神父と元軍人が織りなすエモい映画を見よう


 みなさまこんにちは。大浮藻です。

 今回は1時間くらいでサクッと楽しめる映画のレビューをしていこうと思います。


 この映画ね、すごいんですよ。まずはあらすじから。


 主人公ブレッドはベトナム戦争のさなか、弟が変死したという知らせを受けて母国に戻ります。

 弟の死の真相を探るべく、変死した弟が遺した家を調査するブレッド。彼は調査の末、家のある部分に凶暴な悪魔が取り憑いていることを知ってしまいます。

 凶暴な悪魔を追い払うために、ブレッドは弟とも面識のあったディングルベリー神父に悪魔祓いを依頼。ディングルベリー神父は悪魔を祓うべくブレッドの家に……。



 めちゃめちゃ面白そうじゃないですか?

 元軍人と神父ですよ。絶対面白いじゃないですか。弟の死の真相を探る軍人と神父の悪魔祓い。なんかカッコ良さそう。設定からしてエモーショナルな感じがしませんか!? 軍人と神父との間に芽生える固い友情とかありそうじゃないですか。期待してしまいますよね。


 軍人のブレッドはいろんな教会(?)に悪魔を祓って欲しいとお願いしていたんですが、全部断られて最後に依頼を受けてくれたのがディングルベリー神父なんですよ。優しいですね。神父がブレッドの家に訪れた際は、嫌な空気を感じ取ったのか少し不安そうな顔をして庭で立ち止まったりしてね。腕が良い神父なのかも。


 ブレッドに家の中を案内されて悪魔祓いに取り掛かるんですが、悪魔も小狡いのか、最初は姿を現さないんです。だから「ふざけてるのか?」みたいな、騙したのか?みたいな感じで神父もブレッドに怒るんですけど、そうしてると悪魔が怪奇現象を引き起こすんですね。地獄の業火のごとく立ち上がる火柱、神父めがけて弾ける火の玉……。誰が見ても凶悪な悪魔です。


 しかし神父も負けていない。「立ち去れ!」と悪魔に懸命に呼びかけ、聖書の一文を唱え、聖水をふりかけ……奮闘の末、「浄化した」と。さすが神父。


 ベトナム戦争帰りのPTSDと悪魔の引き起こす怪奇現象(不気味な笑い声)に悩まされていたブレッドも、おそらくはこれで平穏な日常を取り戻せるはずです。良かったですね。

 神父からも「教会に来るように」とすすめられます。心の傷を癒やせということでしょう。アフターケアもバッチリな神父さんでよかったです。



 神父と元軍人とのやりとりが気になる方はぜひ。


 そんなこの映画のタイトルは【デストイレ】です。







 …………デストイレです。マジで。

 本当のことを言うと上記の文章はかなり美化しました。嘘はついていません


 実際のところ、タイトルから想像できる通りZ級映画です。低予算映画とかそういう枠にいれるのも難しい。言葉を選ばないのならクソ映画。でもこれシリーズ物なんです。4作くらい作られていて5作目もありうるらしい(ほんとに?)。でもこういう映画って結構人気あるからまあ……分からなくはない。わたくしみたいな人間が嬉々として見るんですよ。それでネットに「クソ映画!突っ込みながら見るのが最高!」とか書いたりしてね。嬉しげに「貴重な人生の〇〇分を無駄にした!」とか「風邪引いたときに見る悪夢のほうがマシ」とか書き込むんです。クソ映画だって知ってて見たくせにね!そういう需要で成り立っているジャンルです。

 いいんだよ。映画の楽しみ方は人それぞれですから。



 映画冒頭は酔うくらいに画面が揺れるし、なんか見知らぬおじさんがお腹を壊してトイレに駆け込むところから始まるんですよ。こんな汚い始まり方はクソ映画にしか許されねえ。


 タイトルがデストイレだし、まあ腰掛けた瞬間にトイレから牙が生えてむしゃむしゃされるのかな……とか思うじゃないですか。違う。


 トイレからナイフが出てくる。


 わかります? トイレからナイフが出てくる。めっちゃ物理。デストイレというかトイレwithナイフ。トイレとナイフ。お腹を壊したおじさんをデスしたのはナイフ。なんでトイレにナイフなんだ。


 お腹壊したおじさんの方もたぶんお尻をナイフでザシュ!とされているんですけど、なんでか便器に浮かぶのは目玉なんですよね。意味がわかりますか?わたくしには分からなかった。目玉。ケツを切られて目玉。さてはこのおじさん、妖怪尻目だな!?


(※妖怪尻目→お尻の穴に目玉がくっついてる妖怪。着物をめくりあげておしりの目玉を見せつけてくる迷惑系露出妖怪)


 おいおい目玉かよ……なんで目玉なんだよ……と思っているうちに映し出される便器とナイフ。そこにだらりとかけられる茶色の液体。おそらくは血糊のつもりなのでしょうが、どう見てもチョコソース。トイレにチョコソースをかけるな!!!


 おしりを切られたおじさんはトイレの床でのたうち回るのですが、まあ悲鳴の長いこと長いこと。こんなに長く悲鳴をあげられるのならまだ全然元気なのでは?と思うくらい。でもこんな死に方はしたくないですね。


 と、まあ、ここまでが冒頭です。

 おそらくはこれが【弟の変死】の経緯を説明したシーンだったと思うんですが、つなぎ方が結構ワイルドで、悲鳴がおさまったなあと思ったらチープな迷彩服を着たおじさんが画面にインしてきます。Amazonプライムの映画説明欄を見てなかったら、状況がさっぱりわからなかったと思う。お腹壊したおじさんが死んですぐ次のおじさんですからね。アンパンマン!新しい顔よ!みたいな感じでね。クソ映画愛好家の皆さま!新しいおじさんよ!


 この新しいおじさん、つまり主人公のブレッドなんですが、迷彩服がチープでなかなかZ級映画……と思っていたら、胸にはグレーの手榴弾ペンダントが。どう見てもプラスチックのおもちゃなのでダサさがすごい。どうなってんだ。どんな軍人やねん。とツッコミどころが多すぎる。手にしたボストンバッグもジムに行くようなバッグで、色々チグハグです。でもこれがこういう映画の醍醐味ってやつ。


 弟の遺した家も間取りがとんでもなく、玄関の扉を開けたら即イスと机?みたいなものがあるんですよ。何?どんな家?扉入ってすぐ机と椅子って受付じゃねえんだから。


 弟が怪死した家ですが、ブレッドは生活を始めます。すると何やらトイレから不気味な音が……。後々にこの音をブレッドは「笑い声」と称していましたが、咆哮かうめき声にしか聞こえないんですよね。初手でこれを笑い声判定するのは結構才能が必要だぞ。とわたくしは思いました。

 これは歯磨きしながらトイレの笑い声を聞くシーンだったんですが、歯磨きの手を止めても歯磨き中のシャカシャカ音が続いていて、そういうところもZ級映画として芸術点が高い。でも歯磨きのシーン長すぎねえか?


 トイレの不気味さを表したいらしいシーンも、戦争の動画(?)とつまりかけたトイレの画面を交互に繰り返し見せられるのでそのへんのワケのわからなさも凄い。トイレを見せたいのか戦争を見せたいのかどっちかにしてくれ。本当によくわからないんだ。どっちかに絞られてもたぶんワケはわからないんですけど……。


 その謎のシーンも唐突に終わり、今度は弟の墓石の前で決意する(?)シーン。


「この死にも意味がある」「お前の死を無駄にはしない」……とかっこよさそうに呟いたあと(かっこよくはない)、また「お前の死を無駄にはしない」「この死にも意味がある」……と同じことを繰り返すので大事なことは2回言うタイプのひとかあ!と流す他ないですね。


 その日の夜もトイレの笑い声が聞こえるわけですが、このトイレの笑い声の効果音、いついかなる時も全く一緒なんですよね。アラームじゃねえんだからって笑ってしまいました。もうちょっとバリエーションがあっても良かったのでは……(こういうところでバリエーションを出さないのがZ級映画のZ級映画たるゆえんなのですが)。


 弟はトイレを使ったら死んでましたが、ブレッドはまだ死んでないっぽくて、そのあたりも謎ですね。もしかして、この人は引っ越してきてから用を足していない……? そんな馬鹿な。


 途中でベトナム戦争帰りゆえのPTSDの表現シーンなどもあったりしつつ、まあたぶんしばらく不気味なトイレと共同生活はしていたのでしょう。銃を構えつつトイレに向かい、そっと便器の蓋を上げてはまたそっと閉めて銃を構えつつ戻る……というような奇行もしていました。なんかもう色々だめだろこれ。

 わざわざ家の外から銃を構えつつトイレに向かうシーンとかもあったんですよ。いちいち進行方向とかトイレの中身をクリアしてみたり。バリエーションを増やせとは言いましたが、トイレに向かうバリエーションは増やさなくていいんよ。本当に突っ込みどころが多いです。何?


 銃も構えてみるんだけど、トイレに向かって撃つとかでもないんですよね。「俺は知っているぞ!お前がそこにいるのを!」みたいなことを叫びつつそそくさとトイレに銃を向け、それで何も起こらないから銃を構えながらそそくさと戻る……みたいな。マジの尺稼ぎをこの映画で学べます。


 とはいえ限界もきたらしく、ブレッドは電話帳を引っ張り出していろんな教会(?)に電話をかけ始め、トイレの悪魔祓いを依頼するのですが、みなさん電話を切ってしまわれる。そんなにトイレの悪魔祓いって嫌がられるんですか!?


 まあこのへんはよく分からないな(全編通してよくわからないけど)……と思いつつ見ていると何とか対応してくれるところが現れた模様。よかったね〜の気持ちでみていたら、急にブレッドが謎の武器(十手?)みたいなものを二刀流で「シュッ!シュッ!」と言いながら振り回し始める。いきなり過ぎる。わけがわからない。もう取り憑かれてるのはトイレじゃなくてあんたの方では。そう言いたくなるくらい突拍子もない。


 この謎の十手振り回しシーンもやたら尺を取っていて、なんかもう何なんだろうな。よくわからない。この謎の武器を振り回しつつ「血が疼くぜ」みたいなことも言っていた気がするんですが、結局のところこのシーン以降はこの武器も出てきませんからね。何がしたいんだ!?


 神父も家に来てくれるわけですが、「トイレの悪魔祓い」だと伝えた途端にめちゃくちゃなキレっぷりを見せつけてきます。神父さんってこんなキレるの?

 電話ではトイレの悪魔祓いっていう話をしていたはずなので、なんかまあ……どこかで情報のすれ違いがあったのかなと思いつつ、でもこの神父さんって「弟と面識がある」らしかったので、そんなキレなくても良いじゃんと思ってしまいました。到着時、家の外ではなんだか不穏なオーラを感じていたっぽかったのに、トイレの悪魔祓いだけでそんなにキレるとは思わんかった。


 トイレを実際に見ても悪魔がすんなり出てくるわけでもなく、やはりキレる神父さん。


 ブレッドと口論をしつつトイレを調べていれば、急に爆発するトイレ。めちゃくちゃチープな演出なので必見です。これこれ!これですよ!Z級映画って言ったらすぐわかるくらいチープな演出が必須ですよ!

 ここでわたくしは 貴様は誰だ?をHow are you?で表現できることを学びます。How are you?って「貴様は誰だ?」って訳せるんだ。英語の懐はひろいものですね。


 たぶん悪魔(?)が宿っている便器を悪魔が自ら爆発させるのもよくわからないんですが、便器の水が溜まっているところから火柱がポンポン立ち上がるのもまあまあよくわからなくて面白くはあります。火……水から立ち上ってるんだよなあ……。


 あとはもうトイレの便器VSブチギレ神父の開幕です。ブレッドはマジで見てるだけ。神父はキレながら「立ち去れ!!」と怒鳴るだけ。たまに聖水とか振りかけてるけども。悪魔祓いってそんな、そんなパワー系でいいんか。怒鳴るだけで何とかなるんか。

 神父が怒鳴りまくる間、トイレも黙ってはいません。神父に爆発を仕掛けてダウンを奪います(神父に爆発を仕掛けてダウンを奪うトイレってなに?)(じゃあ座った人間をナイフで切らずに爆発させれば良いのでは……?)


 うおー!神父がやられた!とちょっと驚いたところでまさかの小休止。よく分からん音楽とともに軍隊が進む映像が流れます。何なんだ。本当に何なんだ。ここに来るまでのめちゃくちゃでこの映画のノリには慣れていたつもりでしたが、ここで謎の小休止をブチ込まれるとは思っていませんでした。これもまたちょっと尺が長いんですよ。お家でAmazonプライムで見るならこの間にトイレとか行くと良いと思います。一応はホラー系のトイレムービーですけど、こんなに怖くないトイレのホラーもそうないと思うので安心してお手洗いに立てますね。


 よく分からん小休止も終わり、どうやら神父は無事の様子。引き続きキレ倒してトイレの悪魔祓いを終わらせます。マジで終始キレてるだけだったけど大丈夫なのか。ブレッドには「教会に来なさい」とキレながらすすめ(神父さんがなぜこんなにキレるのかわからない)、最後に妙にエコーのかかる「アーメン!」で終了。



 これでやっと安心してトイレを使えるね!と思った矢先。実は悪魔祓いはできておらず、トイレを使ったブレッドは弟と同じようにお尻を切られてしまいます。呻くブレッド。首にかけていた手榴弾をつまみ、トイレの便器を脅すブレッド。(それおもちゃじゃないの!?)

 ここで爆発で終わるのか?Z級映画のオチとしてふさわしいな!と思っていたら、流石のデストイレ。また便器からナイフが出てきます。シャキンという音ともに首を押さえて倒れ込むブレッド……。


 何で首を切られてんだ。便器に首でも突っ込んでたのか。


 ツッコミたくなりますが、血糊代わりのチョコソースを首にまとわりつかせながらブレッドは死んでゆくのでした…………。



 やっぱり怒鳴ってるだけじゃ悪魔祓いは出来ないんですね。





 その後、家は売りに出されます。

 不動産屋はこう言いました。


「トイレは2つあります」




 何で呪われてた方のトイレを使ってたんだよ。




突っ込みながら見るのが最高のトイレ映画でした。嬉々として人生のうちの貴重な55分を犠牲にしたい方はぜひ。

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