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メジロ

朝早く出勤しなければならなかった日、会社へ向かう道を歩いていたらアスファルトにカラフルな色があるのが目の端をよぎった。
その違和感へ近づきながらよくよく見てみると一匹のメジロだった。

メジロは私が近づいても微動だにしない。
冬の冷たい風に吹かれてふわふわの毛が逆立ったりしているのを微笑ましく思いながら「どうしたの?怪我したの?」と自然に話しかけた。
その辺の猫とかに話しかける人、いるよね。

私、そういうタイプだ。
なんなら鉢植えにも話しかけている。

動物大好きおばさんに話しかけられてもメジロは少しも逃げる素ぶりもなく、キョロ…キョロ…という程度には動く。

改めてメジロのいる場所を確認すると、なかなか危ないところにいるのが分かる。
歩道と車道の境のラインの上。
この通りは自転車が多い上に朝の通勤通学の時間。
このままだと轢かれてしまうのではと、メジロをガードするように立ちながらメジロを説得し始めた。
「もうちょっとこっちきて木の上にいけない?」
「そこだと車とか自転車が通るから危ないよ」

私の横を通り過ぎようとした女性が、何してんの…と不審な目を向けてくる。
私なら耐えられる。メジロのためにがんばれる。
そう思っていたけど、女性もメジロに気づいてアラ!という反応をしてどうしようか躊躇している様子だった。
ほら!気になりますよね!心配ですよね!?と無言で問いかけると、女性も「大丈夫かしら。どうにかなりそう?」という目線を返してきた。(想像)
うーん…とりあえず説得してみます!と目線に込めると、女性は「…ではよろしく!」とばかりに歩き始めた。
でもメジロが気になるようで何度も振り返ってメジロを見ていた。
今思うとなんでお互い声を発しなかったんだろう。

再びメジロと向き合う。
ここまで近づいても話しかけても動かないのは、やはり衰弱なり怪我なりしているのかも知れない。
幸い職場は緑がいっぱい!
職場に連れて行って病院に連れて行くかとかみんなに意見を仰ぐのが良さそうな気がしてきた。
でも、確か野生の鳥ってむやみに触ってはいけなかった気が…。
そうだ!と、カバンから綿100%のエコバッグを取り出した。
袋の中に入れるのではなく、とりあえず大きめに畳んだ状態の布の上に乗ってくれないかなと思って、「おいで、ここじゃ危ないから、とりあえず一緒に行こう」と話しかけながらそっと広げた布を近づけた。

メジロがちょっと困ったような反応をした。
そりゃ警戒するよね…と思うけど、このキレイな緑色のふわっふわの小鳥をもう完全に見過ごせなくなってる。
こんなに近くで見るのは初めてだったけど、ものすごくふわふわで柔らかそうだった。
メジロってこんなにふわふわしてたんだ…。
「触らないようにするから、ここに乗って」周りに車や自転車が来ていないタイミングで更に布を近づけてみた。

その瞬間、メジロがぴょんと飛び上がり、私の手に一瞬チョンと乗って、そこからピュウウウ〜!と道路向かいの木に飛んで行ってしまった。
あっという間のことだったけど、しばらく手にメジロの小さな足の感触が残っていた。
ひとまず…これで一安心なのかな…と、心配な気持ちはありつつ急いで会社へ向かった。


帰り道、まだメジロいたりするのかな〜と、メジロがいた辺りをキョロキョロしながら通った。
さすがにもういないか…と思ったら、小鳥の鳴き声がして、見たらメジロがいる!
いや、でもメジロなんてこの時期あちこちにいるしな…と思いながらにこやかにメジロを眺めながら歩いていたら、メジロが私の行く方向行く方向へと、飛んで木に止まってこちらを見て…と繰り返しながら付いてきた。
あれ!?まさか朝のメジロ!?元気なの?大丈夫なの?と声をかけると、ピロピロ鳴いている。
あ、なんか大丈夫そう。
あー良かったよ。
しばらくメジロは私の横を並走(並飛?)してくれていた。

朝と同じメジロか分からないけど、私は勝手にメジロが御礼言いにきてくれたのだと思うことにした。

メジロってほんとにふわっふわなので、気になった方は画像検索してドアップで見てみて欲しい。
スマホやパソコンの画面とはいえ触りたくなると思う。

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