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この世界の片隅に

あの愛しくて憎らしい追憶の電車の中で、あなたは強く私を抱きしめていた。あの日々から3年近くが経った今でも、想い出と永遠の謎は私たちを取り巻いていた。

2018年3月20日、先輩とのメールの最後は、私の友達への恋心の暴露で終わっている。それからというもの、私は先輩が彼女に片思いをしていたのだと思っていた。彼女は常に私の一歩前(実際は何歩も前だったのかもしれない)にいた女の子で、みんなが知っているより、まじめで誠実だった。この真実は私しか知らないし、私は一生一人で、友達である彼女を一枚のフィルターにかけて見ていかなければならないのだ。ずっと、そう思ってきた。

しかし、先輩と出会ってから今日までの5年間、真実を知っていたのは彼女の方だった。彼女は私と話しているとき冷静だったし、私が見ている彼女はまじめだった。なぜ、似通っているのに(思い込みにすぎないと思うけれど)あまり通じ合えないのだろう。私は好きなのに。そんなことを思っていた。彼女は私には多くを語らなかったし、どこか秘密めいていた。

何もかも知らなかったのは、果ての果てまで来ても知ることはなかったのは、先輩の優しさなゆえなのだろうか。はたまた、永遠に手の中で踊らされていたにすぎなかったのだろうか。初めて会ったあの日から、物語が始まったあの日から、駅までの15分の会話で、定期一往復分が11杯のカップジュース分であることを忘れるようなあの日から、すでに私は部外者だった。彼女と私は似通っていたのだ。彼らはちゃんと、繋がっていたのだ。

今でこそ笑って話せる青春の思い出に、驚きとむなしさを含んだ胸の高鳴りがした。

その夜、夢にあなたが出てきた。初めて、愛し合うことができたあなたが、愛と憎しみの電車のボックス席で、私を強く抱きしめていた。思い出のファイルを再び開けているひどい私を包み込んで離さなかった。見つけてくれて、救い上げてくれた。たった一人を、この世界の片隅に。

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