Theピーズのファンだったアイツの事が、僕は嫌いだった

最近、初めてバンドを組んだ時のことをよく思い出します。あれはもう十年以上前、大学の軽音サークルに入った僕は、コピーバンド大会に参加することになりました。

昔の洋楽、ロック、ファンク、ソウル、色んなジャンルの曲を演奏するのですが、「日本のロック」というジャンルで、僕はアイツ(以下、S君)と初めてバンドを組むことになりました。

そこで選ばれたのは、Theピーズの、「生きのばし」という曲でした。S君の大好きな曲です。
僕はその時にピーズを初めて聴いて、正直その時は魅力が分かりませんでした。

そして、スタジオで練習を重ねるのですが、S君、ひどい遅刻魔で。朝8時から練習なのに、午後にやってくることもザラ。遅れてきても、「ごめんね、ヘヘッ」てな具合で、ヘラヘラしてる印象しかなかったんですよね。僕は、時間を守れないルーズな人が嫌で、だんだん、S君のことが嫌いになっていきました。練習で会っても、全く口を利かない、目も合わせない。そして、僕の中で、ピーズ自体も印象が悪くなっていきました。

結局、ライブはしたものの、僕らの関係は悪いまま、大学を卒業してしまいました。

それから2年後。
僕の元に、大学の友人から電話が入りました。
「S君、亡くなったって」
急な報せでした。
まだ24、5歳だったと思います。
久しぶりに聞いたS君の名前、まさかこんな報せを受け取るとは。僕はしばらく言葉が出ませんでした。

そしてまた数年が経ち、今に至るわけですが、色んな出会いがあり、そして、昔は聴かなかった音楽に触れる機会も増えました。僕の中の音楽観も少しずつ、変化していったのです。
そんな中、たまたま、昔は好みではなかった、Theピーズを聴く機会があったのです。

「…めちゃくちゃかっこいい。なんだこれは。」

大人になってから改めて聴いたピーズは、死ぬほどカッコよかったのです。カッコ良すぎて、そして可愛くて、泣けてくるんです。

僕は、大学生の時、Theピーズのカッコ良さに気づけなかった。
それ自体は仕方ないこととして。

僕は、S君と友達になれたかもしれないのに、その機会を失った。
僕は今まで、どうでも良いことにこだわって、何人友達を失っただろうか。一体、何をやってるんだろう。もし、S君が生きてたら、「久しぶり!ピーズ最高だね!!!!」と訳の分からない唐突なメッセージを送っていただろう。しかし、もうそれも叶わない。

昔したことを後悔はしたくないし、間違っていたとも思わない。だけど、どうしようもない、やるせなさに襲われてしまう。
ピーズの音楽は、そんな僕さえも包み込んでくれる。否定も肯定もせず、ただ笑い飛ばしてくれる。ロックンロールって、こんな優しいんだ。

俺、知ってたよ、S君が優しい奴ってことを。ルーズな所があるけど、良い奴だって、本当は気づいていたのに。

僕は西武新宿線の中でピーズを聴いて、泣きながら家路に着いた。若くて青かった時を思い出しながら。

※2018年3月のブログの再喝です

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