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めまいの診療

 新年度を迎えました。

 いかがお過ごしですか。

 今年の桜は気温の上昇に伴い一斉に花開いたのではないでしょうか。とてもゴージャスで、気持ちが一気に明るくなりましたね。
 私はちょうど晴れた昼休みに神田川の桜を楽しませていただきました。

神田川の桜。今年はとてもゴージャスでした。

 さて、今回はめまいについてnoteしてみたいと思います。


めまいがしたときは、どこに受診したらよいのでしょうか?

 めまいをしたことがある方はたくさんいらっしゃると思います。ぐるぐる回ってしまうようなめまい、立ち眩みのようにクラっとするめまい、ジェットコースターや船から降りた後にふらふらするようなめまい、飲みすぎてまっすぐ歩けないめまい。一言でめまいといいますが、とてもたくさんの症状を網羅しています。そのような症状を繰りかえしたり改善しないときは病院への受診を考えることもあることでしょう。

 めまいはとても多くの科で遭遇する症状です。原因は多岐にわたるため、患者さんも受診する診療科に迷われることも多いと思います。バランスをとる器官のひとつである前庭は内耳にあり、耳鼻咽喉科に受診するケースは多いと思いますが、耳鼻咽喉科って、耳の疾患以外にも鼻や咽頭、頭頚部腫瘍などと守備範囲が広いので、耳鼻咽喉科医のなかでも得意・不得意があるのは事実です。ですので、めまいを患い耳鼻咽喉科受診を考えたときには、めまいが好きそうな先生の診療所への受診するのがよいでしょう。

 私は医師になり2年間の臨床研修が終了したあと、3年目からは大学院へ進みました。当時の耳鼻咽喉科教授にご指導いただき、めまいの世界へ足を踏み入れたのがきっかけで、今までめまいの診療は積極的に取り組んできました。めまい診療は好きです。大学院では、メニエール病患者のライフスタイルについて研究してきました。ですので、今でもメニエール病患者さんに対しては生活指導を積極的に取り入れています。ストレスや多忙などで発症しやすいメニエール病。生活指導についてはまた別の機会にnoteしたいと思います。

 さて、めまい診療を得意としているクリニックをどのようにして見つけるかですが、最近ではホームページを開設しているクリニックも多いですので、そこに「めまい」の記載があれば、おそらくめまい診療を不得手とはしていないと思います。比較的容易に見つけて受診できることでしょう。また、より専門的なめまい診療を相談したいときは、「めまい相談医」で検索してみることをお勧めします。

 めまい相談医とは、めまいの専門知識および基本的な診療技術を備えていると日本めまい平衡医学会が認定した医師です。私も約10年前に2日間の講義をびっしりと受け、そのあとの試験にも合格して認定されました。認定医を維持するためには認定後も学会への参加などが義務付けられていますので、今でもせっせと学会会場に足を運んで新しい知見を学んでいるわけです。めまい平衡医学会では、さらに専門会員という制度もあります。こちらはさらにめまいに関する研究などを積み重ねた、いわゆるスペシャリストです。めまいで悩んでいらっしゃる方には参考にしてみてください。


眼振を診る。

 めまいの診断には様々な検査がありますが、診療所でできる検査として参考になるのが眼振です。眼振とは眼球振盪の略で、眼球の不随意運動です。めまいがしているときには本当に目が動いて回っているんです。眼振は、急速相と緩徐相からなります。ゆっくり眼球が動いていく(緩徐相)のあと、きゅっと素早く元の位置にもどる(急速相)運動を繰り返します。ゆっくり眼球が動く緩徐相では、人間の視覚で景色を追うことができるスピードなので景色が動くように見えますが、急速相のスピードには視覚がついていけませんので眼球が動いたことを認識できません。ですので、眼球がはぐるっと一回転するはずがないのに、景色は一方向に流れるように回っているような感覚になるわけです。この眼振、一点を見つめようとすると解発が弱くなってしまうことがあります。ですので、フレンツェル眼鏡というちょっと大げさなメガネのようなものをつけて眼振を観察するわけです。めまいで受診された方は、きっと心当たりがあるのではないかと思います。

 眼振を生じるめまいは、症状としては「ぐるぐる回る」、「歩いているとふわふわるする」などのときに見られることが多い所見です。一方、立ち眩みのようなめまいは、血圧や自律神経のバランスが悪いとき、貧血などで生じることも多く、内科や婦人科などへの受診を勧められることもあるでしょう。

 めまいの性状や発生時の状況など、詳細な問診と眼振を診ること、これがめまい診療ではとても大事になります。


注意する病気、中枢性めまい

 めまいの原因疾患の多くは末梢性めまいと呼ばれ、内耳疾患やストレスなど、投薬などで回復するものですが、注意しなければいけないものが中枢性めまいです。中枢性めまいとは、いわゆる脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など頭蓋内で生じるめまいです。中枢性めまいは生命にかかわりますので、見逃さないように注意が必要です。

 中枢性めまいを見逃さないために注意すべき点でまず大切なのは、めまい以外の症状があるかということです。例えば、ろれつが回らない、手や足が思うように動かせない、壁などの支えがあっても歩けない、頭痛が激しいなどに注意します。めまいは身体のバランス(平衡といいます)を司る部位の障害で起こりますので、中枢性めまいの場合は小脳や脳幹部の障害を疑う所見が無いかどうかを注意して確認します。

 もう一つ大事なのが、既往症です。脳梗塞などの既往がある方はもちろんですが、高血圧や糖尿病、心筋梗塞などの動脈硬化と関連のありそうな既往症のある方は要注意と考えています。逆に、そのような疾患で治療している方は、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な疾患へと進行するリスクが高くなりますので、軽く考えずに注意しましょう。動脈硬化が進行してしまってから治そうと思っても治りません。できるだけ悪化しないよう、血管を大切にしてくださいね。

おわりに

 今回はめまいの診療についてnoteしてみました。めまいの原因は多岐に渡り、はっきりとした異常が指摘されないことも多々あります。めまいでお困りの方は、めまい診療を好きそうな先生に診てもらうことをお勧めします。
 3月、4月は生活環境の変化に伴い、めまいを感じやすい季節です。目が回るほど忙しいと言われるだけあって、負荷が増えると本当にめまいが生じます。私はこの季節はゴールデンウィークを迎えるまでは仕事をつめこまないように気を付けています。めまいは勉強していくと奥が深くてとても面白く、特に研究してきたメニエール病患者に対する生活指導についてなど、引き続きnoteしていきたい思っています。

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