総理大臣の靖国参拝をめぐって

・2010年8月15日、ブログに公開した文章の転載

総理大臣の靖国神社参拝をめぐっては、右派の一部には参拝を総理就任の条件にすべきと考える人がいて、左派の一部には参拝しないことを総理の条件にすべきと考える人がいるかもしれない。
実際には、参拝するかしないかは総理本人の判断に任されていて、国会でその件に関してなんらかの取り決めをするということはないようである。
自民党の総理大臣の多くは、内面的には参拝したいと思っているが、中国・韓国との関係悪化をおそれて参拝しないという現実的判断をとっていて、そのことが国内の右派・保守派の反中・反韓感情をつよめるという悪循環をもたらしている。

私自身は、参拝するかしないかは今までどおり本人の判断で構わないが、参拝するときには次の2つの条件を満たすことを総理の条件にすべきと考える。
1つめは、靖国神社の掲げる歴史観・戦争観が、政府の公式見解となっている歴史観・戦争観と真っ向から対立していることをどう考えるのか、意見を明確にすること。
小泉元総理のように、「戦死者を追悼することが参拝の目的であり、靖国神社の歴史観・戦争観に賛同しているわけでも、政府の公式見解を靖国神社の掲げる歴史観・戦争観と同じものに変更するつもりでもない」のなら、そのことを明言すること。
「個人的には靖国神社の掲げる歴史観・戦争観に賛同しているが、総理大臣として政府の公式見解を変更するつもりはない」のなら、そう説明するべきだし、もし政府の公式見解を変更するつもりなら、そのことを明言すべきだろう。
政府の公式見解を否定している神社に現職の総理大臣が参拝すれば、外国との間に不必要な摩擦・問題が生じるおそれもあるのだから、誤解されないよう説明責任は果たすべきだろう。

2つめは、海外の戦争被害者からすれば、日本軍は加害者側になるのだから、加害者側の死者のみ追悼し、被害者側の死者を追悼しないのは道義的に問題があるだろう。
だから、靖国神社に参拝するときは、その前か後に海外の戦没者に対する追悼も行うべきだろう。
ただ、世界中に散らばっているだろう戦没者の埋葬施設をすべて訪問することは、物理的にも時間的にも不可能だから、その場合は海外の戦没者を追悼する施設を設立し、そこで追悼することが現実的だろう。

私個人は、以上2つのことを守ることを総理就任の条件にして、これを破った場合には、内閣不信任案を提出することを国会のルールにして欲しいと思っている。


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