天皇の政治利用に関して


・2010年5月11日、ブログに公開した文章の転載
 
ちょっと古い時事ネタです。
 
去年だったか民主党の小沢一郎が、天皇陛下と外国の要人との会見に関して、それまでの宮内庁のルールを無視したとして「天皇を政治利用するな。」と批判された。批判の内容の是非は脇においておき、この「天皇を政治利用するな。」と言った発言は滑稽である。

幕末維新の時代、倒幕派は天皇を政治利用して権力を掌握した。明治政府の指導者たちは、天皇を政治利用して新国家作りを進めた。軍国主義時代の戦争指導者は、天皇を政治利用して戦争を遂行した。戦後は、政府が全国巡幸という形で天皇を政治利用した。
近代以降(それ以前から?)天皇は政治的実力者に利用されてきたし、実質的な権力者に政治利用されるのが近代天皇制の核心といえるのではないだろうか。天皇を政治利用すべきでないと考えているのなら、憲法を改正して皇室を宗教団体か文化団体にして、天皇が政治に(形式的に)かかわることを廃止すべきだろう。

ただ、前述の「天皇を政治利用するな。」といった主張は、厳密には「特定の政治家や勢力が、周りの同意も合意もなく勝手に天皇を政治利用してはいけない。」といった意味にすぎない。小沢一郎の場合は、宮内庁側の意向を無視して強引に天皇陛下と中国の政治家との会見を決めてしまったから、非難や批判を浴びたといえよう(会見の相手がアメリカの要人だった場合も同じように非難を受けたのだろうか)。

天皇陛下と外国の要人との会見について誰もが納得できる明確なルールを決めず、自民党と宮内庁の間で勝手にルールを決め、それを自民党以外の政権にも守らせようとしたのが根本の問題だろう。政権交代が起こらず、自民党がずっと政権の座についているのがあたりまえだと考えているから、自民党と官僚による政治の私物化のようなことがおきるのだろう。天皇陛下と外国の要人との会見、皇室外交のあり方については、政権交代がおきた場合にも適用できるルールを与野党合意のもとで形成した方が混乱はおきないだろう。

最後になるが、外国から天皇陛下との会見を申し込まれたときは、1カ月以上前であれば相手国の大小にかかわらずこれを受諾し、1カ月以内のときはこれを断るという方針は、個人的にはよい考えだと思う。ただし、それを新政権が受け入れなければならない理由がないのなら、「1カ月ルール」を無視したといって小沢一郎を批判するのは筋違いだろう。

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