【ジョブ理論】考え方からパフォーマンスの向上を考える。
ホームセンターにドリルを買いに来た人が本当に欲しいものは、穴である
とても本質を得た一言であるが、人は自分でこのような本質に気づかないことが多い。これは日常生活での家計の消費における話だけでなく、アスリートにおけるトレーニングも同じである。
私は物事の思考形成においては、スポーツならスポーツ、ビジネスならビジネスと縦割りされた相関性がないものではなく、むしろ非常に互換性があり「結果を残す」という点においては全くもって同じだと考えている。
結果を残すために必要となる本質に気付くための考え方の一つに、ジョブ理論というものがある。この思考は、アメリカの経済学者クレイトン・M・クリステンセンの提唱した理論ではあるが、その一部をトレーニングとしての考え方につなげていこうと考える。
独走能力の向上から考える
ロードバイクで20kmの独走能力(巡航速度)を高めることを考えよう。
その場合は、あなたなら何を問題と考えてどうアプローチするだろう。
ある程度トレーニングを詰んだ経験がある人は、FTPを向上させようとするだろう。数週間・数ヶ月間もハードなトレーニングをしても、2-3%向上させることができればいいと思うが、果たしてそれで伸ばせる速度はどれだけだろうか。
速度を上げるためにFTPを高める必要があるのは十分理解できるが、速度が関係している因子を分解していけばそれ以外にも方法がある。例えば、空気抵抗の低いロードバイクを活用したり、ヘルメットやウエアの組み合わせ、さらにはエアロフォームを習得することも、巡航速度を向上させるために役立つ。
私はサイクリストの多くが 巡航速度を高める = ハードなトレーニングをしなくてはいけない という考え方に盲目的に陥っている人があまりにも多いように感じる。もちろん根幹となるフィットネスの向上は重要であるが、それを細分化して考えれる視野の広さと思考の深さが足りていないことが多い。
更に言えば、FTPを向上させるためハードなトレーニングだけでなく、ペダリングスキルの改善や、フィッティングでのポジションの最適化から考えられるサイクリングエコノミーの改善なども効果的であり、そのほかにはサプリメンテーションを含むニュートリション(栄養素・栄養摂取方法など)も効果的だと思う。
ハードなトレーニングが…と盲目的になっている場合は考え方にズレが生じていることがある。冒頭の言葉を借りて言えば、穴ではなくドリルを欲しがっている人だということだ。
この意味が理解できたか、気付くことができたか、で今後のパフォーマンスが少しだけ変わる人もいるかもしれない。一つの参考にして欲しい。
ロードレースに勝つことを考える
ジョブ理論とは少しだけ異なるお話をする。
ロードレースを勝つために必要なことを考えるために何が必要かを答えてくださいと聞いた時にFTPの向上と答える人がいる。あながち間違いではないのだが、それこそ盲信的である。
とはいえ、戦うステージが上がればFTPが高くなくては話にならない。
高校生ならインターハイで完走を目指すなら体重比4.5w/kgは欲しいけれど、優勝を目指すなら体重比5.2w/kg以上 (絶対値300w以上)は欲しいなど、自身が目標としている結果の条件として、揃える必要がある。
そうした条件を揃えた中で、勝つためにはそのほかにも考えないといけないことがある。
レース当時に最大パフォーマンスが出せるコンディションに持っていくための疲労コントロールだけでなく、レース参加者のフィットネスやレース成績からコースを照らし合わせたシミュレーションを繰り返し勝負所を考える、それを踏まえた上での栄養戦略に合わせて夏場であれば深部体温の調整を考えていく必要がある。
インターハイで勝つことを考える。
自分がFTP5.0w/kgでも優勝候補の相手は調子悪くてFTP4.8w/kgまで崩していたら勝てるかもしれない、FTP4.85w/kgでも同じ能力の選手が5-6名いれば勝ち逃げができるかもしれない、レースが2時間経過しても適切な栄養補給と集団走行でスタート直後と同じような巡航能力を維持できれば逃げれるかもしれないとか、色々。
勝つための条件は一つじゃない。
その視野を広げて、改めてあなたには何が必要ですよと気づかせながら導いていくのがコーチのお仕事である。
努力すれば勝てるわけじゃない
正直、努力しても結果は出ない。
世の中には報われない努力がたくさんある。
もしかしたらこれを読んでくれている人も、報われない努力をしている可能性があるかもしれない。
考えて欲しい。
名古屋から東京に行きたいから頑張って自転車を漕いでも、西に行ったら大阪に着いてしまう。名古屋から東京まで350kmあるわけだが、実際にこの努力を反対方向に向けてしまったら岡山まで到着するのである。そこから東京に行くまでには700km走らなくてはいけない。この努力と時間の無駄は、お金を払っても取り戻すことができない大きな後悔になることがある。
でも、自分では気づかずに正しいと信じてしまう。僕はこれを努力の方向音痴と呼んでいる。
SNSでフォロワーの多い人の言葉が正しいわけでもない、強い選手よ発信が正しいわけでもない。だけど『有名な◯◯さんが言っていたから』とそれを信じて考えずに続けてしまう。間違っているわけではない、でも小学4年生が高校2年生の数学を理解できないように、基礎基本が抜けたままでは理解できないし、ただ参考書を読んでいるだけで身にならない。
でも、自分ではそれをすることで学んでいると勘違いしてしまう。僕はこれを妄信的な頭でっかち、だと呼んでいる。
行き先までの道のりを調べず盲目的に頑張る、誰かがこれやってるから盲信的にそれを続ける、じゃなくてちゃんと自分に合った方法で今やるべき正しい努力をしていこう。
自分の人生なんだから、自分で目的地までの道をひけるようになろう。自分だけじゃわからないから、周りの大人(親・先生・信頼できる指導者など)に自分で考えながら相談しよう。
この記事を読んでくれている人は、何かを頑張ろうとしてる人、頑張ってる人だろう。
であれば、努力できる人だと思うからこそ、それを忘れず継続して適切な方法で取り組んで欲しい。
僕は皆さんを、応援してます。
以下、いつも通りプライベートな記事。
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