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【咲-Saki-考察】宮永咲の隠された花の意味と、アークタンデのルーツについて【前編】


咲さんかわいい!


ではなく!(ではありますが!!!!!)


宮永咲さんといえば、嶺上開花したときなどに咲く、白い花がとても印象深いですよね。

そういえば自分は、原作の咲さんの花が「なんの種類の花」なのかは調べたことがないことに気付きました。

ということで、今回は宮永咲さんに描かれる花の種類を特定して、色々と考察してみよう!!と思っていたのですが、
初手から想定外も想定外の事態になるというすごいことになってしまったので、それら含めて色々と書かせていただきます!

この記事は二部作記事の前編となります。
もしお気に召されましたら後編の記事も読んでいただけたら嬉しいです!


※この記事には、咲-Saki-21巻までのネタバレが含まれております。

※この記事には、花言葉など定義が一意に定まっていない事柄を引用した、筆者の解釈が多く含まれております。星の数ほどある解釈の一つとして読んでいただけましたら幸いです。


1 長野編の宮永咲の花


ということで、宮永咲にどのくらい花が描写されたのか調べました!
ので下記に記載させていただきます。
まず長野編にて宮永咲に花が描写された場面は、

・1局扉絵(咲和のカラー扉絵)
・2巻97P (「東福寺を飛ばして-」)
・5巻26P (「卓に魔物は2人いる-!!!」)
・5巻36P (「カンできる待ちを選んだのよ」)
・5巻81P (「花天月地ね」)
・6巻91P (決勝後半戦南一局の嶺上開花)
・8巻20P (夢乃マホの嶺上開花)

(※花びらのみはカウントしておりません。また漏れがありましたら申し訳ございません。)


となります。そして見たところ、長野編の花は全て同一のように見えますので、まずはこちらの花を特定してみましょう。

特に5巻36Pの花が、咲さんが後ろを向いてる関係で花がとても見やすい位置にあるので、これを観察してみましょう。


・花びらが6枚ほどある
・花びらの2枚くらいに斑点がある
・花びらの先端真ん中が色が濃い
・雄しべと雌しべはぐんにゃりしてる
・花の開き方はラッパ型くらい



なるほど!とりあえずこれと同じ百合の花を調べましょうか。「百合の花 種類」で検索、と…



…なくね?


え、百合の花やろ?なんか間違えたんかな?斑点がある百合だから、「百合 斑点」で検索、と…



……なくね???


その、5巻36Pに載ってる花って、斑点が2枚くらいの花びらに集中してるじゃないですか?
でも、画像検索した百合の花を見ると、面積の差はあれど全部の花びらに満遍なく斑点があるのがほとんどなんですよね。

あともうひとつ気付いたのですが、画像検索で出てきた百合の花って、上の画像のように咲さんの花よりも反り返ったような花の開き方をしているんですよね。
咲さんの花はそもそもそんなに反っていないし、ラッパ型と言った方が近いと思います。



…あ!画像検索の下の方にいったら、咲さんの花と同じような花が出てきた!

花びらが6枚ほどあって、
花びらの2枚くらいに斑点があって、
花びらの先端真ん中が色が濃くて、
雄しべと雌しべはぐんにゃりしてて、
花の開き方はラッパ型くらい、

のやつ!な〜んだやっぱり百合の花やん〜見落としてたのか〜




……
………え?
アルストロメリア?



そう、今まで百合の花だと思っていた宮永咲の花ですが、原作の花は百合ではなくてアルストロメリアという花だったのでは?という可能性が急浮上しました。

百合の花じゃないとかそんなこといきなり言われても信じられないですよね。
私も信じられません。
ただ何度見比べても、百合の花というよりは、アルストロメリアという花にしか見えないのです。

それに、この花がアルストロメリアという花だとすると、じゃあなんでアニメとかゲームコラボでは原作と違う百合の花やねんとか、そもそもなぜ原作の花はアルストロメリアって花やねんっていう色々な疑問が湧いてきます。


しかし、「長野編の宮永咲の花はアルストロメリアである」と仮定した上で考えを膨らませると、咲さんとの色々な点で、アルストロメリアとの接点を見つけることができました。


そのため今回の記事においては、

「長野編の宮永咲の花はアルストロメリアである」

という前提で話を進めさせていただき、
そもそもなぜ宮永咲にアルストロメリアの花が設定されているのか?
という疑問を、百合の花との関連性や、アークタンデ家などの話も含めて考察させていただきます!

※記事本編では敬称略とさせていただきます。



2 アルストロメリアの花とは?

白のアルストロメリア


突然アルストロメリアという花が出てきてびっくりしました。とはいえ、この花は百合の花と全く別物というわけではありません。

このアルストロメリアという花は、和名を「百合水仙」「夢百合草」と呼び、これは花の形が百合の花に似ていることから付けられたものとなっております。
また、分類分けによっては百合の花と同じユリ科とされることもある、百合と縁深い花なのです。

ではなぜ、原作の宮永咲に描写されている花は、百合の花ではなくアルストロメリアという花なのでしょうか?


最初に今回の記事の結論を申し上げますと、
宮永咲のモチーフはアルストロメリアの花であり、咲が「ユリの女王」と呼ばれるカサブランカの花に成長するのが、咲-Saki-という物語である
と考えています。

結論から突拍子もない事を言ってしまいましたが、順を追って、まずはアルストロメリアの花と宮永咲の関連について4つほど書かせていただきます。


3 アルストロメリアとの関連① 花言葉

1巻1局扉絵背景に似たアルストロメリア


宮永咲との関連の1つ目は、アルストロメリアの花言葉についてです。
まずアルストロメリアの花言葉は、「友情」「未来への憧れ」となっています。

「友情」は、原村和や、麻雀を通じて得られた友との絆を大事にする咲にぴったりですね。
「未来への憧れ」は、森林限界より高い嶺の上でも開花する強い花のようになりたいという憧れや、姉と対話して再び家族で仲良く暮らすという咲の将来への期待を思い出しますね。

4 アルストロメリアとの関連② アークタンデのルーツ



そして2つ目です。ここから4つ目までが、今回の大本命の話となります。
アルストロメリアの名前の由来と、アークタンデ家の話です。

アルストロメリアという花は、植物学者であり植物分類学の父とも呼ばれるカール・フォン・リンネにより発見されました。
アルストロメリアを発見し、この種を採取したリンネはこの花に名前を付けますが、親友であり同じ植物学者であるクラース・アルストレーマーから名前を取り、「アルストロメリア」と名付けたとされています。

アルストロメリアの名付け親であるリンネと、その名前の由来となったアルストレーマーは、植物学者という共通項の他に、2人ともが北欧のスウェーデン生まれであり、スウェーデンのウプサラ大学の教授と生徒だったという話があります。

ここで登場するのが、宮永姉妹の母?と言われている愛・アークタンデさんです。
アークタンデという名字は北欧由来だと言われており、私自身も検索にて、アークタンデの名を持つ人がスウェーデン、デンマーク、ノルウェーにいたことを確認しております。
(「arctander sweden」などで検索しました。)

宮永咲がアルストロメリアの花をモチーフとされているのなら、宮永咲の母親?である愛・アークタンデさんの名字が北欧のものなのも、アルストロメリアの名前の由来になった2人の植物学者が由来なのではないか?と考えております。
原作初期から宮永咲に登場している花がアルストロメリアだったとすると、宮永咲や宮永家にアルストロメリアをベースとした設定が組まれている可能性はあるかもしれません。

ちなみにこのアルストロメリア、南アメリカ原産で、100年ほど前の1926年(大正15年)に日本に渡来した花になります。
宮永で100年ほど前といえば、100年くらい前の文学を好んで読む宮永照を思い出しますね。


5 アルストロメリアとの関連③ 宮永家の名前の共通項


3つ目は、アルストロメリアと宮永家の名前の共通項について書かせていただきます。


宮永家の名前には、ローマ字にすると「AI」という文字が共通するという話があります。(SAKI、KAI、HIKARI、AI…)

ところで、アルストロメリアって英語で書くと「Alstroemeria」なんですよね。
これ、英語の頭2つが「AI」に見えませんか?
(実際には、2文字目は小文字のLになります)

つまり、愛・アークタンデさんの名前や、宮永の家系は、このアルストロメリアの頭の2文字を取って名付けられたのではないでしょうか。


「宮永咲のモチーフはアルストロメリアの花である」と考えていたのですが、関連②③を考慮すると、
「愛・アークタンデ、もしくはアークタンデ家のモチーフはアルストロメリアの花であり、アークタンデの血筋にこのモチーフが引き継がれている」
というのが正確なのではないでしょうか?


いやいや、AIの文字の話は分かったけど、じゃあ小文字の「L」はどこいったねんとか、そもそも宮永照はそのAIの法則から外れてるのはなんやねんとかなると思いますが、こちらについても書かせていただきます。



まずは、小文字の「L」について。
「AI」の共通項の話をした時に、「L」を「大文字のi」と読み替えることで、話を進めました。
では消えたLはどこにいったのでしょうか?
Lはアルファベットですので、普通に考えたら英単語と関連がありそうですよね。

ということで、宮永家の下の名前を英語訳にしてみました。

=bloom
=illuminate (もしくはlight up)
light
love
=world


そう、宮永家の下の名前を英語訳にすると、全員の英単語の中に「L」が入ってくるんです!
そしてこちらの説ですと、宮永照にも宮永家の共通項が入っていることになります!

これで、「AI」と「L」の説を破綻なく考察することができました。
(※照の英語訳については、illuminationの他にshineなども考えられることを記載させていただきます。)

次に、姉の宮永照について。
「L」の話では照にも宮永家との共通項があるという話をしましたが、先に話した「AI」の法則について、照はなぜこの法則に当てはらないのでしょうか?

私個人としては、「照だけこの法則から外れてるのには何かある」と考えるのも面白いですし、「母と父にも共通項となる法則を当てはめるのを優先した」と考えてみるのも面白いのかなと思っております。


というのも、父娘や母娘では、娘の名付け親は当然父母になるので、名前の共通項が生まれやすいのは当然の話なんですよね。
ただ、父と母については、結婚するまでは他人であったため、双方の名が似るというのは、

①超偶然で名前に共通項があった
①父母の両親同士に面識があり、生まれた子の名前を共通のものに揃え、その子同士が結婚した

と、父母の名前に共通項があるというのは、それこそ奇跡的な確率でしか起こりえないんですよね。



だから、よほどの偶然じゃないと名前に共通項が生まれないはずの父母も共通の法則に寄せている=それほど通したい何かがある、と考えてみるのも面白そうではありませんか?


また、宮永照は、咲ファンの間で語られている天照大神の法則があったりするので、宮永咲との対比や差異表現の強調のため、あえて法則から外したのでは?と考えています。

宮永咲との差異について、名前以外に作中で明確に描写されたシーンがあるのですが、全国大会決勝先鋒戦の話になってしまうので、ネタバレ注意のワンクッションを挟んだ上で、余談④の項目にて話させていただきます。


6 アルストロメリアとの関連④  宮永家の特徴的な髪のハネ


最後となる4つ目は、宮永家またはアークタンデ家の特徴的な髪のハネのことです。

あのハネは、アルストロメリアの花をモチーフとされたキャラクターであるという証だと考えております。

ただ、二部作前編での情報だけだと物証となる材料が不足しているため、より詳しい話と物証については後編の記事で書かせていただきます。


あとは北欧が出てきたので、最初は宮永家のツノ、スカンジナヴィア半島説とかバカ正直に考えてたんですが、普通にアルストロメリア説の方だと思います。(日本を中心とした世界地図だとスカンジナヴィア半島は地図の左上に飛び出た半島なので、面白い説ではあるんですが。)

7 全国編の宮永咲の花


ということで、長野編に登場したアルストロメリアについて考察させていただきました。
次は全国編の宮永咲の花について書かせていただきます。


なぜ長野編と全国編で分けたのかというと、全国編はアルストロメリア以外にも色々な花が描写されているため、区切りを付けさせていただきました。


その全国編(準決勝が描かれた15巻まで)で宮永咲に登場した花は、

11巻37P   (「宮永咲……!!」)
11巻64P   (2回戦のオーラスの和了)
11巻125P (宮永咲の過去の回想)
15巻43P   (夢乃マホを思い出す)
15巻150P (「ツモっ  嶺上開花!!」)
15巻153P (「野の百合を見よ-」)
15巻195P (「がんばるよ--!!」)

となります。
(これまた漏れがあったらすみません。)


・白い薔薇とそのつぼみ (11巻の64P、125P)
・アルストロメリア 
(15巻43P、195P)
・白い百合 
(11巻37P、15巻150P、153P、195P)
・ピンクの百合 
(15巻43P)



と、実は全国編以降は、4つの種類の花が出てきていました。

以前から、宮永咲の花は百合の花だけなのに、11巻で突然白い薔薇が出てきたのはなぜ?という議論がありましたが、長野編の百合の花だと思われていたのがアルストロメリアだったことを考えると、11巻の白い薔薇が特別だったのではなく、もともと宮永咲の状況に応じた花が使われていたと考える方が自然かもしれません。

じゃあ、長野編まではアルストロメリアだけだったのに、急に全国編で色んな花が出てきたのはなぜ?となりますよね。
ということで、これまた色々と考察してみましたので、下記に書かせていただきます。

8 11巻の宮永咲と、白い薔薇のつぼみ

白い薔薇とそのつぼみ


白い薔薇とそのつぼみは、11巻の2回戦のオーラスと、同じく11巻の宮永咲の回想で描かれました。

団体戦において、長野大会決勝まで勝つための麻雀を続けていた宮永咲ですが、全国大会2回戦にて、宮永咲本人の語ったところによると「がんばってみたけどそれ(プラマイゼロ)しかできなくて」という状況になってしまい、子供の頃の慣れた打ち方であるプラマイゼロを達成して試合を終了しました。

それと、11巻の回想は、咲達の小さい頃の写真が載っているため、幼少期の回想であると読み取れます。

つまり、11巻で宮永咲に白い薔薇とそのつぼみが描写された理由は、白い薔薇のつぼみの花言葉である「少女時代」を指しているのではないかと考えております。


2回戦において幼少と同じ打ち方で麻雀をしたこと、また幼少の頃の回想シーンだったから、それを指すために「少女時代」の花言葉を持つ白い薔薇のつぼみが描かれたのではないでしょうか。


また、初期のキリスト教では百合の花と薔薇の花は共に聖母マリアの象徴として描かれており、共に「天国の花」として描写されているようなので、百合の花も薔薇の花も、共に宮永咲を指しているという可能性も考えられますね。


9 カサブランカという百合の花


2回戦と準決勝の嶺上開花の際に、真っ白な百合の花が描かれております。
こちらは百合の花の品種である、カサブランカという花になります。アニメやゲームコラボなどではこちらの花が描かれていますね。

このカサブランカは、大きく白い花を咲かせることから、百合の花でも代表的な品種であり、「ユリの女王」との異名を持ちます。百合の花と聞くとこの花をイメージする方も多いのではないでしょうか。

ユリの女王。嶺上牌がある王牌を支配する、宮永咲に相応しい花ではないでしょうか。
そしてこの異名こそが、宮永咲に最初からカサブランカの花が描かれていなかった理由だと考えております。

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宮永咲はアルストロメリアがモチーフである家系であり、花言葉の「未来への憧れ」もモチーフとされているのでは、という話をしました。

そして咲は長野編を経て、全国大会でも、天江衣の台詞で言う「数多の勁敵と相まみえ」ました。



このカサブランカが描かれたのは、
2回戦にて二者の能力を受け切って嶺上開花で和了した時と、
準決勝で麻雀を楽しむことを思い出し、「曲げられないところ」である嶺上開花で2度目の和了をした時です。

自分の出自の象徴であり、「未来への憧れ」の花言葉を持つアルストロメリアの花から、強敵たちとの幾度の対局の中で成長し、「ユリの女王」であるカサブランカとして花開いたのではないでしょうか。

準決勝対局後、15巻ラストの宮永咲には、アルストロメリアとカサブランカの2つの花が咲いています。
自分の出自であるとても大事な能力と、研鑽を重ねて得た確固たる強さ。
この2つの花こそが、準決勝を乗り越えた、宮永咲を象徴とする花なのではないでしょうか。


そして、白い百合の代名詞であるカサブランカが登場したので、15巻にて咲が夢乃マホを思い出した時に描かれたピンクの花は、ピンク色のカサブランカかと思われます。


ピンクの百合の花言葉はこのシーンに当てはまるものではないので、このピンクの花は純粋に「夢乃マホ」を表しているのだと思われます


このシーンでは、夢乃マホを指すピンクのカサブランカと、宮永咲を指す白のアルストロメリアが併存しております。
この2つの花が描き分けられている理由として、

合同合宿でのあの1局だけ、自分の同等以上の支配により嶺の上で花開いた夢乃マホへの敬意と、
他家に嶺上開花で和了られてしまい、まだユリの女王であるカサブランカには遠いと思っている宮永咲自身(=アルストロメリアの花のまま)
との対比的な表現なのではないかと考えています。


ということで、全国編の花の結論としましては、

①アルストロメリアは、1話からの宮永咲
②白い薔薇のつぼみは、宮永咲の少女時代
③カサブランカは、ユリの女王へと成長した宮永咲
④ピンクのカサブランカは、夢乃マホ

を表しているのではと考えます。

家族麻雀( アルストロメリアの家系=アルストロメリアの花達)のみで能力を行使していた宮永咲が、勝つ喜びを覚え、多くの強敵と対局し、磨かれた強さと、「曲げられない」嶺上牌の支配(カサブランカ)を手にしたのではないでしょうか。

全国大会の決勝大将戦のライバル達もとても強い子達ですが、それでも、
「ユリの女王」であるカサブランカが花開いた宮永咲なら、決勝大将戦でも嶺の上で花を開かせられるのではないかと願っております。



余談① アニメ等はなぜ百合の花だけ?



では、なぜアニメやゲームコラボ等の媒体では、カサブランカの花一本に絞っているのでしょうか?いくつか理由を考えてみましたので下記に記載させていただきます。


①色彩的理由

アルストロメリアは斑点や花びらに筋があり、原作のようなモノクロの媒体ではあまり気にならなかったが、アニメのようにフルカラーの媒体になると、アルストロメリアの色合いや斑点が、宮永咲の「純粋さ」の描写から離れてしまうのではないか?という懸念を排除するため、真っ白かつ百合の代表的品種であるカサブランカを描写することにしたと考えられる。


②意図しない解釈に発展するのを避ける

例えば、宮守の姉帯豊音は
①「追っかけリーチをして先制者に当たり牌を掴ませる先負」
②「裸単騎をするとツモで和了れる友引」
というように、行動を描き分けして違う能力であると描写しているが、
宮永咲においても、アニメという画面内情報が目立ちやすい媒体で花の描写を分けると、「別の能力を行使している」と誤認される可能性を排除しているのではないだろうか。
また、これについては実際の作中で、とあるものの描き分けにより、別の能力を行使しているのではないかと推察されるシーンがあるため、余談④にて書かせていただきます。


③コンテンツの統一

コンテンツ展開をする時に、時系列的にはこのカットはアルストロメリアだな…などの考慮の余地を減らすため、また白百合に統一した方が分かりやすいので、アニメでは最初から白百合であるカサブランカに統一しているのではないか。

余談② アークタンデの出身


前述した、アルストロメリアの名付けのエピソードを由来としてアークタンデ家が組まれたと考えるなら、アークタンデ家は、

①リンネの出身であるスウェーデンのスモーランド
②アルストレーマーの出身であるスウェーデンのアリングソース
③リンネとアルストレーマーの通った大学のあるスウェーデンのヨーテボリ


のどれかの説もあるんですよね、とりあえず個人的にアークタンデ家はスウェーデン出身説を推します。

余談③  2回戦の奇妙な行動


この記事の本編中にて少し2回戦について触れましたので、せっかくならと2回戦における宮永咲と宮永家について少し書かせていただきます。


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2回戦大将戦の後半南三局、宮永咲は強大なプレッシャーを放ちながらも、自分で和了せず、オーラスでは安手を和了ってプラマイゼロを達成しました。
宮永咲は今までの対局でも普通にプラマイゼロを達成していたのに、なぜ2回戦では強大なプレッシャーを放つほどの能力行使を行わざるをえなかったのでしょうか。

私はこの宮永咲の行動は、対局後の本人の発言通り、「一番慣れてる子供の頃の打ち方」であるプラマイゼロを達成するために行っただけだと考えております。ただ、対戦相手が手強かったなどの理由で、普段よりプラマイゼロの行使に力を使わなければならなかったなども考えられます。
また、白い薔薇のつぼみも、この子供の頃に関連があるという話をしました。

宮永咲が麻雀部に加入したのは5月下旬、また全国大会の2回戦は8月上旬と考えられており、麻雀部に加入して「勝つための麻雀」をしだしたのは2ヶ月半となります。つまり、宮永咲にとって勝つための麻雀とは、ごく最近会得した打ち方であるのです。
そのため、平時では行えていた最近の打ち方が、何かしらの要因により平時の状態でなくなったため、やむを得ず「一番慣れてる子供の頃の打ち方」をせざるをえなかったと考えられます。

ではなぜプラマイゼロをするためだけに、他の能力者ですら圧倒される程の強大なプレッシャーを放ったのでしょうか?
私はあれは、宮永家の家族麻雀では何も特別なことではなく、ごくごく普通に行われていたことではないかと考えています。


家族麻雀というと、シノハユの第1話のように、家族で楽しく麻雀をするというのが通常の認識だと思います。

しかし宮永咲が語る家族麻雀では、姉の宮永照は満月時の天江衣ほどではないにしろ強大なプレッシャーを放っており、連続和了を流せないかチャレンジするほど幾度も姉の打点が和了る八連荘を見ており、またその状態でも容赦なくお年玉を巻き上げられ、苦労して勝っても怒られる、という通常の家族麻雀とは明らかにかけ離れているような描写が散見されます。

私事になりますが、最近はネットを使って家族麻雀をしております。
弟妹が「嶺の上に花が咲く…」など、明らかに咲-Saki-を読んでいないと出ない発言が増えたためとてもビビり散らかしています…という話ではなく!
その家族麻雀で私が八連荘をした上に他家全員トバした暁には流石にキレられても文句は言えないほど、普通に考えたら八連荘は家族麻雀とかなり相性が悪いと思うのですが、容認されてた上にその状態の宮永照に勝ってもなお怒られるってかなりどういうことなんでしょうかね…。


姉がそのような強大な能力を行使しながらも、「勝っても負けても自分が損する恐怖」から逃れるために自身がプラマイゼロを目指すなんて、そうできることではありません。そう、姉に対抗しうる程の強大な能力を行使しない限りは。

つまり2回戦の宮永咲の奇妙な行動の考察として、
「2回戦の宮永咲は"子供の頃の家族麻雀と同じように"プラマイゼロの達成を目指しただけであったが、その家族麻雀というのがそもそも外部から見たら異常な程の能力の応酬が起きているものであり、他の能力者にすら怯えられるほどのプレッシャーを放ってしまった」
というものになります。


余談④  花と山




⚠️咲-Saki-21巻の決勝先鋒戦のネタバレがあります。お気をつけ下さい⚠️





咲-Saki-21巻の決勝先鋒戦にて、宮永照が嶺上開花で和了しました。

こちらのシーンでも妹の咲と同じく花びらが描かれているのですが、よく見ると照の花びらと咲の花びらは違うものであることが確認できます。

21巻と15巻の花びらを模写しました


宮永咲の花はアルストロメリアの花、またはカサブランカであると特定しており、また花びらも細くて芯がしっかりしている印象を受けるので、咲の花びらはこの2つの花で間違いないでしょう。

さて、では宮永照の花びらはなんの花なのでしょうか?
花びらだけ見た感じ、日本人にめちゃくちゃ馴染み深い、桜の花びらのように見えるんですよね。

そして、「5 アルストロメリアとの関連③ 宮永家の名前の共通項」のところでも少し触れたのですが、宮永照には天照大神の法則があるため、この桜の花は、「さくら」の語源となったのではと言われている、天照大神の孫のニニギノミコトと結婚したコノハナサクヤヒメを由来としたものではないでしょうか。

と考えると、花の描写を分けた理由として、
姉の照の嶺上開花は天照大神の能力由来のものだが、妹の咲は王牌の支配の能力由来のものである
というのを示唆している意図があるのではと考えられます。


次に山の話になります。
咲-Saki-1巻1局と、11巻102局の宮永咲の回想において、姉の照の背後に大きな山が描かれております。

こちらの山ですが、1巻と11巻の描写を見比べたところ、稜線の感じから、同じ山が描かれているであると考えられます。この山は実在している山を参考に描写したものではないでしょうか?
(※山が特定されているかどうか、検索しても出てこなかったので特定されていない前提で書いてます。既に特定されていたらここの記載はガン無視してください。)


ということで、長野県の3000m級の山15個全部と、スウェーデンの話が出たのでスウェーデン最高峰のケブネカイセ山は確認したのですが、長野の赤石岳と荒川岳とケブネカイセ山が似てる感じはするんですが、いかんせん山に全然詳しくないので特定とまではいきませんでした…。

あの山がケブネカイセ山なら、白糸台の貝瀬監督と接続するので面白い説ではあるのですが。長野または北欧の高い山という縛りなら発見できそうな感じがするようなしないような…。


あと、1巻1局の回想で描かれた、蝶々のいる花も特定しようと思ったのですが、こちらも特定とまではいきませんでした。

「北欧 高山植物」「長野 山 白い花」などで調べて、花びらの間に隙間がない感じから、
グラキアリス・キンポウゲミヤマキンポウゲなどのキンポウゲ属がかなり近いとは思ったのですが、1巻1局回想の花って、真ん中の黄色い部分(葯(やく)と言う)がかなり小さいんですよね。
グラキアリス・キンポウゲとかも小さいは小さいのですが、回想の花ほど小さくはないので、決め手に欠ける感じです。なんの花なんだろ~

あとがき


ということで、最後までお読みいただきありがとうございました!!!
長野編の宮永咲の花が百合の花じゃないのでは?という、想定外も想定外の始まりでしたが、書いた本人も想定外も想定外です。


アルストロメリアを見つけた経緯については冒頭のやりとりと全く同じなのですが、そもそも咲さんの花をちゃんと調べようとしたのはもう少し補足がありまして。

事の始まりとして、今回でいう二部作後編にあたる記事を「単独の記事」として書いており、元々この前編にあたる記事は、その単独の記事の一部として書いておりました。

その単独の記事では、長野編の咲さんの花について
①百合の花であること
②斑点があること

の2点から、「ヤマユリ」という百合の花だとして話を進めていたのですが、咲さんの長野編のモチーフがヤマユリだとすると、文脈的に釈然としないことがありました。

①ヤマユリは「ユリの王様」、カサブランカは「ユリの女王」と呼ばれており、原作の花がヤマユリだとすると、原作全国編では王様(ヤマユリ)から女王(カサブランカ)へ格下げされたことになるため、わざわざヤマユリからカサブランカにする理由がない

②アルストロメリアが初めて登場したのは後編の記事の執筆中になり、咲さんとは別の子の話になるが、咲さんが百合の花だとすると、百合の花と似ているからアルストロメリアも出てくる、と考えるのは理由付けとしては苦しいのでは?

という疑問があったため、別の百合の花かと思いちゃんと調べたところ、そもそも百合の花じゃなかったことが発覚し、この話はさすがに単独で書くべきだろ…と思い至り、前後編に分けることにしました。


アルストロメリアの花ではないかと見つけた時にはあまりの衝撃に土下座の姿勢で1時間ほど考え込んでましたが、アルストロメリアからカサブランカへの変化、アークタンデ家との繋がり、後編の記事におけるアルストロメリアの立ち位置等々勘案したところ、むしろアルストロメリアだと仮定する方が納得のいく話が多くあったので、この記事を書かせていただきました。

後編では、
・宮永咲のライバルのモチーフとなっている黒百合の花の話
・宮永咲は2回戦で何に怯えていたのか?
・獅子原爽のデザインのモチーフ
・宮永家のツノはアルストロメリアモチーフであるという詳細な理由
・末原恭子と宮永姉妹の因縁の仮説

などについて書いていますので、今回の記事をお気に召していただけましたらぜひ読んでいただけると幸いです!
改めまして、記事を読んでいただきありがとうございました!!

引用文献
小林立,「咲-Saki-」,SQUARE ENIX,1〜21巻,2007-2021

記事内で使用した花の写真とそれを模写したイラストについては、写真ACで利用規約に沿ってDLをしたものとなります。


参考にさせていただいたサイト様
(記事内でリンクを貼れなかったものとなります)

PHPオンライン  |  "百合"はなぜ特別な花なのか? その秘められた意味


WEB MAG #11 桜と日本人  |  院庄林業株式会社  |  岡山の総合木材メーカー


グラキアリス・キンポウゲ  |  西遊旅行



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