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彼を彼たらしめるもの

人を愛するとき、私が大切だと思うことの1つは、その人のDoではなくBeを愛しく思えるかということである。もう少しかみ砕いていて言うと、その人が何ができるかではなく、そもそもどういう人であるかが大切であるということである。

私の彼は楽器がうまくて、料理ができる。おまけに英語もできて、ジェントルマンである。そんなところがすごく素敵な彼だけれど、私は、彼がそれらすべてを失っても、きっと彼を好きでいることは当然のように可能だと思う。それは、それらすべてのできることが、結果としてのできるだからである。

私が彼を好きな理由の根幹は、彼を彼たらしめるものがとても美しく、尊敬できるからである。彼を彼たらしめるものとは、ざっくりと、今の彼(楽器がうまくて料理ができる)を生み出した彼の性質ともいわんばかりのものである。具体的に、楽器のことを例に挙げると、うまく演奏できる事実ではなく、そうなるべくした彼の楽器に対する思いや行動(好きなものを、壁にぶつかってもその気持ちを捨ててしまわないで貫き、様々なアプローチをして上達してきたという今につながる一連のプロセス)、そして、その思いや行動さえも生み出したポジティブでタフな考え方と姿勢がとてもかっこいいのである。

仮に、彼が何かの拍子で前述した得意なことが何一つできなくなるとしよう。それでも、そのつらい体験から立ち上がり、持ち前のポジティブさを忘れなければ、彼はそれまでと同じように、もしかすればそれ以上に魅力的であるのではないかと思う。また、その彼たらしめる性質があれば、もう一度同じように楽器も吹けるようになるし、料理もできるようになるし、もしかすれば新たなる得意なものもできるのではないかと思うのである。だからこそ、人にとって一番の魅力とは、その人をその人たらしめているものであり、それこそがその人を形どる根幹なのである。

加えて、私が彼を好きな理由をもう一つ記述しておく。それは、彼が私を好いてくれるからである。本当の愛は与えること、報いを求めないこと、なんてよく言われるかもしれない。しかし、私に言わせてみれば、それは親にとっての子くらい血の濃い中でなければ成り立たないことだと思う。愛してくれるから、愛せる。愛しているから、愛してもらえる。恋愛とは、そんな相互関係の中で成り立っていると思う。

以上が私の人を愛するときに重要だと思う点の1つである。なお、この考えはあくまで私個人の考え方であり、ある程度の時間を彼と過ごしたからこそ見えてきた考えであると思うため、決してすべての恋愛がこうでなければならないといいたいわけではない。そして、私自身も、自分を自分たらしめるものを愛し、のばしていけるように、まずは自分の根幹を探っていきたい。

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