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没頭力とそのための俯瞰力


中学3年生、受験が近づく頃、入試対策として面接練習の時間が授業で設けられていた。

私が志望した高校については既に話が進んでいて、受験はするもののまず大丈夫ということで安心していた。 

(余談だが、私は数学が大の苦手であり、万が一の結果を想定した結果、焦って2、3週間ほど前から早朝に教室に勉強しに行くようになった。一緒に受ける友人と、過去問で唯一大問1以外に解ける可能性を残す連立方程式だけに山を張り、黒板が真っ白になるまで解きまくっていた。本番は出題されなかった。)

それがなくとも面接がないとわかっていたため、周囲がもつ緊張感とは裏腹にノンプレッシャーで楽しんでいた。


ある日の練習で、こんな質問をされた。

「あなたを動物に例えるとなんですか?その理由も含めて教えてください。」


初見の中学生にとっては、難易度の高い質問だ。

昔から人と違うことを言って周囲を唸らせてやりたいと常々思っていた(ちなみに今も)無力なサボテン少年は思わず苦笑いを浮かべた。

幸いにもスタートは逆からだ。この時間で周りを圧倒させる答えを浮かび上がらせる!と意気込んだがしばらく経ってもいいものは思いつかなかった。刻々と自分の番が迫る。


死んでも猫や犬などという大衆が覇気なく吐き出す妥協案に甘んじてはいけない。いよいよ私の前の生徒が喋り始めたとき、神が舞い降りた。

窓から、中庭をピーピーと声を上げて飛ぶ鳥が目に入った。

来た。これだ。

内容の構成は放棄し、自分のアドリブ力を信じてこれに賭けた。


「はい、では次の方。」

「はい。私は自分を動物に例えると鳥だと考えます!なぜなら、、、、、鳥が空から下の世界を広く見られるように、私も周囲や自分の状況を客観視できる能力があると思っているからです!」

という風な内容を、中学生なりの拙い語彙力で回答した。


驚いた。準備していなかったことを咄嗟に発言した。そこで初めて、自分がそのような考え方をもっていたということに気づいた。

これが今日の話につながる私にとっての原点です。前置き長くなりました。なんならこっちの方が長いかもしれません。本題に入りましょう。



小難しいタイトルをつけたが、これは私が思う鳥のもつ特徴を表現したものだ。

鳥は空を飛んで下の世界を広く観察し、餌のある場所や興味のある場所を見つけるとそこに向かって降りていく。そして活動する。それを終えるとまた飛び立っていく。それを繰り返している。

これは生きていく中で望む結果を手にしたり、後悔しないように過ごすという観点で非常に効率が良い習慣であり、私たちが真似すべきことではないかと思う。

下界(特定の場所に留まっている状態、主観のイメージ)に常にいると、そこで何かに打ち込むことはできるが、見えている世界が狭いため、自分が何者で他にどんな可能性を秘めているのかを知ることは容易なこととは言えないだろう。

かと言って上界(SNSで情報を漁りまくっている状態、客観のイメージ)に居続けても、それ自体に価値はなく、なにもなし得ることはできないだろう。


優劣をつけるとするならば、私は没頭力を推したい。人生の充実度は没頭力、没入感で形作られていくものだと考える。なぜなら、自分が起こしたアクションによってしか自分の世界は変わっていかないと思っているからだ。

しかし、没入しすぎると上手くいっているうちは良いが、いずれ周りが見えなくなり、様々な必要な視点が欠落する。

だからこそ、正しい場所に、正しいタイミングで正しい時間没入するために、俯瞰しておくこと、俯瞰力を身につけることが大事だと思う。加えて、没入の後に俯瞰に帰ってくるという意識が必要だ。これがタイトルにある没頭力のための俯瞰力だ。


そういった観点の芽が、5年前に教室の中央やや左寄りの座席に腰掛けた男の角張った頭の隅に誕生した。



鳥は広く上界から下界を見渡し、自分が必要に駆られた場所へ向かっていく。そこでは積極果敢に活動する。獲物を襲うときには空を飛んでいる時のような余裕はない。その瞬間に没入し集中している。これが鳥のもつ没頭力と俯瞰力だとここでは定義する。

自分の力を尽くしてのめり込み、納得いくまでやり切る。そしてまた上界へと戻っていく。

これは具体性が強い例だが、こういう事例を状況によって抽象化して思考し、また具体化して行動に繋げていくという作業を高いレベルで体現できるようになりたい。


個人の課題としては没入のレベルを上げる。
人生の方向性を決めると言っても過言ではない2年間が始まる。優先順位をつけて必要なところは粘る。不要な関係は切る。その勇気をもって過ごしたい。



もうちょっと面白くできるポテンシャルはそこら中に落ちているし、主体性を持って取り組めば、人がスルーするところをチャンスだと思える瞬間に多く触れられるかもしれない。

その鳥のような目の鋭さを毎日少しずつ養っていきたい。











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