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夏の往復書簡 2020 : 一之瀬ちひろ ⇆ ひがしちか 1通目

ひがしちかさんへ

こんにちは、さっきは久しぶりにちかさんの笑顔がみれて嬉しかったです。
ほんとうだったら、5月に直接お会いしてON READINGでトークができるはずだったのだけど、世の中落ち着かないまま、気付いたらもう8月ですね。
今年はいろいろ予定通りに進まないのだ、いい加減に腹をくくるしかないと思いつつも、なんとなく煮え切らない気分でいます。
もともと予定していたトークでは、私が去年刊行した写真集を起点にちかさんとお話ししたいと思っていましたが、もう写真集のことなどではなくこの目の前の毎日のことを誰かとじっくり話したいという気持ちがこの頃強くあって、メールでの往復書簡の企画を黒田夫妻からご提案いただいたときに、それなら毎日の話をしたい、と思いました。

ディスプレイ越しにみえたちかさんの部屋の窓の外に広がる緑いっぱいの景色や、聞こえてくるニワトリ?の鳴き声、朝の畑仕事で虫に刺された話を聞いていたら、自分が一気に別の空間に接続した気持ちになりました。不思議なドライブ感ですね、オンラインって。
ちかさんのまわりに漂っている空気は、どうやら私の周囲の空気と少し別のもののようだなあ、と感じました。
(でもこの感じは本当は今日はじめて感じた感覚ではなくて、はじめてちかさんに会ったときから、ちかさんに会うときにはいつも感じていたことだったと思います。)


私は自分でもあまり意識していなかったけれど、政府が定めた三ヶ月の自粛生活期間、自分の生活のリズムや感覚を自粛型に沿わせること、自粛下で快適に過ごす日常を作り上げること、に全力を注いでいたようで、その後自粛があけたから元のように活発に活動してください、さあ、どうぞ!と言われても、そう簡単にオンオフスイッチを切り替えるようには身体を動かせないよ、、と思ったりしていました。
こういう時間を過ごしていると、自分の身体や感情の動きと世の中の状況はとてもとても切り離せなくつながっている、ということをいつもよりもダイレクトに感じますね。
日常のペースを取り戻そう、と思うのだけど、日常のペースっていうものがそもそもどういうものだったのか、よくわかんなくなってきた。笑。
まあ、そうは言いつつも、具体的な毎日はやっぱり続いていて、こどもたちの学校が再開してからは毎日のお弁当作りや犬の散歩やヨガなどを「日課」と思うことにして、それらをこなしながら、研究論文を書いて過ごしています。だいたいはジョナス・メカスという映像作家のことを考えたり、映像ってなんだろうって考えたり、しています。


ちかさんは毎日どんなふうに過ごしていますか?


2020年7月31日
一之瀬ちひろ

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~展示情報~

Coci la elle exhibition “ひらく”
2020年9月5日(土) – 9月22日(火祝)
コシラエルの展示会を開催します。
一点ものやオリジナルプリントの傘、日傘、ハンカチなどコシラエルのアイテムをずらりと展示販売いたします。
http://onreading.jp/exhibition/hiraku/

一之瀬ちひろ 『きみのせかいをつつむひかり(あるいは国家)について』展
2020年9月5日(土) – 9月22日(火祝)
一之瀬ちひろによる私家版写真集『きみのせかいをつつむひかり(あるいは国家)について』の刊行を記念して、小展示を開催します。
http://onreading.jp/exhibition/chihiro/

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