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デッキ構築が“must”でなく、“should be”の『One Step From Eden』【俺GOTY】

年遊んだタイトルのなかから自分の一番を語ったり、一番から順に何タイトルか語ったりする1月のテーマ【俺GOTY】(大遅刻中)。ある程度の大作を挙げるのが手堅いとは思うのですが、2020年に大きなタイトルを全然遊んでいないんですよね。

振り替えると、自分の2020年はなんとなくRPGやアクションアドベンチャーのような大きな目的に向かってじっくり楽しむタイプのゲームを遊びたくない年だったかなと。
1プレイが数分~数時間で終わるものばかり遊んでいましたね。

ただ、大作を遊ばなかったなら遊ばなかったなりに自分の一番を語るのが【俺GOTY】。自分は『One Step From Eden』について書いていこうかと思います。

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デッキ構築型ゲームって?

『One Step From Eden』の話に入る前に、デッキ構築型ゲームとはなにかを軽く書いていこうかと。

デッキ構築型ゲームは、ステージをクリアするごとにカードゲームのカードにあたる消費アイテムが手に入るゲームです。強力な攻撃を繰り出す、広範囲のビームを撃つ、体力を回復させるなど、カードの効果はさまざま。
このカードを駆使して敵と戦う、というのが大体のデッキ構築型ゲームの流れです。

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ただ、プレイヤーが手に入れたカードのほとんどはデッキ(=山札)に積まれた状態で、プレイヤーが使えるのは手札として配られる数枚のみ。消費アイテムと書いたとおりカードは使うと消費され、手札のカードを使う、ターンが経過するなどの条件を満たすと新たな手札が配られます。

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『One Step From Eden』の場合は左下のB、Aと記載されているところの2つだけが使用可能。どちらかを使うと左端に縦に並んでいるデッキからスペル(=カード)が補充されます。

そして、すべてのカードを使うと消費されたカードがすべてデッキに戻り、カードが配られるという流れ。

このシステムのおもしろいところは、まずデッキのカードの順番はランダムだという点。どれだけ強力なカードが手に入ったとしても、いつ使えるかは運しだいです。

あと一撃でやられるというときに、デッキに1枚だけ眠った回復カードを引いて「来たわあああああ!」となることもあれば、“力を溜める”的なカードを使ったあとに最初からデッキに入っているようなポンコツカードばかりを引いてしょんぼりということもあり。

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もちろん“力を溜める”は“切り札”が手札に加わるまで使わないのも手ですが、そうすると使わないカードが手札を圧迫して直近の選択肢が狭まってしまいます。

また、ゲームが進むごとにランダムで提示されるカードを報酬として手に入れていくというシステムも大きな特徴。報酬がランダムである以上、理想のデッキが組めるかは運しだい。というよりも大抵は組めません。
“回復”と“攻撃”どちらのカードを選ぶか、“とても強いけれどシナジー前提”のカードと“いつでも一定の効果を得られるそこそこの強さ”のカードのどちらを選ぶか。悩みながら少しずつデッキを構築していくのが楽しいんです。

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タイトルによってはショップ的なものがあることも。

そして、報酬のカードが増えていけばそれだけ多彩で強力な手段が増えていく反面、デッキの枚数が膨れ上がる点も悩ましくおもしろいところ。ときにはカードを増やさない、もしくは減らすといった手段も使ってデッキを調整するのもまた、デッキ構築型ゲームのだいご味でしょう。

運を技術でカバーできる『One Step From Eden』

このデッキ構築型ゲームが大きく数を増やしたのは(個人的な印象が含まれますが)『Slay the Spire』のヒットがきっかけ。また、トランプをはじめとした一般的なカードゲームはほとんどがターン制です(メジャーなところでは『まものローグ』がリアルタイムバトル寄りですが)。
そういった理由からか、デッキ構築型のゲームは多くがターン制のシステムを採用しています。

また、カードや“ポーション”などそのゲーム独自の消耗品を使わなければアクションが取れないというタイトルもかなりの数見かけます。デッキ構築型ゲームはカードゲーム、なかでもカードを場に出す的な遊びのエッセンスを取り込んだゲームなので消費して結果を得るという仕組みは自然ではあります。

ただ、こういったゲームを遊んでいると、どうしても詰みを感じるときがあるんですよ。
例えば、デッキに“5ダメージ”のカードしかなければ、体力20の敵を倒すのには必ず4ターンかかります。『まものローグ』のようなリアルタイム制のバトルの場合はターンの概念はありませんが、こういったタイトルの場合は時間でたまるコスト的なものを支払ってカードを場に出すシステムが採用されていることが多く、カード4枚分のコストがたまるまでに一定回数の攻撃を受けます。

同じカードばかりというのはさすがに極端ですが、詰む理由はデッキ全体の火力が足りない、長期戦用の回復/防御カードがないなどいろいろ。カード(+消耗品)が自分の戦力のすべてである以上、どれだけ理想の順番でカードが手札に来たとしても今の戦いや次のボスに勝てないという瞬間はしばしば訪れます。ギリギリまで戦ってちょっとしたデッキの周りの悪さで負けるならまだよいのですが、ボスに勝てないことが数ステージ前から見えてしまっているという流れは正直少し萎えます。

そういった詰みが理屈のうえでは存在しないのが、アクション(どちらかと言えばシューティング寄りですが)である『One Step From Eden』。

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アクションである以上、敵の攻撃は避ければOK。さらに、カード(に相当するスペル)なしでも全キャラクター最低限の攻撃手段は持っています。
つまり、敵の攻撃を避けきって敵にわずかなダメージを延々と蓄積させていけば理屈のうえではどんなポンコツなデッキでも、ほぼすべての敵攻撃を初期デッキのまま対処可能。

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デッキが重要ではあるけれども、デッキがすべてではない。どれだけ引きが悪くても、報酬で裏目をひき続けてもプレイヤーキャラクターの体力がゼロになるまでどこまで進めるかはわからないというシステムはカードゲームらしさは薄れるものの、自分にはクリーンヒットでした。

記事タイトルにも書きましたが、強力なデッキを作ることが“must”であるゲームが多いなか、『One Step From Eden』は“should be”を採用したことが【俺GOTY】選出の理由としてかなり大きな比重を占めています。
『Slay the Spires』など、いくつかデッキ構築型のランダム性があるタイトルを遊んでみたのですが、結局『One Step From Eden』に戻ってきましたね。

個人的にはデッキ構築型ゲームは「〇〇のパクリ」と言われる段階から、ようやくひとつのジャンルになってきたと考えています。ランダム性とリプレイ性の高さからかなり気に入っているジャンルなので、今後も新しい仕組みを盛り込んだデッキ構築型ゲームが出ないかと思うしだいです。

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