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Haru 2

はるが私の目の前にやってきたその日、私は彼女に夢中だった。近くで見るはるは、初めて目にした日や、遠くでその存在を確認していた日より、ずっと魅力的に思えた。翌日に行われた2年になって初めての社会の授業(私は5教科の中で社会が一番好きである)で、先生が自己紹介のついでに好きな社会の科目(地理とか歴史とか公民)を教えてと言い、きっと歴史が多いのだろうと頭の片隅で思いながら、予想通り少なかった地理の回答者が私とはるのふたりだったときは、運命さえ感じた。1年のときのクラスになじめなかった分、きっとはると仲良くなって、残りの中学校生活は楽しく過ごしたい!なんて、勝手に妄想して、数日間は後ろの席から頑張って話しかけたりした。けれど、女子中学生の現実はそんなに甘くない。はるは同じアカペラ部の子と行動を共にし、私にはさほど興味を示さなかった(もしくは示さないように見えた)。1年の時の経験から、出だしの友達作りをコケると、その先つまらない毎日を送らなければならないことが分かっていたため、次第に私は、同じ管弦楽部(私自身は結局管弦楽部に入部していた)の子たちのところに交じっていった。

それからというもの、私とはるはクラスメートとしての会話はするものの、休みの日にわざわざどこかで落ち合って遊んだり、学校にいても、行動を共にすることはほとんどなかった。しかし、私たちは成績が似通っていたため、3年生の受験期は同じ高校を志し、互いに頑張ろうとときたま応援しあったりした。また、学校の生徒会の役員を決める際も、私たちは同じ役職に推薦されたりと、何かと似通ったところがあった。そして、ある程度の距離感を保ちながら、私たちは中学校を卒業し、無事、同じ高校へと進学した。

その後気づいたことなのだが、私ははるに、ある種の片思いといってもいいほどの憧れの気持ちを抱きながらも、常に少し前を行く彼女(実際のところ、成績はいつも彼女の方が私より少し良かったし、生徒会の役員の推薦投票数も彼女の方が多かったし、何より彼女は美しく、魅力的だった)を羨ましく思ったりしたこともあった。

つづく



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