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ワシントン州に新AVA Rocky Reach ロッキーリーチ

2022年6月3日にTTBはワシントン州の最新のアペラシオン「Rocky Reachロッキーリーチ」を承認しました。昨年は3つのアペラシオンが承認され、これでワシントンのブドウ栽培地域は20となっています。

ロッキーリーチは、コロンビア・ヴァレーの北西部に位置し、レイク・シェラーンAVAのすぐ南側にあります。このアペラシオンが承認されたことにより、コロンビア・ヴァレーのサブ・AVAは16になりました。ロッキーリーチの名前は、蒸気船の船長が、現在ロッキーリーチ・ダムがあるコロンビア川の急流域、すなわち「リーチ」を指す言葉として使っていたことに由来しています。ロッキーリーチはコロンビア川に沿って広がっており、面積の24%はコロンビア川とロッキーリーチ貯水池で占められています。AVAの総面積は13,085haで、現在47haのブドウが栽培されています。

ロッキーリーチは、栽培地として3つの重要な特徴を持っています。
最下層の岩盤、段々畑の土壌、そして熱蓄積です。

変成結晶岩


コロンビア・ヴァレーの至る所にある岩盤は玄武岩ですが、ロッキーリーチは異なります。このAVA内には玄武岩の岩盤は存在せず、ロッキーリーチの大部分は花崗岩、または地質学者が変成結晶岩と呼ぶ岩盤です。

歴史的には、コロンビア渓谷の他の地域と同様に、ロッキーリーチも1500万年前に発生した溶岩流による玄武岩に覆われていました。しかし、長い年月をかけてコロンビア川が玄武岩を切り崩し、その下にある基盤岩を露出させました。その結果、ロッキーリーチには、コロンビア渓谷の他の地域とは異なる岩盤が存在するのです。玄武岩とは化学組成が全く違います。玄武岩は、鉄やマグネシウム、長石などの鉱物を豊富に含んでいます。一方、ロッキーリーチの岩盤はシリカに富み、クォーツや 雲母のような鉱物が主成分です。そのため、このAVAで岩盤に到達したブドウは、異なる種類の鉱物に遭遇することになります。コロンビア・ヴァレーの他のアペラシオンでは、レイク・シェランが唯一この岩盤を所有しています。


平坦な段丘上の玉石と砂利の土壌

ロッキーリーチの土壌は、コロンビア・ヴァレーの他の場所で見られる土壌とは異なっています。石ころや砂利の上に、風で堆積した砂やシルトで構成されています。ロッキーリーチ自体は氷河に覆われたことはありませんが、この地域は氷河期のアウトウォッシュ(堆積物)の影響を大きく受けています。この地域の北の境界は、最後の氷河期にオカナガン・ヴァレーに氷河を流したコーディレラ山脈のオカノガンローブの南側の地域です。

当時、氷河から雪解け水が湧き出し、コロンビア川の谷を礫で埋め尽くしたました。氷河が後退すると、コロンビア川は元の流路を取り戻し、礫を切り崩すようになりました。15,000年以上前にコロンビア渓谷を浸水させた一連の大洪水「ミズーラ洪水」の最後が、渓谷をさらに削り、浸食を進めました。その結果、コロンビア渓谷の他の地域とは全く異なる土壌と地形が生まれました。
ここには膨大な量の砂利や砂、玉石が堆積しています。ロッキー・ポンドは、ロッキーリーチ内にある唯一のワイナリーで、2つのブドウ畑をこの地域に有しています。特筆すべきは、玉石と砂利の土壌が、渓谷の底に近い平坦な段丘に多く見られることです。ここは昔から果樹園で有名な場所で、すべての果樹園と現在のヴィンヤードは、川の両岸に位置するこの平らな段丘を利用しています。

ロッキーリーチの土壌は、ブドウ栽培にいくつかの影響を及ぼしています。おなじく石畳で知られるミルトン・フリーウォーターのザ・ロックス地区と同様、石は熱を吸収し、それをブドウの樹や房に赤外線で放射するため、成熟が早く進みます。ただし、ザ・ロックス地区の玉石は主に玄武岩でできており、ロッキーリーチの玉石は主に花崗岩です。また、土壌は非常に水はけがよく、ブドウはより深い土壌層に根を張ります。
この地域は水の流れがとても速く、様々な水管理戦略を学ばなければなりない地でもあります。ロッキー・ポンドは、コロンビア川に隣接するロッキーリーチという別の畑も持っていますが、こちらは土壌の性質が異なります。この地域には、90〜180cmのビーチの砂が吹き寄せられ、全く別の世界のようです。


周辺地域よりも多い熱の蓄積量

このアペラシオンの最後の特徴は、その熱の蓄積で す。ロッキーリーチ内の標高は、海抜213mから478m弱で、周辺地域よりかなり低い位置にあります。そのため、ロッキーリーチの気温はかなり高めです。

この周辺でもっとも暑い地域ですので多くの赤ワイン品種に適しています。川のすぐそばの地域とくに温暖です。

川沿いの積算温度は信じられないかもしれませんが、レッドマウンテンとほぼ同じです。

品種に関しては、自然な適合性があります。岩石質の土壌と温暖な気候は、ローヌの象徴であり、ロッキー・リーチにはローヌ品種も植えられていますが、現在はカベルネ・ソーヴィニヨンが最も多く植えられており、15種類以上の品種が植えられています。


レイク シェラーンAVAとの違い

レイク・シェラーンとロッキーリーチは同じ岩盤を共有していますが、この2つのアペラシオンには大きな違いがあります。まず、レイク・シェラーンは氷河によって削られましたが、ロッキーリーチはそうではありません。シェラーンはまた、近くのグレイシャー・ピークの噴火による火山灰と軽石を多量に含んでいます。これらの堆積物はすべて、ミズーラ洪水とコロンビア川によってロッキーリーチに運ばれました。また、ロッキーリーチは玉石と砂利の割合が高くなっています。一方、レイク・シェラーンの土壌は、より深く、より多くの氷河の堆積物があり、氾濫段丘上にはありません。ロッキーリーチとレイクシェラーンのアペラシオンを比較すると土壌は(シェラーンほど)ローム状ではなく、はるかに水はけが良いと言えます。この2つのAVAは、熱の蓄積にも違いがあります。ロッキーリーチはシェラーンよりも温暖で、かなり気温も高いです。ロッキーリーチでは、暑さが栽培に影響し、シェラーンと比較してワインに大きな違いが生じます。シェラーンAVAでは全く感じられないような、南の温暖な地域と似たようなフェノリックな味わいがロッキーリーチにはあります。

若い生産地

ロッキーリーチは昔から果樹園で知られていますが、この地域で初めてブドウを植えたのは、2015年にデュフェンホースト家がダブルDヴィンヤードを始めたときでした。この名前は、彼の家族の長い歴史の中で、名前に2つのDを持つ人々がいたことに由来します。26haとAVA内では圧倒的に大きな畑であり、現在植えられている面積の半分以上を占めています。

Double D vineyard

ロッキーリーチのブドウ栽培は7年余りの歴史しかありませんが、この地域は急速に発展しています。このAVAには現在、多数の果樹園に加え、8つのヴィンヤードがあります。ロッキー・ポンド・ワイナリーのワインは、印象的で個性的です。今年初めにHALL Family WinesのElizabeth Keyserを雇ったことで、ロッキーポンドはさらにワインを高めていくことでしょう。一方、ピエールファミリーは、ジェイミーが妻のバーバラと約束したスパークリングワイン用のブドウを現在栽培しています。また、テラスでは、株造りしたグルナッシュを栽培しています。ワラワラ・ヴァレーのロックス・ディストリクトと同様、ロッキーリーチでの農業は簡単な事業ではないと言います。「地表面はすべて玉石でできているのでバックパックを背負って、息を切らしながら、あの段々畑を耕すのは大変なことですが、そこから得られるものはとても素晴らしいものです」

またデュフェンホーストは、現在のブドウ畑のほかに90エーカーの土地を所有し、ホテル、スパ、レストランの建設を計画しています。AVAが承認されたとはいえ、ロッキーリーチにはまだまだやるべきことがたくさんあると指摘します。「この地域には、人々がここに来てブドウを植えるための多くの可能性があると思います。でも、まだ始まったばかりなんです。」



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