代執行費用の滞納処分

撤去された「群馬の森」朝鮮人追悼碑、管理の市民団体が解散決定

群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」にあった朝鮮人労働者追悼碑が県の行政代執行で撤去されたのを受け、管理していた市民団体「追悼碑を守る会」は11日、前橋市の県教育会館で総会を開き、会の解散を決めた。

思想信条はさておき、債権管理という観点からも大変興味深い事案と言える。
行政代執行に要した費用について、行政代執行法は以下のとおり規定している。

第五条 代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない。

第六条 代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収する

行政代執行法(昭和23年法律第43号)

行政代執行費用については、文書(=納付命令書)によって義務者に納付を命じなければならず(義務規定)、その徴収にあたっては国税滞納処分の「例による」とされている。
「準用する」ではなく「例による」とされていることから、国税徴収法の個々の規定ではなく、国税滞納処分という制度全体を適用することになる。

確認したわけではないが、市民団体というからには法人登記など行っていないのだろう。となると、法の適用が可能なのかという疑問がわくが、

第三条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの(以下「人格のない社団等」という。)は、法人とみなして、この法律の規定を適用する。

国税徴収法(昭和34年法律第147号)

との規定が置かれているので問題はない。ただ、登記がないだけに、財産の帰属認定や各種文書の送達場所の特定等は、慎重に行う必要があるだろう。
また、上記報道によれば、「守る会」とやらは県の納付命令を受けた後に解散し、その旨を債権者である県にも通知したとされている。ご丁寧にも、「支払能力がない」などと付記されているとのことだが、こういうのを「盗人猛々しい」というのだろう。

が、いわゆる人格のない社団は法人とみなされるので(国徴③)、解散後においても団体は清算活動の範囲内で存続しているものと解される。したがって、残余財産の存在及び帰属が確認されれば、滞納処分自体は問題なく行えるはずだ。
また、実務で適用した経験はないが、

第四十一条 人格のない社団等が国税を滞納した場合において、これに属する財産(第三者が名義人となつているため、その者に法律上帰属するとみられる財産を除く。)につき滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められるときは、その第三者は、その法律上帰属するとみられる財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負う。

国税徴収法(昭和34年法律第147号)

との規定も置かれているので、状況によっては第二次納税義務の追求も可能と考えられる。

この案件、公園管理の担当部局が中心になって進めているものと推察する。おそらく債権管理業務の経験は乏しく、担当課においてはご苦労が多いことと思われるが、公平性確保の観点からも徹底的にやっていただきたい😌

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