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「サンセット」上演台本

サンセット(初演2019)

 あらすじ:僕らは笑う、くだらなく、いつまでも続く与太話で。3つのボタンにまつわる男3人の悲喜劇。これは僕や貴方の日常。(3人芝居)


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         サンセット
 
                                                作演出:野村有志
 
 
■登場人物
日野(25)・・・
落合(40)・・・
月村(32)・・・

**********************
 
 暗闇の中から談笑が聞こえてくる
 
■照明:全体FI
【薄暗い一室】
センターを軸にパイプ椅子が三脚客席方向に並んでいる
 
二人の男(日野・落合)が
 
日野「…いやだから行くん嫌なんすよねぇ」
落合「嫌なんやったら、行くのやめたらええやん」
日野「いやでも彼女がマラソン一緒に行きたいって…」
落合「じゃあ行ったらええやん」
日野「あのねぇ!!いいっすか、マラソンって、しんどいんすよ」
落合「そやろね」
日野「知ってるなら、僕に言うことあるでしょ?」
落合「ないよ、何があんねん、彼女にマラソン誘われてんのやろ?」
日野「そうですよ、明日一緒に行こうって」
落合「ほな、お前の選択肢は行くか行かへんかやん、それ以外に何があんねん」
日野「あるやないですか」
落合「なにが?他に何があんねんな」
日野「俺も一緒に行ったろかの一言があるじゃないですか、あってしかるべきじゃないですか」
落合「ないよ、なんで俺が一緒に行かなアカンねん」
日野「いいっすか?マラソンって言っても、フルなんすよ、フルのマラソンなんすよ」
落合「それ聞いてなんて言やええねん」
日野「先輩として一緒に行こかを言わなアカン場面でしょ?」
落合「そんな場面あるか、絶対嫌やわ」
日野「嫌でしょ?絶対嫌でしょ?でもその嫌な事を後輩の僕は受け入れてるんですよ」
落合「いや意味合いが違うやんけ」
日野「じゃあ先輩として「可愛い後輩だけにそんな思いさせるわけにはいかん、俺にも同じ思いをさせてくれ、いやさせて下さい、頼みます」を言うべきでしょ?ほらぁ、ほら言え、言わんかい」
落合「言わんかいちゃうわ先輩やぞ!」
日野「あ!ほんまや!」
落合「ほんまや!ちゃうねん」
日野「あぶな」
落合「あぶなちゃうわ、アウトや、ぎりセーフみたいに言うな」
日野「ふぅ」
落合「はは、あんな折角の休みになんでマラソンみたいなしんどい思いせなあかんねん、俺は明日家族とゆっくりしたいねん」
日野「…落合さんのとこの子って今3歳でしたっけ?」
落合「なんや、何言う気や」
日野「じゃあその子と走りますわ」
落合「やろな、そう言うおもたわ、なんでうちの子3歳でフルマラソン挑戦せなアカンねん、そんなん前代未聞やろ」
日野「ええやないですか!前代未聞の挑戦ええやないですか!」
落合「ええ事あるか、下手したら2.300Mで泣き出しよるわ!」
日野「ほな僕も一緒に泣きますわ」
落合「泣いてどないすんねん!もう彼女と走れや、彼女と行くんやろ?」
日野「判ってへんわぁ…あのね彼女ガチなんすよ、あいつガチで走りよるから一緒に走んの無理なんすよ…ね?」
落合「いや、ね?やないねん、てかそもそもなんで彼女お前誘ってん…」
日野「いやなんか、マラソンってゴール切った瞬間にもんすごい達成感を味わえるらしいんすよ、それを俺にも味わって欲しいって…」
落合「なんやそれ、他にあるやろ達成感味わえるもんなんて」
日野「でしょー?!いや明日仕事やって断ろうと思ったんすけど、急に明日休みになったじゃないっすか?だから…」
落合「てか、その市民マラソン急に明日行って走れるモンなん?事前申し込みとかいらんの?いや絶対いるはずや…」
日野「いらないんすよ!当日申し込みでいけるんすよ」
落合「あぁそうなん」
日野「そっす、だから落合さんも参加可能なんすよ、道は開けてるんすよ」
落合「開かれんでええねん…」
 
■音響:ドアの開閉音
 
日野「ね、このタイミングでドアが開くなんて、道は開かれてる証拠でしょ?」
落合「違うわ、誰か来ただけや…」
月村「あ」

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