『ヤミ金業者の復活』は世相の表れか/時事ニュース


ヤミ金業界が先祖返りか?
近年鳴りを潜めていた類いの手法が復活の兆しを見せている。20年ぶりに注目を浴びたあの組織とは――
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 生活困窮して、銀行や消費者金融からも借金できなくなった人たちを狙い、無登録の超高金利で金を貸し付けるのが、いわゆる「ヤミ金業者」だ。バブル崩壊の余韻が残る1990年代から2000年代初頭には、家族や勤務先を巻き込んだ過酷な取り立てや、返済に窮した人に、次々と新しい業者を紹介して多重債務に陥れるやり口など、まさに「ヤミ金ウシジマ君」に描かれるような業者の全盛期だった。
 あれから約20年。貸金業法や出資法の改正に伴い、業者への締め付けは強まり、かつてのような露骨な「悪徳業者」はおおっぴらに活動できない風潮になってきた。探偵が知る限り、近年は翌月に支払われる給料を債権として買い取る「給料ファクタリング」や、架空の商品売買を装って金銭を貸し付ける「先払い買い取り」といった、表だっては金融業者をうたわない業者が暗躍している。金利もいわゆる「ソフト ヤミ金」と呼ばれる債務者を追い詰めすぎない、つまり警察の摘発の目をなるべくかいくぐれる程度が主流と言われている。
 そういった風潮に慣れきっていたためか、山口組旧五菱会系の元メンバーが再びヤミ金業を営んで逮捕されたというニュースには、正直驚いた。五菱会といえば、「ヤミ金の帝王」といわれたナンバー2を頭に、ピラミッド型の組織で最盛期には1000店を超える支店を運営。厳しい取り立てが社会問題化したあげく、2003年に警視庁などの合同捜査本部の摘発を受け、ヤミ金業からは手を引いたと思われていた。
 しかし、警視庁生活経済課が5月に摘発したヤミ金業者は旧五菱会のメンバーというだけではなく、多重債務者の名簿を管理する「センター」と呼ばれる上部組織を持つなど、旧五菱会の手法を踏襲していた可能性があるのだという。さらに、このヤミ金業者は、他のヤミ金から紹介された多重債務者を、回収した金の運び屋などで組織に引き入れていうのだから、そのやり口はかつての五菱会を彷彿とさせる。
 「今回摘発された業者は、オフィスは設けず、携帯も振り込み先の口座も他人名義のいわゆる「飛ばし」。貸付金の回収役や運び役など役割を細分化して摘発を逃れていたふしもある。これはまさに特殊詐欺の手口そのもの。旧五菱会の残党の一部は特殊詐欺に流れたといわれているが、再びヤミ金に戻り、特殊詐欺の手法を『逆輸入』しているのではないか」
 探偵と旧知の捜査員はそんな見立を語る。いずれにせよ、コロナ禍による不況や格差拡大により、再びヤミ金業者のニーズが高まっているということか。過去最高株価などと浮かれている政治家はこの現状をいかに見るだろう。

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