3DSは永遠に酸っぱくなければならない【3DSの想い出】

あのゲームがおもしろかった、あの機能は革新的だった。ゲームハードにはその数だけ想い出というものがあります。今月のトークテーマは【Nintendo 3DSの想い出】。おそらく、ほかのマガジンメンバーは3DSでどんなタイトルを遊んだかを思い返しながらなにか書いていることでしょう。

ただ、自分の場合はちょっと事情が違います。なにせNintendo 3DSを買っていないのですから。ハマったゲーム? ねえよ。いまいち楽しめなかったゲーム? ねえよ。

3DSを買っていない以上、このゲームが面白かった的な想い出はなし。ただ、持っていないなりに想い出はあるんですよね。かくかくしかじかで興味を持たなかった、あれはさすがに妬ましかった。だいたいそんな話です。光あるところには必ず闇がある。ほかのメンバーが光の想い出を語るなら、自分は闇の想い出を語っていきましょう。

ローンチの魅力に欠けていた3DS

最新ハードが出るならとりあえず手に入れたいという人はしばしば見かけますが、自分の場合はソフトありき。遊びたいタイトルがなければどんなハードも発売日に買おうとはしません。先日の悲喜こもごもだったPS5の予約戦争も、自分とは関係のない争いごとだったりします。
そして件の3DSですが、少なくとも自分にとってはローンチタイトルがあまり魅力的なものに見えず。当時はPlayStation Portableで満足していたこともあって、手に入れたいハードではありませんでした。

そしてもうひとつネックになったのは、下位互換。3DSはNintendo DSのソフトを遊べます。DSではゲームボーイアドバンスのソフトを遊べます。ですが、3DSでGBAのソフトを遊ぶことはできません。そして当時の自分はGBAは持っているもののDSは持っていない状態。GBAはだいぶガタが来ていたので、3DSが発売を迎える、もしくは迎えたというタイミングで3DSとDSで迷うという事態になっていたんです。最新ハードか今手元にあるソフトを遊べるハードか。どちらがいいかを悩んでいるうちに結局どちらも買いそびれてしまいました。

悩んだ結果どちらも選ばない。優柔不断だとは思いますが、それが自分の選択だったので仕方がないかなと。

Nintendo 3DSは酸っぱい

そんなこんなで現在まで3DSを買っていないのですが、まったく3DSを遊んだことがないというわけではありません。

多分最初に遊んだのは、東京は秋葉原。ヨドバシカメラの体験コーナーだったかと思います。確か発売からそこまで経っていないタイミングでした。

ですから体験できたのもローンチ、もしくはそれに準ずるタイトルだったかと思います(さすがになにを遊んだかは忘れました)。そういった時期のタイトルって、やたらとハードが持つ新機能がプッシュされたものばかりリリースされますよね。自分が遊んだタイトルも立体視が素晴らしい新機能であるかのようにアピールされていました。当然置かれている3DSも立体視機能はオンの状態。そんな環境でプレイしたところ、これがめっちゃ酔う!

初代『DOOM』を15分プレイしたら1時間半動けなくなり、『マインクラフト』もオプションで歩行時のカメラの上下動をオフにしないと1時間もたない。そんな3D酔いしやすい体質に、小さな画面で立体視を強要させるのはある種の拷問。プレイ開始から少しして軽い頭痛がしたなと思ったら、胃のなかで泡だて器が稼働し始めたような感覚が! そして、お昼ご飯が時間を巻き戻すかのように上へ上へと移動を始める。
そんなに酔うなら3D立体視をオフにしてプレイすればいいと思うかもしれませんが、ローンチ辺りの3DS未購入者はそもそも本体機能でオンオフができることさえ知りません。画面内の敵と戦いながら獅子身中の虫である胃の中身とも戦う。あまりに不利な戦は早々長くは続きませんでした。
「そろそろまずいな」というところまで遊んで、そのままお手洗いに直行。そんな限界まで遊んでいるわけですから、あとはお察しの通り。ヨドバシAkibaはほぼ全フロアに男女両方のお手洗いがあるのがいいですよね!!
つまり3DS初体験の感想はゲームがどうとか操作性がどうとかいう話ではなく、

遊ぶと酸っぱくなる。

そういうことです。のちのち立体視機能をプッシュしたタイトルが減ったことや、2DSがリリースされたことを考えると結局立体視機能は評判がよくなかった様子。なんのためにあんな思いをして3DSをプレイしたのでしょう……。ちなみに、その後に何度か3DSに触る機会があったのですがそのときは、立体視がオンのままでも少し気分が悪くなる程度でした。上記の惨劇は多分初プレイ時の体調の影響もあったのでしょう。

PS Vitaの登場でさらに3DSからは縁遠く

そんな酸っぱい3DSの発売から、1年と経たずにPS Vitaが登場。普通ならハードに即手を伸ばすことはしないのですが、当時の仕事はPlayStation系ハードが中心。PS Vitaなら掛けたコストはすぐに回収できるだろうという考えもあって、自分のゲーム人生のなかで唯一発売日に購入したハードになりました。こちらもローンチにはそこまで心惹かれなかったのですが、なんだかんだで持っていたことでお仕事にもつながったのでそれはそれでよし。

ただ、PS Vitaを買ったことでますます3DSに視線を向けることが減りましたね。といっても別にSFCかメガドラか、PSかセガサターンかといったハード戦争的な目線で3DSとPS Vitaを比較していたわけではなく、単純にPS Vitaのゲームを遊ぶだけで手いっぱいだっただけです。実は今だに携帯できるハードを2種類以上持ち歩いて、遊び分けられる人がよくわからないんですよね。時間の捻出はできるとしても、自分の場合同じハードで2タイトルを遊び分けようとしてもいつの間にか片方がなおざりになってしまいます。そんな自分の性質がわかっているからこそ、PS Vitaを手にしたあとに3DSを手にしようとしなかったというのもあります。

なによりも妬ましかった『Project X ZONE』

さて、3DSやPS Vitaの時代から少し昔。2005年に『ナムコ クロス カプコン』というシミュレーションRPGがリリースされました。

このタイトルはその名のとおり、ナムコとカプコンのキャラクターが参戦するいわばお祭りゲー。ナムコからは『ワンダーモモ』や『テイルズ オブ ディスティニー』、カプコンからは『ロストワールド』や『キャプテンコマンドー』。もちろん『鉄拳』も『ストリートファイター』もと新旧関係なくさまざまな作品のキャラクターが登場しています。このゲームにものすごいハマって、最終的に複数人のキャラクターのレベルがカンストするくらいまで遊んでいました。レベルカンストというとやり込みの下準備のように見えますが『ナムカプ』の場合は少々事情が違います。
『ナムカプ』は一本道のシミュレーションRPGで、レベルを上げるためのフリーマップはいっさいなし。ただし、ステージ内で途中撤退をしてもそこまでに倒した敵の経験値は入るため必要以上にレベルを上げるなら、どこかのステージで途中撤退を繰り返すという形になります。自分の場合は、最終ステージでラスボスだけ残して撤退を繰り返していたというわけです。
さらに、やり込み用の高難易度ダンジョンみたいなものもないため、レベルを上げる恩恵は最終ステージの敵を素早く倒せるので、経験値を稼ぎつつより早く撤退できるようになることくらい。はっきり言って虚無です。
そもそも『ナムカプ』は何度も撤退を繰り返しながら少しずつ進んでいくような難易度ではなく各ステージ初挑戦でもクリアは十分可能。撤退しても稼いだ経験値が獲得できるというシステム自体、シミュレーションRPGに不慣れな人への救済手段だったと考えられます。

そんな強くなった先になにもないレベル上げでしたが、とにかく楽しかった。本来総力戦の最終ステージを少数精鋭でクリア(直前で撤退しますが)できるようになり、KOS-MOS単騎で最終ステージを蹂躙できるようになり、それでもまだ遊びたいので、KOS-MOSを囮にしてほかのキャラクターのレbルカンストを目指し……。それぐらいハマったゲームです。
ただ、ひたすら最終ステージを途中撤退していたという遊び自体が『ナムカプ』の物足りなかった部分。育てたキャラクターを満足に使う場所が欲しい。今回は無理でも続編なら……と思っていたわけです。

実際『ナムカプ』には、続編が生まれる素養はありました。ナムコとカプコンのキャラクターを一作品で出し切るというのは、到底無理な話。参戦キャラクターの候補はごろごろいました。シナリオは一応完結していたものの、オリジナルキャラクターが中心の物語が、ナムコとカプコンの作品の世界やキャラクターを巻き込んでいくという構造だったため「まだやりようがある」と感じさせるには十分なものでした。そんな『ナムカプ』の実質的な続編と言えるのが

『PROJECT X ZONE』です。ナムコとカプコンにセガも加わり、クロスオーバーは大規模に! 一方で『ナムカプ2』的なものがPSフォーマットで出ることは絶望的になってしまいました。というのも、『ナムカプ』と『PXZ』の開発を行ったモノリスソフトはこの時点で既に任天堂の子会社に。子会社になっているだけならまだ『ナムカプ2』への希望はありましたが、3DSで続編(とユーザーが見る)タイトルが出てしまってはもう……。

そこまでハマったタイトルの続きが出たなら、どうして3DSごと買わなかったのか? なんででしょうね。覚えていません。ただ、この一件でなんとなく3DSが嫌いになっていました。信じて待っていた『ナムコ クロス カプコン』が京都の任天堂さんの子会社化にドハマリして『プロジェクト クロス ゾーン』の発表を送り付けてくるなんて思ってもいなかった。そこに子会社化という言葉からイメージした上下関係や、伝え聞く『プロジェクト クロス ゾーン』の主人公は零児と小牟ではないという話も加わり、自分でもよくわからない感情のまま、3DS自体を忌避するようになっていました。

今思い返すと、これは期待していたゲームが所持していないハードで出たことが妬ましいという単純な話だったりするんですよね。

『モンスターハンター』はどこに行った!?

さて、DSとPSPの時代から3DSとPS Vitaの時代に移ったなか、自分を含めた多くのPS Vitaユーザーには期待しているタイトルがありました。そう、『モンスターハンター』の新作です。

『モンスターハンター ポータブル』から始まった『モンハン』の携帯機版は、『モンスターハンター ポータブル 3rd』のころには押しも押されぬ大ヒットタイトルに。次は『モンスターハンター ポータブル 4th』になるのか『モンスターハンター V』になるのか(当時は正式タイトルや仮称でタイトルに“V”を付けるタイトルがちょくちょくありました)。WiiやWii Uでナンバリングの新作が出るのが先かもしれない。
いつになるかと思っていたら、完全新作『モンスターハンター4』がリリースされましたよね。

3DSで!

あの当時携帯機の『モンハン』は出せば売れると思ってもおかしくはないタイトル。実際『モンハン4』や続く『モンスターハンターX』『モンスターハンターXX』は大ヒットしました。
ただ、なぜPS系ハードを蹴って、3DSで新作をリリースしたのか。いまだによくわかりません。自分のように3DSを買い控えた人はいなくても、『モンハン』でPSPを買うのに苦労したから今度は『モンハン』の前にPS Vitaをという人もいたでしょう。実際過去のニュースを振り返ってみると『モンハン』の影響でPSPが品薄、売り切れといった話はいくつか出てきます。

https://news.livedoor.com/article/detail/5255135/

そんな風に『モンハン』のためにPS Vitaを確保している人もいただろうというなか、3DSでのリリース。
3DSで『モンハン』をリリースするにあたって、『MHP』シリーズの大ヒットの影響はどう考えても大きいものだったでしょう。カプコンならともかく、任天堂側からどんな偉い人やユーザーから信用を獲得しているクリエイターが「影響はない」といったところでまず信じてはもらえません。自分も信じません。
また、もしも3DSで『モンハン』がリリースされていない世界線があるなら、そこではPS Vitaで『モンハン』がリリースされていると断言しても荒唐無稽な話ではないでしょう。
つまり『モンハン』というIPで見ると『MHP』の影響で『モンハン』をリリースして、しかもPS Vitaの『モンハン』を消滅させた3DSは『モンハン』を奪っていった〇〇ハード(〇〇には任意の罵倒が入ります)なんです。

とはいえ、最近まではまだ納得していたんですよ。いろいろ事情があっただろうし、一度3DSで『モンハン』をリリースしたら次も3DSでリリースしたほうがノウハウの蓄積やものによっては使いまわせるリソースもあってよかったんだろうなと。

ところが先日『モンスターハンター:ワールド』のリリースからたったの2年と少々で『モンスターハンターライズ』が発表。『モンハンライズ』に期待はしていますが、2013年9月に『モンハン4』がリリースされ、そこから2年と少々の2015年11月に『モンハンX』がリリースされたということを考えるとモヤモヤしています。
『モンハン』を出してから2年少々で別ハードの『モンハン』を発表できるなら『モンハン4』のあとに『X』『XX』と続けて3DSでリリースせずに、それこそ2015年11月にPS Vita向けの新しい『モンハン』を発表という形もできたのでは?

やっぱり任天堂は……(以下、検閲)。

3DSは永遠に酸っぱくあり続ける

任天堂から東京ドーム一杯分のブブ漬けが飛んできても納得する任天堂ディス満載の3DSの想い出でしたが、これはあくまで過去を振り返っての話。今、自分のすぐ横ではNintendo Switchがせっせと横にくっついたコントローラを充電しています。

ただ、自分は今後も3DSを積極的に手にすることはしません。もしも手に入れたとしても『モンハン』と『PXZ』を遊んでおしまいにするでしょう。
というのは、『モンハン』や『PXZ』だけ遊ぶなら、それは好きなシリーズや期待していた作品だからおもしろい。つまりソフトの力であると自分を納得させることができます。ですが、そこから色々なタイトルを遊んでなおおもしろかったら、それはスペックやサードパーティを集める能力を含めた3DS自体のおもしろさになってしまいます。

もちろんわかっているんですよ。3DSにはほかにも自分好みのタイトルがあるだろうということも、そのなかには3DSでしか遊べないタイトルがあるだろうということも。
ですが、今から3DSを楽しんでしまうのは「あのブドウは酸っぱいから食べなくてよかった」と思っているキツネの口にブドウを放り込むような所業。10年間その気になれば手が届くところにあったブドウは、もはや酸っぱくなければ困るんです。

酸っぱい出会いから始まった3DSには、いつまでも酸っぱいままでいてほしい。3DSとは自分にとってそんなハードです。

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