でも難関大で化学得点源にしようと思ってる人は解けるとおもいます。


また、必要に応じて次の数値や近似式などをを用いてよい。
log₁₀2 = 0.3 
aが十分小さいときの近似式 a = a/(1-a)
ベンゼンの凝固点は5.50℃
ベンゼンのモル凝固点降下は 5.12 K・kg/mol
Hの原子量1
Cの原子量 12
Oの原子量 16
NaOHの分子量 40

回答フォームはこちらです

注意

筆者が化学から離れてから1~2年経過しているので、間違いがあるかもしれません。もし間違いがあればこっそりDMで知らせてください。

第1問 次の問い(問1~4)に答えよ。(配点 20)

問1 次の①~⑥の記述のうち、太字の部分が元素ではなく単体を指しているものを二つ選べ【1】【2】
は血液中で酸素を運ぶのに必要であるから、不足すると貧血を起こす。
② ペットボトルの中で電気分解によって作られた水素はキャップを開けると特徴的な音を出しながら空気中に放出される。
➂ 日本化学会の提言によると、地球温暖化を防ぐ社会のスローガンとして『脱炭素社会』ではなく『炭素循環社会』という言葉を用いるのが良いと言われている。
④ オゾンと酸素分子はどちらも 酸素 の同素体である。
⑤ 「まぜるな危険」を書かれた二種類の洗剤を混ぜることは 塩素 の発生を誘発するので大変危険である。 
⑥ 窒素・リン・カリウムは肥料の三要素として有名である。

問2 化学電池に関する記述について誤りを含むものを次の①~④の中から選べ。【3】
① 鉛蓄電池は繰り返し利用可能な二次電池の一種であるが、適切なメンテナンスを行っていたとしても、電極の表面に不導体が溜まることで、いずれは電池として利用できなくなる。
② 陰極と陽極に同じ金属を用いた場合でも、それぞれの極付近での電解質の濃度が異なれば、化学電池としての起電力が発生することによって電気エネルギーを取り出せる場合がある。
③ ニッケルー水素電池は正極にオキシ水酸化ニッケル NiO(OH) 、負極に水素ー水素貯蔵合金複合体を用いた二次電池の一種であり、貯蔵合金中の水素が電子と水素イオンとなり、電解質中を水素イオンがオキソニウムイオンの形で移動することによって充電・放電を行うことができる。
④ リチウム電池は正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを用いた一次電池の一種である。アルカリマンガン電池・マンガン電池・酸化銀電池に比べて起電力が大きいことが特徴である。

問3 負電荷を帯びた疎水コロイドに、同濃度の 以下の①~④ の電解質水溶液を加える。最も少ない容積でコロイドを凝析させることのできる電解質を答えよ。【4】
① NaCl
② CaCl₂
➂ K₃PO₄
④ Na₂SO₄

問4 酢酸はベンゼン中では一部が二量体として存在する。酢酸1.20gをベンゼン100gに溶かした溶液の凝固点は4.89℃であった。このとき、ベンゼン溶液中で二量体を形成している酢酸分子は全ての酢酸分子の何%か。最も近いものを以下の①~⑤から答えなさい。【5】
① 20%
② 40%
➂ 60%
④ 80%
⑤ 90%


第2問 文章 A B を踏まえて, 次の問い (問1~5) に答えよ。(配点 20)

A  カオリナイトは磁器の原料の一つで、土壌中に含まれる粘土鉱物の1種である。1:1型粘土鉱物と呼ばれる鉱物の一種で Si₄O₁₀(i)・Al₄(OH)₈ という平面上の化学構造の繰り返しから成る。

磁器の焼成の際にカオリナイトは熱によって化学変化し、酸化アルミニウム (ii) と二酸化ケイ素を含むムライトを生成することが知られている。
 
 
カオリナイトが層状になった、カオリナイトシートの層の間には水分子や陽イオンを吸着することが出来る。ここでは、カオリナイトシートに溶液中の陽イオンがある一定温度下で固体に吸着される際の濃度と吸着量の関係を調べてみよう。  ここでは以下の (仮定) が成り立つと考える。

(仮定)
・カオリナイト表面にはエネルギー的に均一な吸着サイトが存在する。
・1つの陽イオンが吸着サイトへ吸着されると、吸着は完了する。
・吸着は可逆的で、脱離は吸着された陽イオンの数に比例して発生する。
・吸着した陽イオン同士の相互作用はない。

ぼくはラングミュア5月くらいから温めてたんですが
某予備校の共通テストプレに先を越されました
ちなみに2024本番でも全然出る可能性あると思います。まじで

吸着しているサイトの割合を θ 、溶液中の陽イオンの濃度 C とし、
全吸着サイト数 Q とする。

まず、正反応である 吸着サイトへの吸着速度(吸着反応の反応速度)を考えるとする。吸着速度は、空いている吸着サイト数と、空間中の陽イオンの個数 あるいは濃度に比例する。したがって、吸着速度 V₁ 、その速度式の定数 k₁ とすると、
V₁ =  k₁【6】【7】【8】 

次に、逆反応である 吸着サイトからの脱着速度(脱着反応の反応速度)を考えるとする。脱着速度は吸着されている吸着分子数のみに比例するので、脱着速度 V₂ 、その速度式の定数 k₂ とすると、
V₂ = K₂ 【9】【10】

吸着反応と脱着反応が平衡状態にあるとき、【11】= 【12】 である。この平衡の平衡定数 K とすると、 K = 【13】/【14】 とおけるので、【11】=【12】の式を K, C, θだけの式にすることができる。したがって、右辺をθのみの式にすると、 【15】 = 【16】/【17】


問1  文章A中の【6】~【17】を以下の選択肢で埋めなさい
① θ
② 1-θ
③ C
④ Q
⑤ k₁
⑥ k₂
⑦ K
⑧ KC
⑨ V₁
⓪ V₂

問2 ケイ素酸化物によるシートは化学式を太字部(i)とした繰り返し単位からなる。このシートの単位格子を構成するSi-O結合がすべて等価であると考えられるとき、この単位格子は何面体構造を取るか答えよ。【18】

問3 太字部(ii) について、酸化アルミニウムを主成分とする鉱物の一種にコランダムというものがある。コランダムの結晶格子は六方最密構造を基にしたものである。アルミニウム原子と酸素原子は1層ずつ重なり合っており、酸素原子の層は六方最密構造を踏襲するが、アルミニウム原子の層は六方最密構造において原子が入るべきサイトの2/3を正六角形状に埋めている。このときの Al原子の配位数を答えよ。【19】

問4 カオリナイト吸着サイトへの Sr²⁺ の吸着の様子は上で紹介した式が非常に精度よく適応できる。この吸脱着平衡反応の平衡定数 K = 1.0 × 10⁻⁵ mol/L
[Sr²⁺] = 4.0 × 10⁻³ mol/L のとき、吸着率θを求めよ。

θ = 【20】.【21】 × 10^ 【22】【23】


B ある男の子がとある実験装置を考えた。以下はその実験装置のパンフレットである。

みんなで一緒に二酸化炭素を回収して地球を冷やそう!
=二酸化炭素回収ロボット ひえるまん=
 
ひえるまんは空気中の二酸化炭素を回収して地球温暖化を防止させることができる画期的な高性能ロボットです!

ひえるまんでは水酸化ナトリウム水溶液と二酸化炭素を反応させることにより空気中の二酸化炭素を吸収する「塩基性液体吸収法」を採用しており、二酸化炭素吸収タンクに入った空気中の二酸化炭素のみが液中に溶解し、それ以外の窒素や酸素などの成分は反応せずに通過します。

・ひえるまんは一年にどれだけの二酸化炭素を吸収できるのか?
動作環境にもよりますが、一例を以下に紹介します。
24時間365日 特定*環境下で動作させた場合 一年に 22kgもの二酸化炭素の回収が可能!!!

計算しやすいよう数値はいじってますが
結構常識的な範囲でいじってますよ
何なら、ひえるまんに有利になるよう調整してます

問5  水酸化ナトリウムの製造には一般的にはイオン交換膜法が用いられる。1tの水酸化ナトリウムを製造するために必要な電力量を電力原単位といい、イオン交換膜法の電力原単位は 2500kWh/t である。一方で、1kWhあたりの二酸化炭素排出量のことを CO2排出係数と言い、ある年のCO2排出係数は 0.44kg/kWh であった。

今回はひえるまんで用いる水酸化ナトリウムを全てイオン交換膜法で製造されたもので賄い、ひえるまんに取り込まれた二酸化炭素がすべての水酸化ナトリウムと完全に反応する場合を考える。
ひえるまんに吸収される二酸化炭素の物質量とそのために利用される水酸化ナトリウムの製造で発生する二酸化炭素の物質量のどちらが大きいか以下の選択肢より答えよ【24】

① 吸収する量の方が大きい
② 発生する量の方が大きい
③ 発生する量と吸収する量は等しい
④ 部品点数が多すぎて計算がまだできていない

第3問 次の問い (問1~3) に答えよ。(配点 20)

問1 次の ①~④の化合物 のうち、融点が最も高い物質を選べ。【25】
① NaF
② NaCl
➂ NaBr
④ NaI

問2 以下の記述のうち、間違っているものを以下の①~⑤の中からすべて選べすべて正しい場合は⓪を答えよ。【26】
①  ある濃度の食塩水に塩化水素を吹き込むと、食塩が沈殿した。
②  銅を電解精錬する際に、陽極泥中に鉛が得られることがある。
③  水素は陽性の強い金属とは H⁻ としてイオン結合する場合がある。
④  フッ化水素の分子量は空気の平均分子量よりも小さいので、危険性を度外視すれば常温常圧下においては上方置換法で収集できる。
⑤  塩基性の条件下において、アルミニウムイオンに硫化水素を通じると、水酸化アルミニウムの白色沈殿が発生する。

問3 以下の公害についての資料を読んで 次の問い ( a ~ c ) に答えよ

水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそくの4公害はいまでも日本四大公害として知られている重大な環境公害である。四日市ぜんそくは中東産原油をエネルギー源として利用した際に多く放出された〈 1 〉酸化物によって、イタイイタイ病は〈 2 〉化合物の、水俣病と新潟水俣病はいずれも〈 3 〉化合物によって、それぞれの地域において大きな被害が発生した。

〈 2 〉は人体内での代謝回路が人体の必須元素である亜鉛と似ているために間違って取り込まれやすく、有機〈 3 〉化合物もアミノ酸と結合することによって人体に大きな致命的な被害を与えることが知られている。

こういった環境公害は日本に限って発生したことではない。カナダのオンタリオ州の とあるパルプ(紙の原料)工場では パルプの製造に必須である、水酸化ナトリウムの製造に 〈 3 〉法という方法を用いていた。以下がその方法である。

〈 3 〉法 
 陰極に〈 3 〉・陽極に黒鉛を用いて、食塩水を電気分解すると、 陽極に〈 4 〉、陰極にはナトリウムと 〈 3 〉 の合金である ナトリウムアマルガムが形成される。ここで、形成されたナトリウムアマルガムを水に入れると、水酸化ナトリウム(i) と水素が発生する。

〈 3 〉法で生成される水酸化ナトリウムは純度が非常に高かったので、繊維工業に非常に適していたのだが、〈 3 〉を含む水酸化ナトリウムが環境中に流出してしまったことで環境への汚染が発生してしまった。

 現在 水酸化ナトリウムの製造には食塩水 (ii) をイオン交換膜を用いて電気分解する「イオン交換膜法」が主流となっている。水銀を用いない方法であるため、流出したとしても環境への大きな被害が起こる可能性は低い。

ちなみに〈 3 〉法における電力原単位は3300kWh/tらしいぜ!

a 〈 1 〉~〈 4 〉 に入る元素の原子番号を答えよ。なお、原子番号が一桁の元素を答える場合は、その十の位は0とせよ。

〈 1 〉→【27】【28】
〈 2 〉→【29】【30】
〈 3 〉→【31】【32】
〈 4 〉→【33】【34】


太字部(i) の化合物の保管・利用方法について誤っているものを次の①~⑤の中から全て選べ。【35】

① この化合物の水溶液はできるだけ一度に使い切ることが望ましいが、どうしても使い切れない場合は、ガラス瓶にガラス栓をすることで保管する。
② この化合物は空気中に長時間放置すると水分を吸収する性質をもつ。したがって、長時間放置され水分を含んだ当該顆粒の質量を計測し、一定量の水に溶かして水溶液とした後、この化合物の物質量を中和滴定により求めることで、用いた顆粒に含まれていた水分の質量を正確に知ることが出来る。
③ この化合物の水溶液はタンパク質を溶かす性質があり、失明の危険があるので、裸眼で作業をする際は目線より低い位置で作業を行えば安全である。 
④ この化合物の水溶液が肌や衣服についたときは、直ちに弱い酸性溶液を大量につけることによって中和し、被害を最小限にする。
⑤ この化合物は空気中に晒されると、空気中の水分を吸収するので、一定濃度の水溶液を作る際はできるだけ空気中に晒されている時間を少なくするために、顆粒を水に一気に投入することで水溶液を調製する。


c 太字部 (ii) について、実際の食塩水には カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの不純物が含まれている。これらイオンは製造の際に邪魔になってしまうので、事前にある特定の塩を加えることで沈殿除去しておく。
このとき、食塩水に入れることによって水溶液中のいずれかの不純物イオンを除去するのに適した塩を以下の①~⑤の中から2つ選べ。【36】【37】

① Na₂CO₃
② NaNO₃
③ NaOH
④ NaCl
⑤ NaSO₄


第4問 次の問い(問1~4)に答えよ。(配点 20)

問1 高分子化合物に関する記述について誤りを含むものを次の①~④の中から選べ。【38】

① シリカゲルは高分子化合物の一種である
② ニトロセルロース・銅アンモニアレーヨン・アセテート・セルロースはそれぞれが異なる繰り返し単位の成分からなる。
② アミロペクチン内のグルコース単位どうしの結合様式は主に二種類からなる。
④ 高分子化合物は明確な融点を持たないものが多く、その代わりにある程度の温度になると柔らかくなる「軟化点」を持つものがある。

問2 芳香族でない有機化合物に関する記述について誤りを含むものを次の①~④の中から選べ。【39】
①  マレイン酸もフマル酸も低分子量のジカルボン酸であるため、どちらも常温常圧の水に溶けやすい性質を持っている。
②  プロペン1分子に塩化水素1分子を反応させた生成物は二種類考えられるが、生成物の量はどちらか一方に明らかに偏りがある。
③  触媒を用いてプロピンに水を付加するとアセトンが生成する場合がある。
④ 二重結合を多く含む油脂は長時間放置しておくと空気中の酸素を反応して固まることがある。

問3 以下の文章を読み 次の問い (a~c) に答えよ。

フェノール(i)は工業的にはベンゼンとプロペンを原料として作られている。ベンゼンとプロペンを適切な触媒を使い、反応させることでクメンを生成することが出来る。クメンを酸化させることでクメンヒドロペルオキシドを経由し、フェノールと副産物の[化合物A](ii)が発生する。これをクメン法(iii)と呼ぶ。

a ベンゼン環に直接水酸基が付いているような化合物を太字部(i) の化合物を代表とした総称として「フェノール類」と呼ぶ。フェノール類の性質について誤った情報を次の①~④から選べ。【40】
① フェノール類の化合物のベンゼン環に置換反応を行う際は、水酸基のm位に対してより o,p位に対しての置換反応が発生しやすい。
② フェノール類はフェノール性水酸基の性質上、基本的には二酸化炭素の水溶液より弱い酸性を示すが、ベンゼン環にニトロ基やハロゲン基が置換された場合はその酸性度が強まる。
③ フェノール類のフェノール性水酸基は単体のナトリウムと反応し、水素を発生する。
④ フェノール類は塩化鉄(Ⅲ)の希薄水溶液を加えると青紫~赤紫色に呈色するので、この方法によってフェノール類かそうでないかの判別が完全に可能である。


太字部(ii) 化合物Aについての正しい情報を以下の①~④から選べ。【41】
① 炭素数が3のケトンの一種であり、ヨードホルム反応は陰性である。様々な化学製品の基礎的な物質であるため工業的に価値がある物質。
② 炭素数が4のケトンの一種であり、常温で強い揮発性を持つため取り扱いや火気には十分注意する必要がある。
③炭素数が3のケトンの一種であり、マニキュアの除光液に配合されている。長時間の暴露は体質によってはアレルギーを発症するので注意が必要である。
④ 炭素数が4のケトンの一種であり、旧来は木材を乾留して得られる木タールを蒸留して得ていたが、クメン法により大量生産が可能となった。


トルエンからクレゾールを作る方法をは太字部(iii)の方法とほとんど同じ方法である。クレゾールの説明として誤っているものを以下の①~④から選べ。【42】
① クレゾールは三種類の異性体が存在するが、その中でも最も融点が高い物質はp-クレゾールである。
② トルエンからクレゾールを作る際に生成されるクレゾールの異性体の生成量には偏りが生じ、m-クレゾールが最も得られやすくなる。
③ トルエンからクレゾールを作る際には三種類のクレゾールが混合物として得られるので、必要に応じて分留を行うことによって、それぞれの異性体を分けることが可能である。
④ クレゾールは水にやや溶けにくいが、石鹸水中などのアルカリ条件下においては十分に溶けるようになるため、石鹸水にクレゾールを混ぜることによって消毒液として利用されている。



第5問 物質の濃度を測定する方法についての文章 A~C を踏まえて, 次の問い(問1~X)に答えよ。(配点 20)

A 水溶液中の金属イオンの定量実験には エチレンジアミン四酢酸 (図5-1) という物質のニナトリウム塩(以下 EDTA)を用いて滴定実験をすることがある。以下の (文献Ⅴ1) にはその滴定の方法が記されている。

(文献 Ⅴ1)
 初めに、金属イオンが配位して赤色に呈色するような指示薬BTを試験対象の水溶液中に溶かす。その後、緩衝液 (pH=10) を試験対象の水溶液中に適量を測りとって加え、一定濃度のEDTA溶液を滴下することにより滴定を行う。

 EDTAという試薬は Mg²⁺ や Ca²⁺ と非常に強く結びつくので、これら金属イオンと結合している指示薬から指示薬を遊離させることができる。以下がその反応式である。

M²⁺-BT(赤色)+ EDTA → M²⁺‐EDTA + BT(青色) (Mは測定対象の金属元素)

 上記の反応式の通り、EDTAは測定対象の金属イオンと必ず1対1で配位することが知られている。この性質を用いることで測定対象の溶液中に含まれる金属イオンを定量することができる。

 しかし、EDTAを用いた滴定方法には、複数の金属イオンが混和した溶液において、それぞれの金属イオン濃度を測ることが出来ないという欠点がある。EDTA は多くの金属イオンと結合してしまうので、溶液中に複数の金属イオンがある場合、その濃度を合算して計測してしまうである。

キレート反応は本当は平衡反応だが
簡単のためこのようにしている
(図5-1) エチレンジアミン四酢酸の構造式

問1 次の問い (a, b) に答えよ

Ca²⁺ 溶液 0.2L に緩衝液を加えたものに対して 0.010 mol/L の EDTA溶液を5.0mL 滴下した所で滴定が終了したとする。Ca²⁺溶液の濃度 C₁ (mol/L) を答えよ。ただし、pHの変化、Ca²⁺溶液中の陰イオンの影響は考えなくてよい。

C₁  =【43】.【44】× 10^-【45】

b  Ca²⁺ Mg²⁺ 混合溶液 0.2L に緩衝液を加えたものに対して 0.010 mol/L の EDTA溶液を12.0mL 滴下した所で滴定が終了したとする。[Ca²⁺] と [Mg²⁺] の和 C₂ (mol/L) を答えよ。ただし、pHの変化、混合溶液中の陰イオンの影響は考えなくてよい。

C₂ =【46】.【47】× 10^-【48】

c  この滴定実験をする際の不適切な操作を以下の①~④から1つ選びなさい。【49】

①  EDTA溶液を滴下している際、事前に加えておいた指示薬BTの量が少なく、滴定終点付近の色の変化が分かりにくいと予測されたので 滴定の途中ではあったが指示薬 BTを追加した。
② 指示薬 BT は 金属イオン M と結合しているときは赤色を呈するので、滴定の際に溶液の色が赤色から変化した時が終点であるから、そこでEDTA溶液の滴下をやめてビュレットの目盛りの値を記録した。
③ 指示薬 BT を入れすぎると 溶液の色が濃すぎて色の変化を正しく読み取ることができないので、指示薬を溶かす際は量に気を付けながら溶かした。
④ 緩衝液は滴定の最中に測定対象のpHが急激に変化しないよう加えるものであるから、緩衝液を測定対象の溶液に加える際はその容積を正確には測りとらなくてもよいので、メートルグラスを用いた。

B 複数の金属イオンが混和した溶液における、それぞれの金属イオンの濃度の測定について M君は 原子が特定の波長の光を吸収する性質を利用することで、その濃度を測定することができることを知った。光の吸収を利用して物質の濃度を求める方法の原理を調べたところ, 次の記述が見つかった。以下の問に答えよ。

(文献 Ⅴ2)
 ある種の原子や分子はそれぞれの化学種によって特定の波長の光を吸収する。光が透過する方向の長さが L の透明な密閉容器に, モル濃度 c の試料が封入されているとする。ある波長の光 (光の量 I₀) を密閉容器に入射すると, その一部が試料に吸収され, 透過した光の量は少なくなり I となる。

 入射する光の量 I₀に対する 透過した光の量 I の比を表す透過率 T = I₀/I を用いると log₁₀T は c 及び  L と比例関係になることが知られている。

 すなわち、-log₁₀T = n × c × L  (n は 比例定数) と表すことができる。

Lambert-Beerは去年解禁されたので…

問2  長さL の区域内に一定濃度 の Ca原子 が存在し、その区域に向かってCa原子だけが吸収することが出来る波長の光を照射することで、光の透過率 T を測定した。実験に用いた Ca²⁺ 溶液のモル濃度 c と log₁₀T の関係を次の(表1)に示す。なお、実験に用いた溶液のモル濃度 c と長さ L の区域内の原子のモル濃度 は同一と考えてよく、その区域内にCa原子は均一に広がっていると仮定する。なお、区域内の圧力は一定で、空気などによる光の吸収・散乱・反射は無視できるものとする。

(表1)

 ここで、問1-b の 溶液を用いて T を測定したところ、T = 0.80であった。この溶液の Mg²⁺ の濃度C₃ (mol/L) を求めよ。なお、Tの測定には Ca原子だけが吸収することができる波長の光を照射した。

C₃ =【50】.【51】× 10^-【52】


C
 A君とH君はある日、木の下で休憩していた時にふと突然 (文献V-2) のことを思い出しました。その時の状況と会話と A君とH君が建てた仮説 を踏まえて以下の問いに答えなさい。

A君「木漏れ日って直射日光に比べたら、最高に気持ちいいよね」
H君「そうだね。」
A君「学校を卒業して、社会に出たとしても、僕たちの頭上にあるこの木の葉を数えることが出来るくらい、のんびりした生活を送っていたいよね…。」
H君「でも社会に出るとそんな時間はない… 世知辛いよね…。」
(しばし沈黙…)
H君「…! そういえば今日の実験で 入射光と透過光の用いた実験をしたよね。」
A君「うん。」
H君「あれは、入射光の一部が物質粒子に吸収され、物質粒子に吸収されなかった光が透過光として観測できる。その比の10の対数がその粒子のモル濃度と容器の長さに比例することを利用した実験だったよね。」
A君「そうか!」
H君「気づいた?」
A君「直射日光を入射光、木漏れ日を透過光とすると、もしかしたら!」
H君「これで社会にでても木の葉の数を数えることができるぞ!」
A君「俺たちの青春は終わらねぇ!!!!!」

MacArthur-Horn法による葉量推定を今からしぬほど簡略化します

A君とH君は以下の仮定に従って葉の数を数えようとしました。

【仮定】
・直射日光の照度を I₀ とする。
・樹木の下の照度を I とする。
・ I₀ と I の比を 透過率 T とし、log₁₀T が 樹木の葉のモル濃度 c と 後述の L に比例するとする。 
・樹木の葉の分布は木の幹を中心とした 半径rの円柱状であると仮定する。
・円柱の高さを L とする。
・葉は円柱内に均一に分布しているとし、枝や幹の存在は無視できるとする
・葉の大きさや光の吸収効率は高さや樹木によって変化しないものとする。
・葉の大きさは円柱の底面に比べて十分小さいものとする。
・日光は真上から降り注いでいる。

(LAIの概念を新しく作らなくてもいいように仮定でかなり無茶をしている図)
仮定される樹木形状

問3 葉の分布している高さが L である二つの樹木 (α, β) が存在する。樹木 α の葉の数は 1.0×10^5(枚) と既知であるとき、樹木αの透過率 T=0.80であった。いま樹木βの透過率 T=0.64であるとき 樹木βの葉の枚数Nは何枚か。

N =【53】.【54】× 10^【55】


これにて試験問題は終了である。

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