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シロツメクサの生存戦略

NHK『植物に学ぶ生存戦略(4)話す人・山田孝之』シロツメクサ編より。2020年8月26日放送 

林田:こんばんわ、植物に学ぶ生存戦略。山田さん、今回取り上げる植物はなんでしょうか?
山田:林田さん、どうぞ。
林田:あっつ、四葉のクローバー!幸せになれるって言われていますよね。四葉のクローバーということは…
山田:今回取り上げる植物は、シロツメクサです。
林田:植物の学ぶ生存戦略、今回はシロツメクサの生存戦略に迫ります。
山田:シロツメクサの原産は、ヨーロッパ、日本では春から秋にかけ、全国の公園や空き地などでごく普通に見られます。
林田:山田さん。シロツメクサにはどのような生存戦略があるんでしょうか?
山田:シロツメクサは簡単です。彼のことです。

ジャンベさん

林田:どなたですか?
山田:事情があって仮名ですが、ジャンベさんです。
林田:ジャンベさん?
山田:趣味がジャンベ、だからジャンベさんです。ジャンベさんはとてつもなく偉い人です。
林田:そうなんですね。
山田:ジャンベさんとシロツメクサのは共通点があります。シロツメクサもジャンベさんも一人では何もできません。周りのいろいろな人たちと関係しながら生きています。①仲間、②ウィンウィンのパートナー、③外部の優秀な人材。の三パターンです。

シロツメクサとジャンベさんの大事な関係者

まず一つ目、同じ志を持った仲間とともに集団を作ります。
林田:集団を作る。
山田:シロツメクサの花をよおく御覧ください。
林田:あっつ、小さい花がたくさんありますね。
山田:そう、シロツメクサは小さな花が集まって、一つの花を形成しています。一方ジャンベさんも。ご覧のように周りを同紙で固め、一つの強い集団のように見せています。
林田:なぜ、シロツメクサとジャンベさん集団を作るんでしょうか?
山田:こちらを御覧ください。シロツメクサは複数の花が下から順に咲いていきます。咲く時期をずらすことで、全体として若々しく長く咲いていると見せかけているのです。

複数の花が下から順に咲いていく

林田:なるほど。
山田:一方、ジャンベさんもうっかり失敗した時は、周りにいた仲間たちが責任をとっていなくなり、すぐに新しい仲間が入ってきます。常にクリーンな集団であることをアピールし、より長い間、偉いポジションを保つための生存戦略です。

うっかり失敗した時

林田:両者ともチームワークが素晴らしいですね。
山田:次にお互いを支え合うウィンウィンのパートナーがいるということです。こちらを御覧ください。

根粒

シロツメクサの根っこにある丸いつぶつぶ。根粒と言います。この中に生息する根粒菌こそ、ウィンウィンのパートナー、欠かせない栄養、窒素を分けてくれるやつなんです。
林田:どういうことでしょうか?
山田:シロツメクサをはじめ植物は空気中の窒素をそそまま取り込むことはできません。そこでシロツメクサが目をつけたのが根粒菌。シロツメクサは根に根粒菌を取り込みます。すると、根粒菌は窒素をシロツメクサにも取り込める形、窒素化合物へ変え分け与えてくれます。つまり、シロツメクサは根粒菌のお陰で成長できているのです。そして、シロツメクサはそのお返しとして根粒菌の大好きな糖を光合成で獲得し差し出します。こうして両者は共に成長していくのです。
林田:まさにウィンウィンの関係なんですね。
山田:はい。
山田:一方、ジャンベさんにとってのウィンウィンのパートナーは、偉くない人々です。

ウィンウィンのパートナーは、偉くない人々

偉くない人々は真面目に汗水流して働き、お金をジャンベさんたちにたくさん渡しています。そしてジャンベさんたちはそのお返しとして、偉くない人々が幸せな暮らしができるように、お金を有効活用してくれるのです。
林田:こちらもウィンウィンの関係なんですね。

相利共生

山田:シロツメクサと根粒菌、ジャンベさんと偉くない人々、両者の関係は相利共生と呼ばれ、仲良く暮らしている、そう思われていました。
林田:違うんですか?
山田:実は、シロツメクサは根粒菌を裏で支配していることがわかったのです。こちらを御覧ください。

シロツメクサと根粒菌

山田:根粒菌が少ないと、お返しの糖は少なくて済みますが、根粒菌が増えすぎると、糖をたくさんお返ししなくてはならなくなり、弱ってしまいます。そこで、シロツメクサはお返し全体を減らそうと、根粒菌をコントロールしはじめます。人生いろいろ。根粒菌もいろいろ。窒素化合物を上手にたくさん作れるやつもいれば、うまく作れないやつもいます。シロツメクサにとっては、生産性の高い根粒菌ほどいい仲間。いい仲間にはたくさんの糖をあげるけど、そうでもない奴には、ほぼあげない。つまり、糖の分配に格差を作り、根粒菌もたちを支配しているのです。

山田:そして三つ目は、外部の優秀な人材を囲うということです。シロツメクサにとっての優秀な人材はミツバチです。
林田:シロツメクサにとって、ミツバチのどのようなところが優秀なんでしょうか?
山田:こちらを御覧ください。

重たい扉

シロツメクサの花は不思議な形をしています。外から雄蕊や雌蕊が見えません。実はそこに重たい扉が立ちはだかっているのです。重たい扉を開くと、そこに虫たちの大好物の花粉や蜜があります。しかし、ミツバチのように力の強い虫でないと、「おりゃ!」と重たい扉を開くことはできません。「おりゃ〜!」。こうしてシロツメクサは遥か遠くまで花粉を運んでくれる力のある優秀な人材だけを選別しているのです。

山田:一方ジャンベさんも、自分にとって有益となる外部の人材を寵愛し、甘い蜜をたくさん吸わせるのです。こうしてシロツメクサもジャンベさんも多くの仲間を取り込みながら、一つの巨大な帝国を作り上げていくのです。
林田:なるほど。

外部の優秀な人材

山田:最後に林田さんに言っておきたいことがあります。
この四葉のクローバーは見つけると幸せな気持ちになれますよね。
林田:はい、四葉のクローバーを見つけると幸せな気持ちになれます。
山田:それこそが、シロツメクサ最大の強かな生存戦略なんです。
なんとなく幸せな気持ちにさせ、危機感や反発心を削いでしまう。平和な空気を醸し出し、人々を思考停止にするんです。
林田:それは、人々にとって幸せなんでしょうか?
山田:わかりません。ただこれだけははっきりと言えます。
一部の人間だけが得をする、まやかしの平和に気づき、NOを突きつけるのか、無知で無関心のまま、いいように飼い殺されるのか、どう生きるかは、自分で考えて、自分で決めるのです。…

どう生きるかは、自分で考えて、自分で決めるのです
さようなら


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