『Dreams Universe』はゲームを作る大変さだけは学べるツール
こんな世界が見たい。あんな冒険がしたい。やりたいことは、なんだって自由につくれちゃう。ここは、「こんなゲームがあったらいいな」を叶える場所。
そんな夢のようなうたい文句が公式サイトに踊る『Dreams Universe』。の製品版が先日リリースされました。ざっくり書くと『Dreams Universe』はゲームを作れるゲーム。作ったゲームを公開すれば、全世界のプレイヤーに遊んでもらうこともできます。
実は作る系のゲームは結構好きで、『シミュレーションRPGツクール』がメモリーカード丸々1枚使うことに疑問を覚えず遊びましたし、『Minecraft』のレッドストーン回路は、手本を見れば構造をアレンジできる程度まで使い方を覚えました。『テラリア』で回路を組んだこともあるし、『3D対戦格闘ツクール2』では、中国拳法的なアクセントで「ハイハイハイハイィィィィッ!」と叫びながらピストン運動を始める投げ技を……。あ、最後のは友人が作ったヤツだった。ホントダヨ。
そんなわけで(?)自分はゲーマーのなかでも比較的作ることに慣れている方じゃないかと思います。自分から見て『Dreams Universe』はどんなゲームなのかを今回は書いていこうかと思います。ちなみに下に行くにしたがって買おうか悩んでいる人に二の足を踏ませる内容になる予定なので、興味があるなら適当に読むのやめてPS Storeに向かったほうがいいですよ。
ちなみに、今回は遅くなったので誰でも最後まで読めます。
衝撃を受ける完成品から、なんだこれ? までいろいろゲームが転がっている
なんでも作れるとうたっていますが、『Dreams Universe』はほかのプレイヤーが作った作品を遊べるというのも特徴。アーリーアクセス版で作られたものもあり、その数はかなりのものになっています。
あくまでプレイヤーが作ったものなので(一部公式が作ったものもあり)結構な無法地帯。それがまたファンメイド感があって
あって……ヨシッ!
ただ、ジャンルとして多いのはTPS視点のアクションゲームやレースゲーム。というのは『Dreams Universe』は別途設定をしないとTPS視点のゲームしか作れないんですよ。
ほかのジャンルを作るなら、例えば常時上から見下ろすカメラアングルにして、キャラクターの動きを(画面上で)上下左右だけに制限すれば2Dのシューティングやアクションが作れるといった感じ。キャラクターを常時自動で動くようにして、画面下部にウインドウと文章を用意すればアドベンチャーが作れる……はず。
当たり前ですが、ゲームのクオリティは玉石混交。どうやって作ったのかまるで見当のつかないものから、テンプレートを組み合わせようとして途中で飽きた未完成のものまでいろいろです。まあ、自分は“玉”どころか“石”さえ作れないのですが、その辺りの大変さは下の方で書くとしましょう。
そしてプレイというか体験できるのはゲームだけではなく、映像作品やキャラクター、『Dreams Universe』の機能を使って書いた絵なんかも投稿されています。
なんかすごい。
やっぱり無法地帯だ。
プログラミングの知識がいらないのは事実
まあ、こういった完成品を見ているとなにか作ろうかなとか思うわけですよ。なにかと言わずできればゲームが作りたい。『Dreams Universe』はそんな人に向けたゲームなので、ゲームを作るためのサポートはしっかりしています。
キャラクターのモデリングは直方体や球体を組み合わせて作れ、ギミックの動作などのプログラミング部分は、電子工作的な画面で制作可能。
音楽に関しては、PC上で作曲したことがある人ならおなじみの画面で作曲もできます。
もちろん、チュートリアルも用意されているので時間をかければなにかを作るところまでは到達できるでしょう。
また、いちからゲームを作らなくてもボールを転がすゲームなどいくつかテンプレートが用意されていて、それをアレンジするという遊び方も可能。こちらは『ツクール』的な遊びですが、コースを高難易度にアレンジしつつ、ボールの見た目をボールの中に入った猿にすれば『スーパーモンキーボール』的なものは作れそうです。
ちなみに、いくつかのメディアで「簡単にゲームが作れました!」と書いているのは大体はこのテンプレートからのアレンジ。そんなに簡単にゲームがいちから作れたら苦労はしません。
ゲーム作りは結局大変
さて、ここでちゃちなゲームを想定してみましょう。
移動、ジャンプ、攻撃ができる主人公がゴールを目指す3Dアクション。ステージには移動する足場だけがギミックとして存在する。ステージ内には敵がいて、接触するとダメージを受けるけれど攻撃で倒せる。
うん、詰まらなそうだ。
この出来の悪いインディにもならないようなゲームを『Dreams Universe』で作ろうとするなら、まず主人公の設定だけで
●そのキャラクターがプレイヤーが操作であることの設定
●移動速度
●移動を始めたときの加速度
●移動をやめるときの加速度(どれだけの素早く減速できるか)
●主人公のジャンプ高度
●二段ジャンプは可能か?
●可能なら二段ジャンプの高度は?
●体力の設定
●攻撃モーションのどこに攻撃判定があるかの設定
●攻撃判定の持続時間の設定
●攻撃判定部分が敵に接触した際に敵の体力に干渉する設定
●敵の体力に干渉した際にどれだけのダメージを与えるかの設定
この辺りが必要になってきます。そしてギミックを作るなら
●ギミックがどんな軌道を描くか
●ギミックの移動速度
は最低限決める必要があり、ここにスイッチを押すとギミックが動く仕組みを入れるなら
●どのオブジェクトがスイッチなのか
●スイッチに対してプレイヤーがどんな干渉(乗る、攻撃する、近づくなど)をするとスイッチが動くのか
●スイッチを操作するとギミックはどう動くのか(一度スイッチを操作すると永久に動くのか、一定時間動くのか、スイッチに干渉している間だけ動くのかなど)
この辺りの設定が追加。そして敵に関する設定なら
●敵の体力の設定
●敵が主人公に接触したときに主人公がダメージを受ける設定
●そのダメージ量の設定
●主人公の攻撃モーションに攻撃判定を設ける
●主人公の攻撃部分に敵が接触したときのダメージ設定
これでもほんの一部。見た目まで含めて考えると、コントローラの特定のボタンを押したときに主人公が攻撃モーションを取る設定や、そのボタンがどのボタンであるかの設定も必要です。さらに主人公は足を動かして移動するのかや、歩幅の設定、移動時にどれだけ足が空回りするかの設定などなど、とにかく設定するものが多いわけですよ。
これだけ頑張って出来上がるのは、上に挙げたつまらなそうなゲーム。ここにイベント、例えば「序盤にある看板に近づくと主人公が自動で看板のほうに向かい操作方法が表示される」なんてものを入れようとしたら
●イベントが始まる範囲の設定
●イベント開始時に主人公を操作不能にする設定
●自動で看板に向かうように主人公の移動ルートを設定
●表示するテキストの設定
●どんなレイアウトでテキストを表示するかの設定
少なくともこの辺りが必要。ちょくちょくデモシーン的なものを挟みたいなら、一つのデモシーンに対して同じように上記の始まる範囲の設定やらなんやらをしたうえで、デモシーン中でどんな風にキャラクターが動くのかを全部設定する必要があり。まあ、とにかくできることが多い分必要な設定が多いわけです。
可能性は感じるけれども壁が大きすぎる
『Dreams Univerese』に興味を持つ人の多くは「自分にもゲームが作れるかも」という淡い期待を持っているはず。そして『Dreams Universe』に触っていれば、いつかは作れるでしょう。多分自分なら
自分好みのキャラクターを3Dモデリングで描けるまでに数年
チュートリアルの内容を扱えるまでに数週間
各機能の応用がある程度できるまでに数週間
作りたいゲームの設計図をゲーム外で作るのに数カ月
実際に手を付けて形になるまでに数カ月
このぐらいかければ最低限のゲームは……
やってられるか!
ぶっちゃけ『Dreams Universe』はとんでもなく労力のかかる制作ツールを用意したうえで、その最低限の使い方だけチュートリアルでレクチャーするという作り。This is a penの文法だけていねいに教えてくれて、あとは辞書を渡されて英文を自由に作ってくださいと言っているようなものです。
これは別に『Dreams Universe』の作りが悪いのではなく、ゲーム作りのチュートリアルを十全に組み込むなんてどう考えても不可能。結局、最低限だけ教えてあとはプレイヤー任せにするしかないわけです。
その分、可能性だけは十分すぎるほどなので、人によってはハマったら出てこられない沼になるかもしれません。これほど人に勧めにくいけれども魅力はあるタイトル、なかなかないですね。
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