アプリで誘い出す

仕事の帰り道、近所の家の真っ暗なガレージの中から
「にゃー!」と聞こえてきました。
ガレージはシャッターが閉まっておりましたが、
透明なシャッターであったため、
ガレージ内を目を凝らして覗いてみたら…

シャッターのすぐそばで
手のひらサイズの三毛の子ねこがちょこんと座っていました。

「飼い猫?」とも思いましたが、
小さな体で一生懸命鳴いている…いや、叫んでいる姿から、
「助けてほしいパターンやな」と察しました。

とりあえずシャッターを開けないことには始まらないので、
お家の人に声をかけることにしました。


ピンポーン

家「はい」

猿「すみません、通りすがりの者なんですけど」

家「はい」

猿「ガレージに子ねこが閉じ込められているみたいで…」

家「えー!?ほんまかいな。ほな、降りますわ」

ドキドキしましたが、コテコテの関西弁で応対してくれました。
優しい人でよかった。

以前からこの家の存在は知っていて、
ガレージ内には高級車があり、某警備会社にも加入されていたため、
勝手に、ヤ○ザだと思っていたのです。
大丈夫でした。多分。


暫く待つと、おっちゃんがパジャマ姿(以下 パジャマ)で登場。
ガレージの明かりをつけ、シャッターを開けてくれました。

ただ、びっくりしたのか、座っていた場所にはすでに子ねこは居ませんでした。
でも「にゃー」という声は聞こえます。

車の下を覗いたり、「おーい」と呼びかけたりわちゃわちゃしている内に、
近所の人も集まって来ました。
エサを持ってきたおっちゃん(以下 エサ)
見守るおb…お姉さん(以下 見守)
テレビ電話で中継をするお姉さん(以下 中継)など、なんだか賑やかな状態に。
子ねこも人が多くて怖かったのか、声を発しなくなりました…。

そこで「あ、せや!」とひらめき、
試しに、ねこの声を発するアプリをその場でインストールし、
鳴らしてみることにしました。


”にゃーん”

エサさん「おっ!鳴いた!?」

猿「あ、すみません、アプリです」

すると「にゃー!」と子ねこからも反応が!


アプリ作戦成功しました。
声の場所から、どうやら車の内部に入り込んでいる様子。

でも前輪部にある隙間から声が聞こえたり、
後輪部にある隙間から声が聞こえたりと、
子ねこは車内を縦横無尽に駆け回ります。

埒があかないので、一か八か、より逃げやすくなるようにと、
パジャマさんが車を車道へと動かしました。

焼け死ぬんじゃないかと青ざめる見守さんと中継さんと猿。

車が車道へ出たところでエンジンを止めてもらい、
至急アプリで生存確認。


”にゃーん”

エサさん「おっ!」

猿「アプリです」

子ねこ「にゃぁ!」

生きてた!良かった!
あせるわー


その後もアプリを鳴らしつつ
声が聞こえる場所を調べるもやはり中々出て来ません。
あまりアプリを鳴らして返事させるのもかわいそうだし…
どうしたものか…


しばらくすると、何故かパトカーがやってきました。
その後警備会社のお兄さん(以下 警備)も到着。
なんだか物々しい雰囲気に…
どうやらパジャマさんが警備会社に緊急通報をしていたようです。
やりすぎや!!
その雰囲気を察したのか、いつの間にか姿を消した見守さんと中継さん。
逃げたな…

警察はパジャマさんから事情を聞き、少し車を調べた後、
警備さんと相談し帰って行きました。
ご迷惑おかけしました…。

警備さんは「助けてあげたいなぁ」と言いながら、
車の下へ潜り込んだり、手を突っ込んだりして、何とか助けようとしてくれていましたが、
やはり子ねこは出て来ませんでした。

困り果てる、警備さん、パジャマさん、エサさん。
どうしようか?JAF呼んだ方が良いか?と、3人が車の後方で話している間、
車の前方の少し離れた所からアプリを鳴らしてみました。


”にゃーん”

エサさん「あ、鳴いた!」

猿「アプリですー!」

このやり取りもうええわ!!!


子ねこ「にゃーん」


諦めず鳴らす…

”にゃーん”

子ねこ「にゃーん」


鳴き声の種類を【KITTEN】に変えて鳴らす…

”みゃぁ”

子ねこ「にゃー!」

お!食いつきが良い!!


暫く鳴らしていると、なんと前輪の後ろの隙間から、
子ねこがぽてっと降りて来ました。

猿「あ、出てきました!」

駆け寄るエサさん。
驚いて再び車内部に逃げる子ねこ。

猿「あっ!隠れました……近づかない方がいいかもですね(てめえコラ!!)」


諦めず鳴らし続けると、再び可愛い姿を現しました。
きょろきょろと鳴き声の元を探す子ねこ。
ごめんな、偽物の声やねん…。

子ねこは、車から少し離れた場所まで出てくると、
一目散に逃げて行きました。

よかったー!!!


警備さん「いやー!アプリのお陰です!」
パジャマさん「どうやって(ガレージに)入ったんや…」
エサさん「よかったよかった」
猿「めっちゃ蚊にさされた…」

それぞれがホッとし、お礼を言い、別れました。


帰宅後、「本当によかったのかな?」と考えてしまいました。
ねこは大好きだけど、責任持てないので飼うことは出来ないし…
でもガレージに居て衰弱するよりはよかったのかな とか
万が一車に潜り込んでしまってエンジンで焼けるよりはよかったのかな とか
色々モヤモヤしてしまいました。

強く生きてくれていることを願います!

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