延滞金の減免

富田林市の介護保険料延滞金減免要綱が、なかなか攻めてきている。

「まとめて納付で延滞金免除」って、なんか特典みたいだし、「まとめて」というのも要件としては抽象的にすぎると思う(滞納分一括、とは言ってないからね)。「事業の継続又は生活の維持が困難になると認められる場合」とは項目立てが分かれているので、経済状況は勘案されず、単に「まとめて」納付すればその分の延滞金を全額免除している、と読めてしまう。

1 延滞金の根拠

市町村が徴収する保険料その他この法律の規定による徴収金は、地方自治法第二百三十一条の三第三項に規定する法律で定める歳入とする。

介護保険法第144条

普通地方公共団体の長は、分担金、加入金、過料又は法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入・・・につき第一項の規定による督促を受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、当該分担金等並びに当該分担金等に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる(以下略)

地方税法第231条の3第3項

以上のとおり介護保険料の延滞金については滞納処分の対象となる。

2 延滞金の減免

地方税法における延滞金減免には、徴収猶予の場合の減免(15条の9)及び納期限延長等の場合の減免(20条の9の5)があるが、この他にも税目ごとに「やむを得ない理由」による減免の規定が置かれている。

市町村長は、納税者又は特別徴収義務者が第一項の納期限までに税金を納付しなかつたこと、又は納入金を納入しなかつたことについてやむを得ない理由があると認める場合には、同項の延滞金額を減免することができる。

地方税法第326条第4項

普通に解釈するなら、裁量減免といえると思う。が、上記の富田林市の介護保険料に係る延滞金の免除規定は、租税にかかる延滞金との均衡を考慮しても、裁量の範囲に収まるのか疑問が残るところではある。

3 延滞金の性質

地方税法第2条に規定されているとおり、延滞金は「地方団体の徴収金」である。
その点において本税と変わるところはないし、租税法律主義の根幹である「合法性の原則」に照らしても、徴税吏員に対して延滞金を徴収しない自由などというものが与えられている筈もない。
延滞金の徴収を怠ったことの違法確認について争われた裁判例は、以下のとおり判示している。

被控訴人が、現時点においても、本件延滞金の徴収を図るための何らの担保も取ることなく、Aの上記分割納付を事実上認めることにより、本件延滞金の滞納処分を怠ることは、合理的な根拠がなく、もはや実質的に公金徴収権の確保が図られない蓋然性が相当程度高く、徴収権者としての裁量を逸脱しているものといわざるを得ない 。

名古屋高判平成18年1月19日

富田林市において上記の規定が実務上どのように運用されているかは知らないが、納期内に納付している住民に対して説明ができないような規定を置くべきではないように思う。



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